【シェアリング|ゲリラマーケット|基本|膨大×ミニマムコンプライアンス】
1 シェアリングサービスvs法規制|ゲリラマーケット
2 ゲリラ性・要因|法律面=順法鈍磨スパイラル
3 ゲリラ性・要因|経済面=高収益
4 ゲリラ性・要因|ミニマムコンプライアンス
5 ゲリラマーケット×検挙が追いつかない
6 ゲリラマーケット|特徴|順法割合・納税回避傾向
7 ゲリラマーケット|サービス普及×世論→法整備促進
8 ゲリラマーケット×法規制の大幅緩和|効果
9 国会議員×ゲリラマーケット推奨発言|グレーならガンガンやっちゃえ
10 ゲリラマーケット|規制緩和×各ポジション|まとめ
11 ゲリラ的普及→法改正で『追認』|社会的視点
1 シェアリングサービスvs法規制|ゲリラマーケット
シェアリングサービスと『法規制』の関係・実情には特徴があります。
<シェアリングサービス・ゲリラマーケット|特徴>
あ 『貸手』と『プラットフォーマー』の分離
プラットフォーマーはマッチングサービスを提供する
『貸手』=ホスト,を兼ねることはない
い ホスト
膨大な数が存在する
サービス提供者は個人や小規模な企業が多い
う プラットフォーマー
少数の事業者が大規模なサービスを提供する
国外拠点の事業者が多い
え 現象
行政サイドの調査・捜査・検挙が追いつかない
お 追認方向の法整備
規制緩和が行われる
ゲリラサービスを適法化する内容である
既存事業者・行政サイドは『大軍』ではなく『ゲリラ』と戦っているような様相です。
ITにより希薄で広範に結びついた膨大なゲリラが強大となった様子と思えます。
ゲリラマーケットとも言える,特徴のある状況です。
このような状況が生じた要因について次に説明します。
2 ゲリラ性・要因|法律面=順法鈍磨スパイラル
ゲリラマーケット普及の要因は大きく2つに分類できます。
まずは『法律』に関する要因を整理します。
<ゲリラ性・要因|法律面=順法鈍磨スパイラル>
あ 行政の肥大化
各種業法の分野では特に『行政の肥大化』が激しい
詳しくはこちら|行政の肥大化・官僚統治|コスト・ブロック現象|小規模事業・大企業
い 曖昧=グレーゾーン生成
ア 判例なし
訴訟提起→判例蓄積というプロセスが非常に少ない
イ 曖昧ルール増殖
行政の判断が多い→有効性が曖昧である
詳しくはこちら|通達の意味・種類・法的性質(国民・企業・裁判所への法的拘束力)
う 事業者相互参照→順法鈍磨スパイラル
『解釈論』として一定の適法範囲がある
→安全な範囲でサービスを開始する者が出る
→もう少し『違法方向』のサービスを提供する者が出る(※2)
→取り締まり・検挙がない状態が続く(※3)
→サービス提供者が増え続ける
→サービスの範囲が『違法方向』に拡がる(上記※2に戻る)
3 ゲリラ性・要因|経済面=高収益
ゲリラマーケットの要因のうち『経済面』を整理します。
<ゲリラ性・要因|経済面=高収益>
あ 初期・運用コストが低い
マッチングサービスが普及している
→サービス運用開始・運用継続のコストが非常に低い
い 利益が大きい
日本の大手企業が参入できない
→供給者が限定される
→需給バランスが『供給者優位』となる
→『通常ではありえない利益』が確保できることにつながる
4 ゲリラ性・要因|ミニマムコンプライアンス
上記の要因には『コンプライアンス』への態度も関与しています。
<ゲリラ性・要因|ミニマムコンプライアンス>
あ シェアリングサービス提供者
個人・小規模企業
→一般的に高度なコンプライアンスが要求されない
→『利益』寄りの設定にする傾向が強い
→順法鈍磨スパイラルにつながる(上記※2)
い マッチングサービス提供者
ア 基本
国外拠点の事業者
→ブレーキが効かない傾向が強い
イ 捜査→無効化|隠れ蓑現象
『ホスト』の違法行為に関する捜査について
