【保全手続×和解|審尋期日/執行後|効力・解釈|和解促進作用】

1 保全手続×和解|基本事項|ルール上和解ができる
2 保全手続×和解|実務的な『促進』機能|裁判官の勧告
3 保全手続×和解|効力・解釈|マイナーな見解もある
4 仮差押執行『後』の交渉→和解成立も多い|仮差押の副作用

1 保全手続×和解|基本事項|ルール上和解ができる

民事保全の手続でも一般の訴訟同様に『和解』ができます。

<保全手続×和解|基本事項>

あ 保全手続における和解

民事訴訟法の規定が準用されている
→『和解』は可能である
※民事保全法7条,民事訴訟法267条

い 和解が可能なプロセス

双方審尋の期日
『双方審尋』が実施されないと『和解』もできない

『和解』の前提は『期日に当事者が揃っている』ことです。
ということは『双方審尋』が実施された場面,ということになります。

2 保全手続×和解|実務的な『促進』機能|裁判官の勧告

保全手続での和解は,裁判官の勧告により成立に至るケースも多いです。
このメカニズムについて整理します。

<保全手続×和解|実務的な『促進』機能>

あ 審尋における裁判官の説明

『双方審尋』が実施される場面において
裁判官が債務者に説明をする機会がある

い 裁判官の説明|法的見解

本体の請求が認められるかどうか
→本案訴訟で同じ判断が採用される可能性がある程度高い

う 裁判官の説明|仮差押を受けた場合の不利益

時間・費用的コストや現実的な不利益など(後述)

裁判官の見解次第では,債務者が『応じた方が良い』と考えるのです。
制度としては,保全手続とは別に,本案訴訟で最終的に判断がなされます。
保全は暫定的な判断,本案訴訟が正式・最終判断,という関係です。
言わば,保全手続は,『正式訴訟の判断の簡易判定』と言えます。
実務的には先行する保全手続と本案訴訟の判断が同じとなる割合が多いです。

3 保全手続×和解|効力・解釈|マイナーな見解もある

保全手続で『和解』をすることは認められています(前述)。
この点,和解の『効力』の見解が複数あるのでまとめておきます。

<保全手続×和解|効力・解釈>

あ 裁判実務

確定判決と同一に扱われる
→『債務名義』になる
詳しくはこちら|債務名義の種類|確定判決・和解調書・公正証書(執行証書)など
※民事保全法7条,民事訴訟法267条
※菅野博之ほか『民事保全の実務(裁判実務シリーズ3)』商事法務p16

い 他の見解

『和解の効力』は民事保全手続には準用されない
→債務名義はない
一般的に裁判実務では採用されていない見解である
※山本和彦ほか『新基本法コンメンタール民事保全法』日本評論社p36

実務的には『有効な債務名義』として一般的に扱われています。

4 仮差押執行『後』の交渉→和解成立も多い|仮差押の副作用

仮差押は,本来,財産を暫定的に『ロック』する機能です。
そして後から『差押→回収』を実現できるようにしておく,という目的です。
しかし,実際には,心理的に『任意の支払い』に応じるという副作用も非常に重要です。
預貯金の差押は,メインバンクに『経済状態が悪い』『信用がない』ということが強いインパクトで伝わります。
通常は『仮差押のロックを解消したい』という意向が非常に強く働きます。
この効果がないのは債務者が倒産する意向である場合くらいでしょう。
結果的に一気に『返済の優先度をアップする』ということにつながるのです。
関連コンテンツ|交渉|相手にとって,当方の『優先度』を上げさせる
仮差押などの保全の執行後に,それまで進まなかった交渉が一気に進むということも実務では多いのです。
この内容は具体例を用いて,別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|預貯金仮差押×インパクト|実例|解放金の弱点×和解促進作用

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