【不動産のおとり広告・表示に関する景品表示法の告示】
1 告示による不動産のおとり広告規制
2 おとり広告規制に関する表示規約と告示
3 不動産のおとり広告の規制内容(表示規約・告示)
4 告示の架空物件の規定の運用基準
5 告示の虚偽物件の規定の運用基準
6 告示の取引拒否の規定の運用基準
7 告示違反へのペナルティ(概要)
1 告示による不動産のおとり広告規制
不動産のおとり広告禁止のルールには『告示』によるものもあります。法的位置付けとしては,景品表示法に含まれるルールと言えます。
そして『告示』の内容の運用基準は『通達』として公表されています。このルールの構造だけをまずまとめておきます。
<告示による不動産のおとり広告規制>
あ 景品表示法からの委任
禁止する表示を内閣総理大臣が指定できる
※景品表示法5条3号
詳しくはこちら|景品表示法による不動産広告や表示の規制(全体)
い 告示
『不動産のおとり広告に関する表示』
※昭和55年4月12日公正取引委員会告示14号
外部サイト|不動産のおとり広告に関する表示
う 運用基準|通達
『不動産のおとり広告に関する表示』等の運用基準
『い』の運用基準である
※昭和55年6月9日公正取引委員会事務局長通達9号
外部サイト|『不動産のおとり広告に関する表示』等の運用基準
2 おとり広告規制に関する表示規約と告示
不動産のおとり広告禁止のルールには,上記の告示によるもの以外に,公正競争規約(表示規約)というものもあります。
表示規約と告示の内容は実質的に同一です。
<おとり広告規制に関する表示規約と告示>
あ 規定の整理
次の2つの規定において
実質的に同一の内容が禁止行為として規定されている
ア 表示規約
不動産公正競争規約の中の1つである
規制対象者は加盟業者のみである
詳しくはこちら|不動産の公正競争規約(表示規制と景品規約)(全体)
イ 景品表示法の告示
規制対象者は『事業者』である
規定上,宅建業者という限定はない
い 禁止行為|広告の意味
顧客を誘引するための手段である
事業者が供給する不動産に関する事項・情報についての表示である
例;不動産の内容・取引条件
※景表法2条4項
※公正競争規約4条5項
※昭和55年4月12日公正取引委員会告示14号
3 不動産のおとり広告の規制内容(表示規約・告示)
おとり広告として公正競争規約・告示で禁止される表示の内容をまとめます。
<不動産のおとり広告の規制内容(表示規約・告示)>
『事業者』は,次の広告表示をしてはならない
ア 架空物件(後記※1)
物件が存在しないため,実際には取引することができない物件
イ 虚偽物件(後記※2)
物件は存在するが,実際には取引の対象となり得ない物件
ウ 取引拒否(後記※3)
物件は存在するが,事業者は実際には取引する意思がない物件
※公正競争規約21条
※昭和55年4月12日公正取引委員会告示14号
この3つの類型のそれぞれの内容については,以下説明します。
4 告示の架空物件の規定の運用基準
架空物件に関する具体例は,通達で示されています。
<告示の架空物件の規定の運用基準(※1)>
あ 告示1号|文言
『取引の申出に係る不動産が存在しない』
い 具体例
ア 不存在
広告物件が広告上の所在地に存在しない
イ 同一性なし
広告物件と実際の不動産に同一性を認めがたい
例;内容,形態,取引条件など
※昭和55年6月9日公正取引委員会事務局長通達9号
5 告示の虚偽物件の規定の運用基準
虚偽物件として規制される表示の具体的内容は,通達で示されています。
<告示の虚偽物件の規定の運用基準(※2)>
あ 告示2号|文言
『実際には取引の対象となり得ない』
い 具体例
ア 売却済・委託なし
・広告物件が売却済である
賃借人との契約も含めて『成約済』という意味である
・広告物件が,処分を委託されていない他人の不動産である
イ 重大な瑕疵
広告物件に重大な瑕疵がある
そのままでは当該物件は取引できないことが明らかである
※昭和55年6月9日公正取引委員会事務局長通達9号
6 告示の取引拒否の規定の運用基準
取引拒否として規制される態様の内容は,通達で示されています。
<告示の取引拒否の規定の運用基準(※3)>
あ 告示3号|文言
『実際には取引する意思がない』
い 具体例
ア 案内拒否
顧客を広告物件に案内することを拒否する
合理的な理由はない
イ 難点アピール
広告物件に関する難点をことさらに指摘する
当該物件の取引に応じない
顧客に他の物件を勧める
※昭和55年6月9日公正取引委員会事務局長通達9号
う 背景・典型例
業者が『名前を借りる』感覚でオーナーから『物件掲載の承諾を取り付けた』
そして『著しく安い販売価格・賃料』を販売価格として表示した
7 告示違反へのペナルティ(概要)
前記の告示に違反した場合のペナルティをまとめます。
<告示/表示規約違反へのペナルティ(概要)>
あ 法律的な扱い
ア 告示違反
景品表示法違反となる
→措置命令・指示処分の対象となる
※景表法4条1項3号,6条
イ 公正競争規約違反
景表法の『優良誤認・有利誤認』に該当する可能性が高くなる
→措置命令・指示処分の対象となる
※景表法4条1項1,2号,11条1項,6条
い 措置命令違反へのペナルティ
行政による『措置命令』に違反した場合
→刑事罰の対象となる(後記)
※景表法6条,16条
詳しくはこちら|景品表示法による不動産広告や表示の規制(全体)
詳しくはこちら|不動産の公正競争規約(表示規制と景品規約)(全体)
景品表示法の一般的・基本的事項は別に説明しています。
詳しくはこちら|景品表示法の基本(優良誤認・有利誤認と調査・指導・措置命令・罰則)