【弁済供託|受領拒絶による供託|明確な受領拒絶意思→弁済提供不要】
1 明確な受領拒絶→弁済提供不要|基本
受領拒絶による供託では『弁済の提供』が前提条件となっています。
詳しくはこちら|受領拒絶による供託|基本|弁済提供の必要性・賃料増減額との関係
これについては例外も認められています。
明確な受領拒絶→弁済提供不要|基本
→原則として弁済提供は不要となる
=弁済提供なしで供託できる
※大判明治45年7月3日
実務では『明確な受領拒絶の意思』の判断が問題となることが多いです。
2 賃貸借×受領拒絶意思|受領拒絶状態の継続
『受領拒絶』の状態について、賃貸借では特有の扱いがあります。
賃貸借×受領拒絶意思|受領拒絶状態の継続
あ 原則論
賃貸人が受領を拒絶する意思が明確である場合
→原則的に提供不要となる
い 受領拒絶状態の継続|基本
債権者が『明確な受領拒絶』の態度であった
+その後、債権者の態度の変化がない場合
→受領拒絶の状態が継続する
=その後も債務不履行にならない
※東京高裁昭和61年1月29日
※東京地裁昭和48年7月20日
う 受領拒絶状態の継続|具体例
賃貸人が提起した明渡請求訴訟係属が十数年にわたった
→その後、賃貸人が訴えを取り下げた
→受領拒絶の状態は解消されていない
※東京高裁昭和55年5月29日
賃貸借は賃料支払が継続的に繰り返されます。
1度『拒絶状態』となった場合、来月以降も『拒絶』と言えるのです。
3 賃貸借×受領拒絶意思|受領拒絶状態の解消
賃貸借においては『受領拒絶状態』が継続するという扱いがあります(前記)。
これについては例外もあります。
賃貸借×受領拒絶意思|受領拒絶状態の解消
→それ以降の供託は『供託原因』を欠く
=供託は無効となる
※東京地裁昭和30年10月22日
当然ではありますが『今月から受け取る』という態度の変化もあるのです。
4 賃貸借×無効な供託|救済的解釈論=解除の有効性
賃貸借における賃料の供託が無効と判断されることもあります。
その場合には別の解釈論で救済が図られることもあります。
賃貸借×無効な供託|救済的解釈論=解除の有効性
あ 状況の分析
供託が無効だとすると『賃貸人から賃料が払われていない』状態となる
→『賃料不払いを理由とする解除』が認められるはず
しかし、賃借人は支払う意思・資力があったのも事実である
=『仮に賃貸人が催告すれば、賃借人は供託ではなく普通の弁済をしたはず』である
い 裁判所の判断
『信頼関係破壊』を否定した
=賃貸人からの解除を認めなかった
※東京地裁昭和51年12月24日
これは『解除を認めない』という形で賃借人を保護したというものです。
5 賃貸借×受領拒絶意思|解除の主張→供託可能
賃貸借において『受領を拒絶する意思』が認められることは多いです。
典型的・代表的な例を挙げます。
賃貸借×受領拒絶意思|解除の主張→供託可能
→明確な受領拒絶と言える
→提供なしでの弁済供託が認められる
※東京地裁昭和48年7月20日
※東京地裁昭和51年3月15日
※東京高裁昭和52年2月24日
※東京高裁平成7年5月29日
※東京地裁平成3年10月17日