【平成27年改正航空法|許可・承認の審査基準】

1 無人航空機|許可・承認|基準・資料の概要
2 機体の機能・性能|基本基準|共通
3 機体の機能・性能|基本基準|25kg以上のみ
4 フェールセーフ機能|想定される不具合モード
5 操縦者の飛行経験・技能|基本基準
6 安全確保のための対策|基本基準

1 無人航空機|許可・承認|基準・資料の概要

平成27年に航空法・施行規則が改正されました。
無人航空機の飛行に関する許可・承認の制度が作られました。
いわゆる『無人ドローン』の飛行について適用される制度です。
(別記事『平成27年改正航空法・基本』;リンクは末尾に表示)
本記事では,許可・承認における審査基準をまとめます。
まずは基準の概要・全体と,これを判断する材料=資料をまとめます。

<無人航空機|許可・承認|基準・資料の概要>

あ 機体の機能・性能

ア 基準適合確認書 公的様式あり・申請者の自己記入・写真
イ 取扱説明書ウ 機体認定証 添付は必須ではない

い 操縦者の飛行経験・技能

ア 飛行経歴・知識・能力確認書 公的様式あり・申請者の自己記入
イ 技能認定証 添付は必須ではない

う 安全確保の体制

『飛行マニュアル』を添付する
飛行前点検・安全な操縦に関するフロー・手法を記載したもの

審査基準の項目それぞれの内容については以下説明します。

2 機体の機能・性能|基本基準|共通

許可・承認の審査基準のうち『機体の機能・性能』に関する項目があります。
『機体の機能・性能』に関する基準のうち,基本的なものをまとめます。

<機体の機能・性能|基本基準|共通>

あ なめらか

鋭利な突起物のない構造である

い ディレクショナル

機体の位置・向きが正確に視認できる灯火or表示などを有している

う エネルギー源残量確認

機体を飛行させる者が燃料orバッテリーの状態を確認できる

え 遠隔操作関連

遠隔操作により飛行させることができる機体の場合
→特別な操作技術・過度な注意力を要することなく,次の操作ができる
ア 安定した離陸・着陸イ 安定した飛行ができる ・上昇・水平方向の飛行
・ホバリング(回転翼無人方式に限る)
・下降
ウ 駆動停止 ・操縦装置の主電源の切断or同等な手段により,モーターor発動機を停止できる
エ 操作ミス抑制 操縦装置は,操作の誤りのおそれが,できる限り少ないようにしてある
オ 通信・制御の機能 機体と操縦装置との間の通信・機体の制御は,適切に機能する

お 自動操縦関連

自動操縦により飛行させることができる機体の場合
→次の基準にも適合する
ア 自動操縦システムにより,安定した離陸・着陸ができるイ 自動操縦システムにより,安定した飛行ができる ・上昇・水平方向の飛行
・ホバリング(回転翼無人方式に限る)
・下降
ウ 通信・制御の機能 ・常時,機体と操縦装置との間の通信・機体の制御が機能している
・飛行させる者が強制的操作介入→安全に着陸させられる

機体の重量が25kg未満の場合はこの基準だけで足ります。
25kg以上の場合は,この基準に加えて,さらに別の基準も適用されます。
説明を続けます。

3 機体の機能・性能|基本基準|25kg以上のみ

機体の重量が25kg以上である場合の追加の審査項目をまとめます。

<機体の機能・性能|基本基準|25kg以上のみ>

あ 堅牢性

想定される全ての運用に耐え得る堅牢性を有する

い 耐久性

100時間以上の飛行に耐え得る耐久性を有する

う 通信による悪影響なし

機体と操縦装置との間の通信が,他の機器に悪影響を与えない

え 破損→飛散のリスク極小

発動機・モーター・プロペラが故障した場合
→これらの破損した部品が飛散するおそれができる限り少ない構造である

お 飛行データの記録性能

飛行諸元を記録できる機能を有する
事故発生時に原因調査をできる

か フェールセーフ機能

次の不具合モードに対し適切なフェールセーフ機能を有する

『フェールセーフ機能』の内容ついては次に説明します。

4 フェールセーフ機能|想定される不具合モード

機体の機能・性能の基準の1つに『フェールセーフ機能』があります。
機体の重量が25kg以上の場合に審査基準の1つとされています(前述)。
不具合があった場合にも事故発生を回避するメカニズムのことです。
想定される不具合として規定されているものが規定されています。
つまりこのような状況を想定した事故回避メカニズムが要請されるということです。

