【宅建業法による不動産広告の規制】
1 虚偽・誇大広告|宅建業法|禁止される表示
2 誇大広告|対象となる事項|ガイドライン
3 虚偽広告|解釈・ガイドライン
4 優良誤認・有利誤認|解釈・ガイドライン
5 広告の開始時期制限・取引態様の明示
6 宅建業法違反へのペナルティ(主要事項)
7 国土交通省ガイドラインのソース
1 虚偽・誇大広告|宅建業法|禁止される表示
宅建業法に広告に関する規定があります。
虚偽広告・誇大広告を禁止するものです。
いわゆる『おとり広告』もこれらに含まれます。
当然ですが,対象者は『宅建業者』だけとなっています。
<虚偽・誇大広告|宅建業法|禁止される表示>
あ 対象となる広告
宅建業者が行う業務における広告
次の『虚偽広告・誇大広告』をしてはならない
い 虚偽広告・誇大広告|対象となる事項
ア 宅地・建物の所在,規模,形質イ 現在or将来の利用の制限,環境,交通その他の利便ウ 対価の額
例;代金,借賃など
エ 対価の支払方法オ 対価に関する金銭の賃借(ローン)のあっせん
う 禁止される広告・表示
ア 虚偽広告
著しく事実に相違する表示
イ 誇大広告=優良誤認・有利誤認
実際のものよりも著しく優良or有利であると誤認させる表示
※宅建業法32条
この中の『対象となる事項』『禁止される表示』については次に説明します。
2 誇大広告|対象となる事項|ガイドライン
宅建業法の『誇大広告』の対象となる事項は多いです(前記)。
国土交通省のガイドラインで,この詳しい内容・具体例が示されています。
<誇大広告|対象となる事項|ガイドライン>
あ 所在
広告物件の場所
特定する要素の例=地番,所在地,位置図など
い 規模
取引物件の面積,間取り
う 形質
取引物件の形状,性質
例;地目,供給施設,排水施設,構造,材料,用途,性能,経過年数など
え 現在or将来の利用の制限
取引物件に係る現在or将来の次の制限
ア 公法上の制限
公法による制限の設定・解除
例;都市計画法,建築基準法,農地法など
イ 私法上の制限
私法上の権利の有無・内容
例;借地権,定期借地権,地上権など
お 現在or将来の環境
取引物件に係る現在or将来の周囲の状況
ア 立地条件
例;静寂さ,快適さ,方位など
イ 公共施設の整備状況
デパート,コンビニエンスストア,商店街,学校,病院などの状況
道路,公園など
か 現在or将来の交通その他の利便
業務中心地に出るまでに利用する交通機関の便利さ
例;路線名,最寄りの駅,停留所までの所要時間,建設計画など
き 対価の額・支払方法
ア 代金,借賃,権利金などの金額イ 支払方法 例;現金一括払い,割賦払い,頭金,支払回数,支払期間
く 金銭の貸借のあっせん
金銭の貸借のあっせんの有無
貸借の条件
例;融資を受けるための資格,金利,返済回数,金利の計算方式など
※国土交通省ガイドライン『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』
3 虚偽広告|解釈・ガイドライン
虚偽広告の内容・解釈に関するガイドラインの基準をまとめます。
<虚偽広告|解釈・ガイドライン>
あ 条文上の文言
『著しく事実に相違する表示』
※宅建業法32条
い 判断基準
一般購入者が次の事項を知っていれば当然に誘引されないもの
仮定的な認識=『広告に書いてあることと事実との相違』
う 具体例
次の場合『著しく事実に相違する表示』に該当する
ア 市街化調整区域/市街化区域
真実=市街化調整区域に所在する
表示=『市街化区域』と表示した
イ 築年数
真実=建物が築後10年を経過している
表示=『築後1年』と表示した
ウ 農地/宅地
真実=地目が農地である
表示=『宅地』として表示した
え 注意
事実と当該表示との相違することの度合いが大きい場合
→これだけで判断されない
※国土交通省ガイドライン『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』
4 優良誤認・有利誤認|解釈・ガイドライン
優良誤認・有利誤認に関するガイドラインの基準をまとめます。
<優良誤認・有利誤認|解釈・ガイドライン>
あ 条文上の文言
『実際のものよりも著しく優良であり,若しくは著しく有利であると人を誤認させるような表示』
い 判断基準
一般購入者を誤認させる程度に達している
一般購入者=次の情報を持っていない者
・宅地建物についての専門的知識
・物件に関する実際の情報
う 具体例
表示=『駅まで1㎞の好立地』
真実=道のりは4km・直線距離が1km
一般購入者の誤認=『道のり』が1kmだろう
※国土交通省ガイドライン『宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方』
5 広告の開始時期制限・取引態様の明示
宅建業法には広告の開始時期や取引態様の明示に関する規定もあります。
<広告の開始時期制限・取引態様の明示>
あ 広告の開始時期の制限(概要)
未完成の宅地・建物について
広告の開始時期について制限がある
内容は表示規約による規定と同様である
詳しくはこちら|表示規約による表示開始時期・建築条件付の表示・表示事項の規制
※宅建業法33条,施行令2条の5
い 取引態様の明示
ア 基本事項
広告において取引態様を明示しなくてはならない
イ 取引態様の種類
・自らが売主となる
・代理
・媒介
※宅建業法34条1項
6 宅建業法違反へのペナルティ(主要事項)
宅建業法には,各種の規定に違反した場合のペナルティも規定されています。主要なペナルティの内容をまとめます。
<宅建業法違反へのペナルティ(主要事項)>
あ 指示処分(監督処分)
監督機関が『必要な指示』をすること
監督機関=国土交通省or都道府県知事
※宅建業法65条1項,3項
い 業務停止(監督処分)
1年以内の業務停止処分を受けることがある
※宅建業法65条2項2号,4項2号
う 免許取消
『情状が特に重い時』に免許取消処分を受けることがある
※宅建業法66条1項9号
詳しくはこちら|宅建業者に対する監督処分の基本(種類・対象行為)
え 刑事罰
法定刑=懲役6か月以下or罰金100万円以下
※宅建業法81条1号
詳しくはこちら|宅建業法違反の刑事責任(刑事罰)の規定
7 国土交通省ガイドラインのソース
以上の記事で用いたガイドラインのオリジナルを示しておきます。
<国土交通省ガイドラインのソース>
国土交通省のガイドライン
外部サイト|国土交通省|宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方