【無催告解除特約|事例|判例・消費者契約法による差止請求】
1 無催告解除特約|判例|滞納5か月→有効
2 無催告解除特約|判例|滞納10か月→有効
3 無催告解除特約|判例|滞納解消→無効
4 無催告解除特約|判例|滞納解消方向→無効
5 無催告解除特約|判例|修繕義務不履行→無効
6 無催告解除特約×有効性|差止請求事例|特約内容
1 無催告解除特約|判例|滞納5か月→有効
賃貸借契約に無催告解除特約が付けられていることは多いです。
この場合,有効性について一定の制限があります。
詳しくはこちら|無催告解除特約・当然解除特約の有効性(借地借家法との抵触)
本記事では具体的事例における有効性の判断を紹介します。
まずは判例となった事例を紹介します。
<無催告解除特約×有効性|判例>
あ 特約内容
1か月分の賃料滞納
→無催告で解除できる
い 個別事情
賃借人が5か月分の賃料を滞納した
→無催告解除は有効である
※最高裁昭和43年11月21日
2 無催告解除特約|判例|滞納10か月→有効
判例において無催告解除特約が有効と判断された事例です。
<無催告解除特約|判例|滞納10か月→有効>
あ 特約内容
賃貸借に無催告解除特約が付いていた
い 個別事情
賃料の不払い期間が10年以上に達していた
う 裁判所の判断
特約による無催告解除を認めた
※最高裁昭和48年3月22日
3 無催告解除特約|判例|滞納解消→無効
滞納があったけれど『解消された』ケースです。
結果的に解除は無効となり賃借人が救済されました。
<無催告解除特約|判例|滞納解消→無効|事案>
あ 滞納発生
賃借人が賃料を滞納した
賃貸人から督促しなかった
滞納額は賃料3か月分に達した
い 解除通知
賃貸人(代理人)から解除の通知をした
う 滞納解消
賃貸人からの通知の5日後に賃借人が滞納賃料全額=5か月分を送金した
その後は滞納なく支払いを継続している
え 訴訟中の提案
賃貸人が明渡請求訴訟を提起した
訴訟継続中に,賃借人は次の提案を提示した
ア 敷金を差し入れる
従前は敷金なしであった
イ 新たな保証人を提供する
※東京地裁平成14年11月28日
<無催告解除特約|判例|滞納解消→無効|裁判所の判断>
信頼関係の破壊には至ってない
→解除は認めない
※東京地裁平成14年11月28日
4 無催告解除特約|判例|滞納解消方向→無効
滞納が解消されつつある時点で『無催告解除』がなされた事例です。
結果的に賃借人が救済され,解除は無効となりました。
<無催告解除特約|判例|滞納解消方向→無効|事案>
あ 滞納発生
賃貸借には無催告解除特約が付いていた
信頼関係を破壊する程度の滞納が繰り返されていた
い 滞納解消方向
その後,滞納を解消する努力がなされた
滞納が1か月分未満となった
う 解除通知
この時点で賃貸人が無催告解除の通知を行った
その後滞納は解消されるに至った
※東京地裁平成19年6月27日
<無催告解除特約|判例|滞納解消方向→無効|裁判所の判断>
解除通知の時点での信頼関係の程度
=破壊に至らない程度まで回復していた
→無催告解除は無効である
※東京地裁平成19年6月27日
5 無催告解除特約|判例|修繕義務不履行→無効
賃借人が『修繕義務を履行しない』という特殊事情が考慮された判例です。
このことがあったために,無催告解除は無効とされました。
<無催告解除特約|判例|修繕義務不履行→無効|事案>
あ 特約内容
賃料3か月分の滞納
→無催告解除ができる
い 事案
賃貸人が窓の修繕を行わなかった
賃借人は友人宅に居住せざるを得なかった
賃借人は賃料を支払わなくなった
滞納額は6か月分に達した
賃貸人は無催告で解除の通知をした
※東京地裁平成18年9月29日
<無催告解除特約|判例|修繕義務不履行→無効|裁判所の判断>
あ 特殊事情の評価
賃貸人の修繕義務の不履行があった
→50%相当の減額請求が可能な状態であった
※民法611条1項類推
い 滞納の分析
形式的には滞納額は賃料6か月分である
修繕義務相当額を差し引くと3か月分程度になる
う 結論
信頼関係の破壊には至っていない
→無催告解除は無効である
※東京地裁平成18年9月29日
6 無催告解除特約×有効性|差止請求事例|特約内容
消費者契約法による差止請求という制度があります。
適格消費者団体が事業者の契約条項自体の差止を請求する制度です。
詳しくはこちら|消費者契約法|差止請求|適格消費者団体・公表・提訴前フロー
無催告解除特約について差止請求がなされた事例をまとめます。
<無催告解除特約×有効性|差止請求事例|特約内容>
あ 滞納2か月→無催告解除
賃料の支払を2か月分以上滞納した場合
→賃貸人は無催告で解除できる
い 無催告解除×賃貸人の賠償責任免除
無催告解除に際して
→賃借人が損害を被ることがあっても賃貸人は賠償責任を負わない
う 滞納1か月など→無催告解除
次のいずれかの事情が生じた場合
→賃貸人は無催告で解除できる
ア 賃料を1か月分滞納した時イ 契約の条項の1つでも違反した時ウ 契約書・申込書に虚偽の記載をして入居した時エ 連帯保証人として契約書に記載された者が引受を拒否した時
え 滞納7日間→無催告解除など
賃料を7日以上滞納した場合
→賃貸人は次の措置を行うことができる
ア 無催告で解除するイ 水道光熱の供給停止ウ 入室禁止措置
お 滞納1回→無催告解除など
賃料・経費などの債務の支払を1回でも滞納した場合
→賃貸人は無催告解除・入室禁止措置が取れる
<無催告解除特約×有効性|差止請求事例|結果>
いずれも裁判外で事業者が自主的に改善した
外部サイト|消費者庁|差止請求事例集
↑この中のp64,p103〜
最終的に事業者の自主判断で条項の改訂などがなされました。
正式な公的判断とは違います。
参考として紹介しておきます。