【学校でのスポーツ事故|刑事責任=業務上過失致死傷罪|判例・民事との比較】
1 学校でのスポーツ事故×刑事責任
2 高校|ラグビー部の練習→日射病→死亡|顧問教員=有罪
3 高校|水泳→溺死|指導教員=有罪
4 高校|岩登り→転落死|引率教員=有罪
5 学校のスポーツ×刑事責任|民事責任との比較
1 学校でのスポーツ事故×刑事責任
学校でのスポーツで事故が生じることがあります。
本記事では,この場合の刑事責任について説明します。
<学校でのスポーツ事故×刑事責任>
あ 典型的罪名
業務上過失致死傷罪
い 業務上過失致死/致傷罪|構成要件
業務上必要な注意を怠り,よって人を死傷させた
う 業務上過失致死/致傷罪|法定刑
懲役or禁錮5年以下or罰金100万円以下
※刑法211条
民事責任との比較については後述します。
次に,具体的な事例・判例を紹介します。
2 高校|ラグビー部の練習→日射病→死亡|顧問教員=有罪
ラグビーの練習中に日射病となり死亡に至ったケースです。
<高校|ラグビー部の練習→日射病→死亡|顧問教員=有罪>
あ 事案
高校のラグビー部で合宿訓練が行われた
練習中に部員が日射病で死亡した
い 裁判所の判断
顧問教員はラグビー部の全般的な指導監督に当たっていた
→過失が認められる
→業務上過失致死罪が成立する
う 量刑
禁錮2か月
執行猶予1年
え 裁判所のコメント
『顧問教員のみの責任とするのは相当ではない』旨
しかし校長などの上位の責任者への責任追及はされていなかった
→正式な法的評価・判断はなされていないままである
※東京高裁昭和51年3月25日;高校ラグビー部員日射病死亡事件
3 高校|水泳→溺死|指導教員=有罪
学校での水泳で溺死が生じてしまったケースです。
指導教員が有罪となりました。
<高校|水泳→溺死|指導教員=有罪>
あ 事案
高校生が水泳の授業中に溺死するに至った
い 裁判所の判断
水泳の指導担当者の過失を認めた
→業務上過失致死罪が成立する
う 量刑
禁錮8か月
執行猶予2年
※秋田地裁大曲支部昭和43年3月12日;秋田県雄物川高校生溺死事件
4 高校|岩登り→転落死|引率教員=有罪
高校の山岳部の活動中の転落死という痛ましいケースです。
<高校|岩登り→転落死|引率教員=有罪>
あ 事案
高校の山岳部で岩登りが企画された
岩登りの途中で生徒2名が転落死した
い 裁判所の判断
引率した教員には過失が認められる
→業務上過失致死罪が成立する
う 量刑
罰金3万円
※札幌地裁昭和30年7月4日;北海道芦別岳高校生山岳部転落死死亡事件
5 学校のスポーツ×刑事責任|民事責任との比較
以上の説明は『刑事責任』に関するものです。
一方で『民事責任』は,これとは別に生じます。
刑事責任と民事責任について比較的にまとめておきます。
<学校のスポーツ×刑事責任|民事責任との比較>
あ 刑事責任の特徴|責任の主体
注意義務に違反した『個人』が責任を負う
学校運営者は刑事責任を負わない
例;地方自治体・学校法人
い 刑事/民事責任の違い|責任の主体
刑事責任(上記『あ』)とは逆である
=民事責任は『学校運営者がメイン』である
関係する教員(個人)の責任はサブと言える
教員が公務員の場合は特に保護されている
詳しくはこちら|使用者責任/国家賠償責任|比較・まとめ|求償・逆求償|不合理な違い
う 刑事/民事責任の違い|判定基準
刑事責任の方が『重い』・判定ハードルも高い
→刑事責任は否定される傾向がある
民事責任は刑事責任よりも認められやすい
学校でのスポーツ事故における民事責任の判例を別記事で紹介しています。
詳しくはこちら|学校でのスポーツ事故|判例|テニス・野球・組み体操
詳しくはこちら|学校でのスポーツ事故|判例|柔道|負傷・死亡事案