【ドローン事故|送電線切断事故×賠償責任|間接損害の責任は否定傾向】
1 ドローン操作ミス×送電線切断事故|実例inU.S.A.
2 送電線切断事故×賠償責任|直接損害
3 送電線切断事故×賠償責任|間接損害
4 送電線切断事故×間接損害|判例
1 ドローン操作ミス×送電線切断事故|実例inU.S.A.
ドローンの普及に伴って事件・事故も増えています。
レアな事故として『送電線が切断された』というものがあります。
米国の実例を紹介します。
<ドローン操作ミス×送電線切断事故|実例inU.S.A.>
あ 時期・場所
2015年10月27日
カリフォルニア州ウェスト・ハリウッド
い 事故内容
ドローンが送電ワイヤーを巻き込んで墜落した
ワイヤーが落下した
周囲の約700世帯が3時間にわたり停電となった
※LA Times2015年10月29日
送電線切断事故における法的責任については次に説明します。
2 送電線切断事故×賠償責任|直接損害
送電線切断事故の賠償責任について整理します。
損害のカテゴリを『直接損害/間接損害』に分類して説明します。
まずは『直接損害』についてまとめます。
<送電線切断事故×賠償責任|直接損害>
あ 直接損害の意味
『送電線切断』そのものによる損害
い 具体例
送電線・送電設備の修復工事費用
う 法的責任
賠償する損害に含まれる傾向がある
3 送電線切断事故×賠償責任|間接損害
送電線切断事故の賠償責任のうち『間接損害』についてまとめます。
<送電線切断事故×賠償責任|間接損害>
あ 間接損害の意味
送電停止によって発生した損害
い 具体例
ア 電車の運行停止イ 各種事業活動の停止ウ 停電を受けた私生活への支障
う 法的責任
賠償する損害には含まれない傾向がある
ただし同種の事故が増えると『予見可能性』が認められやすくなる
→賠償する損害に含まれる傾向に転じると思われる
間接損害は非常に広い範囲にわたるのが通常です。
損害の規模としてもとても莫大になることがあります。
責任の有無について,主張が熾烈に対立することになるでしょう。
現時点の判断としては『間接損害』の責任は否定される傾向が強いです。
この判断を含む判例を次に紹介します。
4 送電線切断事故×間接損害|判例
送電線切断事故の間接損害に関する判例を紹介します。
<送電線切断事故×間接損害|判例>
あ 事案;事故内容
クレーンを使った工事中のミスにより送電線が切断された
電車の運行が一時的に不能となった
鉄道会社は運賃の払戻しなどの損害を被った
い 争点
次の2つの事象の相当因果関係
ア 送電線の切断イ 正常な列車運行ができなくなること
う 停電実施ルール
停電の実施は電気事業者が危険性などを考慮し,判断・決定する
※電気事業法18条,電気需給約款
え 裁判所の判断
停電の実施については電気事業者の裁量・判断が介在する
工事関係者には『特別の事情』についての予見可能性はない
列車運休による損害についての賠償責任を否定した
※東京地裁平成22年9月29日
この判例のポイントは『損害の予見可能性』です。
要するに電車が運休になることの『予見可能性』は低かった,という判断です。
逆に言えば『予見できた』という状況であれば責任は認められるはずなのです。
ですから『間接損害は賠償責任がない』と一律に断言できるわけではありません。