<フェールセーフ機能|想定される不具合モード>

あ 通信系統

ア 電波状況の悪化による通信不通イ 操縦装置の故障ウ 他の操縦装置との混信エ 送受信機の故障

い 推進系統

ア 発動機の場合 ・発動機の出力の低下or停止
・不時回転数上昇
イ 電動の場合 ・モーターの回転数の減少or停止
・モーターの回転数上昇

う 電源系統

ア 機体側の主電源消失イ 地上側の主電源消失

え 自動制御系統

制御計算機の故障

5 操縦者の飛行経験・技能|基本基準

許可・承認の審査基準の1つとして『操縦者の飛行経験・技能』があります。
具体的な項目をまとめます。

<操縦者の飛行経験・技能|基本基準>

あ 飛行経験

10時間以上の飛行経験を有する

い 知識

次の知識を有する
ア 航空法関係法令に関する知識イ 安全飛行に関する知識 ・飛行ルール
飛行の禁止空域・飛行の方法
・気象に関する知識
・無人航空機の安全機能
例;フェールセーフ機能
・取扱説明書に記載された日常点検項目
・自動操縦システムの構造及び取扱説明書に記載された日常点検項目
自動操縦システムが装備されている場合

う 技能

次の技能を有する
ア 飛行前確認;すべての種類の機体共通 飛行前に,次の確認が行える
・周囲の安全確認
第三者の立入の有無,風速・風向などの気象
・燃料orバッテリーの残量確認
・通信系統・推進系統の作動確認
イ 遠隔操作関連 遠隔操作により飛行させることができる機体の場合
→GPS機能を使用しなくても次の技能を有する
・安定した離陸・着陸ができる
・安定して次の空中操作ができる
上昇・一定位置,高度を維持したホバリング
ホバリング状態から機首の方向の90°回転
水平方向の飛行(前後移動・左右移動)
下降
ウ 自動操縦関連 自動操縦により飛行させることができる機体の場合
→次の技能を有する
・適切に飛行経路を設定できる
・飛行中に不具合が発生した際に,適切に操作介入→安全に着陸させられる

なお,実際に審査するプロセスでは『確認書』で判断します。
確認書は要するに『自己申告のチェック項目』というものです。
何らかの公的な証明書が必要とされているわけではありません。

6 安全確保のための対策|基本基準

許可・承認の審査基準の1つに『安全確保のための対策』があります。
一定のルール遵守の『体制構築』を審査する,というものです。
このように書くとハードルが高そうに思えてきます。
しかし現実にはそこまでハードルは高くありません。
まずは具体的な審査項目をまとめます。

<安全確保のための対策|基本基準>

あ 基本的事項

飛行に際し次の事項を遵守することができる体制を構築する

い 遵守事項

ア 第三者の上空で無人航空機を飛行させないイ 飛行前に,次の事項について安全に飛行できる状態であることを確認する ・気象
仕様上設定された飛行可能な風速など
・機体の状況
・飛行経路
ウ 安全飛行ができない不測の事態が発生した場合には即時に飛行を中止する 例;取扱説明書に記載された風速以上の突風が発生した時
エ 正常な操縦ができないおそれがある間は操縦を行わない 例l酒精飲料の影響
オ 飛行の危険を生じるおそれがある区域の上空での飛行は行わない 例;飛行禁止区域(航空法80条)
飛行目的によりやむを得ない場合を除く
カ 他人に迷惑を及ぼすような飛行を行わない 例;運航上の必要がない低空飛行・高調音を発する飛行・急降下
キ 物件の曳航は行わない 業務上の理由などによりやむを得ず物件を曳航する場合
→必要な安全上の措置を講じる
ク 機体の体的整備・その記録 メーカーによる取扱説明書に従い機体の定期的整備を行う
整備記録を作成する
ケ 飛行記録を作成する 飛行の際は次の事項を記録する
・飛行年月日
・操縦者の氏名
・離陸場所・出発時刻
・着陸場所・着陸時刻
・飛行時間
・無人航空機の飛行の安全に影響のあった事項
・操縦者の署名
コ 事故の報告を行う 飛行による人の死傷・第三者の物件の損傷などの事故が発生した場合
→次の事項を速やかに国土交通省に報告する
・無人航空機の飛行に係る許可・承認書の発行日・番号
・操縦者の氏名
・事故の発生した日時・場所
・無人航空機の特徴
・無人航空機の事故の概要
・人の死傷or物件の損壊の概要
・その他参考となる事項
サ 許可書or承認書の携行 飛行の際には,許可書or承認書の原本or写しを携行する
やむを得ず携行できない場合
→許可書or承認書を保管する者と連絡が取れるようにしておく

実際には『飛行マニュアルを作る』ということで足ります。
作成した飛行マニュアルを許可・承認の申請時に添付するのです。
飛行マニュアルをしっかりと作成すればこの審査基準クリアは難しくありません。

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