→プラットフォーマーの保持するデータが重要である
→国外拠点については捜査権限が及びにくい
→調査・捜査がしにくい
詳しくはこちら|捜査権限強化×マーケットへの影響|シェアリングエコノミー・国外限定
ウ 村八分システム→無効化
日本国内の大手事業者・金融機関との取引がない
→『村八分システム』が稼働しない
詳しくはこちら|レピュテーション・リスク|村八分システム×無法地帯→官僚統治
以上のような要因で『ゲリラマーケット』が登場したのです。
逆に,過去のマーケットの状況にも『特徴』があるのです。
つまり,過去の官製マーケットの世界が大きく変わりつつあるのです。
この『時代変化』については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|シェアリング|時代変化|官製マーケットからゲリラマーケットへ
5 ゲリラマーケット×検挙が追いつかない
ゲリラマーケットの普及の要因として『検挙』に関する事情があります。
つまりサービス提供者と比べて検挙体制が小さいのです。
調査や確認・検挙が追いつかない状況となっています(上記※3)。
サービス提供者としては『検挙の対象』に入るかどうかが重要です。
『適法』であっても大きな時間的・精神的負担を強いられるのです。
行政サイドの調査・検挙に関しては別記事にまとめてあります。
詳しくはこちら|シェアリング|ゲリラマーケット|調査・検挙ハードル|優先順序・実態
6 ゲリラマーケット|特徴|順法割合・納税回避傾向
ゲリラマーケットでは『サービス提供者』に特徴があります。
従来型の官製マーケットではあり得なかった状況です。
<ゲリラマーケット|特徴|順法割合・納税回避傾向>
あ シェアリング|順法割合が低い
許認可を得ていない
→『業法のルール』を守る前提ではない
→『無法』状態
い シェアリング|納税回避傾向が強い
運営していることを隠しておきたい気持ちがある
申告・納税することが『違法認定』につながる
→納税しない傾向が強い
詳しくはこちら|不動産の貸付×消費税|課税or非課税|民泊×ジレンマ→納税回避現象
う マッチング|日本の税収喪失
海外拠点の事業者のサービスの売上
→日本の課税対象にならない可能性がある
7 ゲリラマーケット|サービス普及×世論→法整備促進
『普及』がうまくいくと『法整備の所要期間』が大幅に短縮されます。
ゲリラマーケットではこのメカニズムが効率良く機能します。
<ゲリラマーケット|サービス普及×世論→法整備促進>
あ サービス普及による効果
ア 『便利・有益』の認知度アップ
現実に利用したことのあるユーザーが大きく増える
イ 信頼性アップ
サービスを工夫して『弊害・事故が生じない』ように徹底配慮する
→現実に『事故が少ない』ことが実証される
→多くの方がサービスへの信頼を高める
い 民主的プロセス→法整備への影響
普及により『実績』(上記)が蓄積される
→『世論=大衆の声』が『既存事業者のロビー活動』に競り勝つ
→規制を緩和する方向の法改正・法整備の実現につながる
う 世論形成vs取り締まり|スピード競争
次の2つの『スピード競争』と捉える見方もできる
ア 新サービスの『普及→実績蓄積』イ 取り締まり=解釈論
サービスを広く知らせる,ということは世論形成につながります。
この点『みんなのUBER事件』はこの有益な効果を発揮できました。
詳しくはこちら|みんなのUBER事件における『有償』該当性の考察
8 ゲリラマーケット×法規制の大幅緩和|効果
ゲリラマーケットが拡がると大きな『既成事実』になります。
これを前提に政府として『法規制の最適化』への圧力が生じます。
法改正をすると政府として有利になる,という状況のことです。
<ゲリラマーケット×法規制の大幅緩和|効果>
あ 許認可取得
『許認可取得』のハードルが低い
