【賭博罪と風営法許可の関係(7・8号営業・公営ギャンブルとの比較)】

1 賞品系風俗営業と賭博罪の基本構造
2 風俗営業許可と賭博罪の関連性(基本)
3 公営・公認ギャンブルの明文による適法化
4 風俗営業許可と賭博罪の関連性の具体的事例
5 パチンコに関する内閣見解(平成28年衆議院)
6 デリバディブ取引(比較)

1 賞品系風俗営業と賭博罪の基本構造

『風俗営業』の中には『賞品が提供される』ものもあります。
パチンコ・パチスロが代表的なものです。
射的・輪投げというこじんまりしたものも含まれています。
詳しくはこちら|風営法の規制|賞品系遊技=7号・8号営業
このような遊技・コンテンツが『賭博罪』に該当するかどうかが問題となります。
まずはこの視点の基本構造を確認しておきます。

<賞品系風俗営業と賭博罪の基本構造>

『風俗営業』の中には次の関係性が存在するものが含まれている
遊技の結果が『賞品を獲得する/しない』につながっている
→『偶然の支配による財物の得喪』と言えるかもしれない
=賭博罪・賭博罪開帳利得罪が成立する可能性がある

賭博罪などが成立するかどうか,という解釈論を次に説明します。

2 風俗営業許可と賭博罪の関連性(基本)

風俗営業許可を得れば,遊技・コンテンツは『適法』となります。
これは当然ですが,もっと細かく考えます。
まず『風俗営業法違反にならない』という意味では間違いありません。
では『さらに賭博罪にもあたらなくなる』と言えるのでしょうか。
ここが肝心なところです。
解釈論を次にまとめます。

<風俗営業許可と賭博罪の関連性(基本)>

あ 元検事見解

風俗営業の許可を受けた行為をすべて,合法的なものとして国家が承認したものではない
法律による合法の扱い(後記)とは異なる
許可を受けた行為について『賭博罪』の適用を受けることもある
例;賭博罪・その幇助・賭博開帳罪
賭博罪に該当しないことを前提として,風営法が許可(規制)の対象としている
※飛田清弘ほか『条解風俗営業等取締法』立花書房p84
↑著者=元検事3名

い 警察サイド見解

7号営業に該当することによって賭博罪の違法性阻却となるわけではない
『賭博罪に該当しない』ことを前提として風営法の規制が適用される
明確な『賭博罪の違法性阻却』の規定(後記)とは異なる
※滝田一成『風俗営業に関する一問題 ぱちんこ遊技の健全化について』警察学論集18巻6号(昭和40年7月)p62

いずれの見解も実質的には同じ内容です。
『風俗営業許可』と『賭博罪』は別問題である,という結論です。

3 公営・公認ギャンブルの明文による適法化

風俗営業許可の対象サービスに似ているものとして,公営・公認ギャンブルがあります(前記)。これらは,個別的な法律で明確に適法であることが規定されています。
一方,風俗営業法では『賭博罪の適用を受けない』という規定はありません。風俗営業との比較のために,具体的な内容をまとめます。

<公営・公認ギャンブルの明文による適法化(※1)

あ 公営・公認ギャンブル|法的理論

競馬・競輪などの公営競技
→法律により明確に『適法化』されている

い 法律の具体例
種類 適法化する法律
競輪 自転車競技法
競馬 競馬法

4 風俗営業許可と賭博罪の関連性の具体的事例

風俗営業の内容が賭博罪に当たるかどうかの判断がいくつかあります。

<風俗営業許可と賭博罪の関連性の具体的事例>

あ 『色合せ』と称する遊戯営業行為

営業者と客とが偶然の勝負によって財物を賭けるという性質がある
公安委員会は,許可の条件の範囲内であれば『一時の娯楽に供する物』にあたると判断している
この判断に違法はない
※最高裁昭和28年11月10日

い 空気銃による射的

『遊戯券の購入に充てることのできる券』『現金』を給付した
許可条件の違反として風営法違反となる
同時に(常習)賭博罪が成立する
※最高裁昭和28年11月10日

う パチンコ

風営法で認められた範囲内で営まれるパチンコ営業者
→賭博罪に当たる行為を行っているとの評価を受けることはないものと考えている
※平成14年3月28日参経産5黒澤政府参考人

最後のパチンコに関するコメントはちょっと慎重に読み解く必要があります。
『賭博罪・・・評価』というところが重要です。
あくまでも『賭博罪に該当するかどうかの評価をしている』ということです。
『法律上賭博罪の適用を除外されている』わけではない,と読めるわけです。
パチンコについての風俗営業法の規制については別に説明しています。
詳しくはこちら|パチンコ=風営法7号営業の代表種目|順守事項・禁止行為
また,政策として『賭博罪の適用除外』を新たに作るという提案もあります。
関連コンテンツ|カジノクルーズvsオリンピック同期方式カジノ|賭博罪との関係・国家戦略特区・祭りの後問題

5 パチンコに関する内閣見解(平成28年衆議院)

パチンコの風営法許可と賭博罪の関連について,内閣の見解も出されています。これを紹介します。結局内容は前記見解と同様に,賭博罪に該当しないことが前提となっているというものです。公営ギャンブルのように法律上で適法化を明記しないという趣旨です。

<パチンコに関する内閣見解(平成28年衆議院)>

あ 質問(引用)

七 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定されるぱちんこ屋は、刑法第二編第二十三章における罪の違法性を阻却する必要はないのか。

い 答弁書(引用)

七について
ぱちんこ屋については、客の射幸心をそそるおそれがあることから、風営法に基づき必要な規制が行われているところであり、当該規制の範囲内で行われる営業については、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百八十五条に規定する罪に該当しないと考えている。
※平成28年11月18日『答弁書』内閣総理大臣安倍晋三
外部サイト|衆議院議員緒方林太郎・ブログ

6 デリバディブ取引(比較)

金融商品としてデリバディブ取引があります。
これも賭博罪との抵触が問題となります。
本記事の解釈論では一切出てきていませんでした。
デリバディブ取引は社会的な『金融商品』という位置付けがあります。
この性格から,賭博罪が否定される方向性です。
金商法上の規定や『正当業務行為』を適用される見解が主流です。
『賭博罪との関係』は,風営法規定の遊技や公営ギャンブルとは違うのです。
デリバディブ取引と賭博罪との抵触問題は別に説明しています。
詳しくはこちら|デリバティブ取引についての賭博罪の成否に関するいろいろな解釈

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【賭博罪の適用除外となる『一時娯楽物』の判断基準・具体例・判例】
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