【スワップ取引|賭博罪の成否|解釈論|判例・目的論】

1 スワップ取引|内容
2 金利スワップ取引×賭博罪|基本
3 通貨スワップ取引×賭博罪|基本
4 通貨スワップ取引×賭博罪|目的論・判例

1 スワップ取引|内容

『スワップ取引』という種類の取引があります。
『デリバティブ取引』の1つとして分類されています。
本記事では,スワップ取引の適法性について説明します。
まず,スワップ取引の内容についてまとめます。

<スワップ取引|内容>

将来の複数回にわたる『異なるキャッシュフローの交換』を約定する取引
店頭取引が一般的である
いくつかの種類がある
ア 金利スワップ取引イ 通貨スワップ取引

スワップ取引の中の種類によって適法性の考え方も違ってきます。
順に説明します。

2 金利スワップ取引×賭博罪|基本

金利スワップ取引と賭博罪との抵触について説明します。

<金利スワップ取引×賭博罪|基本>

あ 金利スワップ取引|内容

同種通貨間
元本交換を行わない

い 固定金利vs固定金利

『偶然の支配』がない
→賭博罪は成立しない

う 一部が変動金利

『金利差』相当部分について『得喪』が生じる
→賭博罪の構成要件に該当する
※福島良治『スワップディーラーは常習賭博犯!?その1』金融法務事情1369号p93

3 通貨スワップ取引×賭博罪|基本

通貨スワップ取引と賭博罪との抵触について説明します。

<通貨スワップ取引×賭博罪|基本>

あ 通貨スワップ|内容

異種通貨間
元本交換を行う

い 賭博罪の成否

全部の交換
→『得喪』に該当しない
→賭博罪は成立しない方向性
※山下友信・神田秀樹『金融商品取引法概説』有斐閣2010年p44

上記は,解釈の方向性です。
具体的事例についての判例があります。
次に説明します。

4 通貨スワップ取引×賭博罪|目的論・判例

通貨スワップ取引に関する判例を紹介します。
『目的』によって適法性を判断する,という見解が取られています。

<通貨スワップ取引×賭博罪|目的論・判例>

あ 基本的な目的=リスクヘッジ

『通貨スワップ取引』により,為替変動に伴う危険を回避できる
実需に応じた外貨による決済を行う場合に有用である

い 投機目的の併存

市場における取引全体の円滑な運用が必要である
危険回避目的で取引する者だけでは市場取引が機能しない
投機目的で取引する者も必要になる

う 投機目的×賭博罪

投機目的での取引の対象とされることがある
このことのみをもって,公序良俗違反とはいえない
=違法・賭博罪成立とは言えない
※東京地裁平成10年7月17日

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