→サービス提供者の大部分が許認可を取得する
=一定のルールを守る状態になる
い 順守状態|具体的内容
ア サービス運用ルール
サービス運用に関する一定のルールが順守される
イ 納税
収入の税務申告+納税がなされる
9 国会議員×ゲリラマーケット推奨発言|グレーならガンガンやっちゃえ
ゲリラマーケットは法規制の進歩のスピードアップにつながります(前記)。
この趣旨に沿う国会議員の発言が注目されています。
<国会議員×ゲリラマーケット推奨発言>
あ セッションの場
平成27年4月8日
新経済サミット2015
い 発言者
衆議院議員
自民党IT戦略特命委員会事務局長
福田峰之氏
う テーマ・斬新発言
シェアリングエコノミーの普及について
『グレーならガンガンやっちゃえばいい』
外部サイト|HRナビ|新経済サミット2015での自民議員福田氏発言
これはまさに『ゲリラマーケットの促進』という趣旨に聞こえます。
つまりコメントの後に心の声が聞こえる気がします。
『ガンガンやればその後法整備を追いつかせるよ』と。
実際に民泊サービスについて旅館業法緩和が進んでいます。
詳しくはこちら|施行令改正・趣旨|違法状態の追認・公認|いろいろな方の見解
10 ゲリラマーケット|規制緩和×各ポジション|まとめ
シェアリング・サービスと法規制・緩和の関係をまとめます。
<ゲリラマーケット|規制緩和×各ポジション|まとめ>
法規制の状態 | 順法割合 | 納税程度 | ユーザー視点 | 政府視点 | 既得権者視点 |
現代にマッチしない | 低 | 低 | 無法→不利益 | 税収→小 | ライバルの検挙可能→有利 |
小規模な緩和 | 中 | 中 | 中 | 中 | 中 |
大規模な緩和 | 高 | 高 | 一定クオリティ→有益 | 税収→大 | ライバル参入増加→不利益 |
既得権者だけが,ユーザー・政府とは利害が相反しています。
過去のテクノロジー進化・普及でも同様のことは繰り返されてきました。
既得権者の反対が徐々に弱まり,緩和が進むのです。
逆に言えば,緩和には一定の『猶予期間』が必要なのです。
この点シェアリング・エコノミーに関するサービスは特殊性もあります。
ICT普及=情報の民主化が非常に進んでいるという背景です。
これは過去にはなかった=社会的に初めての経験です。
『世論形成』が早いという傾向がとても強いです。
既得権者は規制緩和の『猶予期間』を長くは取れないでしょう。
実際に旅館業法関連の緩和ではすさまじい速さで政策が進んでいます。
説明を続けます。
11 ゲリラ的普及→法改正で『追認』|社会的視点
シェアリング・サービスは法規制との関係に『違和感』があります。
社会的な視点でこの状況を整理してみます。
<ゲリラ的普及→法改正で『追認』|社会的視点>
あ ネガティブ評価
ア 順法精神なし→助長する
『無法者』に『法律を合わせる』
=『守りたくないルールは無視すればルールが無効となる』
イ 順法精神あり→マーケットから退場させる
順法精神が強い企業は競合の『無法者』より不利になる
→マーケットから対象させられる傾向が生じる
ウ まとめ
法治国家の大前提が否定される
=秩序・治安維持の機能を喪失することにつながる
い ポジティブ評価
『官製の参入障壁=既得権者保護メカニズム』が機能しない
法規制が『ユーザーの犠牲+既得権者の不当な利益獲得』になっている場合
→法規制を解消することは社会にとってプラスである(全体最適)
詳しくはこちら|マーケットの既得権者が全体最適妨害|元祖ラッダイト→ネオ・ラッダイト
実際に,旅館業法の分野では,既存のサービスを『適法化』する動きが活発です。
代表的なものは旅館業法に関する緩和方針です。
『既存のマッチングサービスの追認』の方向性で進んでいます。
詳しくはこちら|旅館業法×規制緩和|全体・方針|緩和の方向性・アイデア|ゲリラ性