【外国為替証拠金取引=FX|賭博罪の成否|解釈論・判例】
1 外国為替証拠金取引|内容・呼称
2 外国為替証拠金取引|法規制・歴史
3 外国為替証拠金取引・民事判例|法規制なし時代
4 外国為替証拠金取引・民事判例|法規制あり時代
5 外国為替証拠金取引×賭博罪|相当性理論|基本
6 外国為替証拠金取引×賭博罪|相当性理論|事案
7 外国為替証拠金取引×刑事責任
1 外国為替証拠金取引|内容・呼称
外国為替証拠金取引という種類の取引があります。
一般的には『FX』と呼ばれています。
デリバティブ取引の1つとして分類されています。
本記事では外国為替証拠金取引と賭博罪との抵触について説明します。
まずは外国為替証拠金取引の基本的事項をまとめます。
<外国為替証拠金取引|内容・呼称>
あ 取引の内容
外国通貨の売買
『差金決済』を行う
取引前に業者に証拠金を預託する
い 一般的呼称=FX
外国為替
→Foreign eXchange
→『FX』と呼ばれる
2 外国為替証拠金取引|法規制・歴史
外国為替証拠金取引は法規制の対象となっています。
法規制が創設された経緯をまとめます。
<外国為替証拠金取引|法規制・歴史>
あ 平成16年政令改正以前
法規制が及んでいなかった
い 平成16年政令改正
金融商品販売法の政令指定商品となった
金融商品販売法の適用を受けることとなった
※金融商品販売法2条
3 外国為替証拠金取引・民事判例|法規制なし時代
外国為替証拠金取引は大きな損失を生じることがよくあります。
そこで民事的な賠償責任に関して訴訟となるケースも多いです。
民事訴訟の中で違法性が判断されます。
『賭博』に該当するかどうかも判断された判例があります。
まずは,法規制がない時代の民事訴訟の判例をまとめます。
<外国為替証拠金取引・民事判例|法規制なし時代>
あ 判例|賭博罪に該当する
市場外での取引について
『賭博罪の構成要件に該当する』or『賭博に該当する』
→民事上も違法である
※東京高裁平成18年9月21日
※岡山地裁平成18年11月9日
※東京地裁平成17年11月11日
※東京地裁平成19年1月24日
い 判例|賭博類似
『賭博類似の取引』である
※東京地裁平成18年12月15日
以上の判例は法規制前の古いものです。
法規制の施行後の最近のものは次に説明します。
4 外国為替証拠金取引・民事判例|法規制あり時代
法規制の施行後の外国為替証拠金取引についての判例を紹介します。
<外国為替証拠金取引・民事判例|法規制あり時代>
あ 証取法の根拠
証券会社の兼業業務として認められていた
※証取法34条2項5号
い 取引の適法性
『あ』から直ちに取引が適法であることにはならない
う 個別事情の考慮
経済的合理性を有する取引であると認められない
→賭博性を有する取引であった
→公序良俗に反する取引であった
※仙台地裁平成19年9月5日
え ポイント
個別事情によって『賭博性』の有無が判断されるという構造である
5 外国為替証拠金取引×賭博罪|相当性理論|基本
外国為替証拠金取引と賭博罪の成否を『相当性』で判断する見解があります。
この見解を採用した判例を紹介します。
<外国為替証拠金取引×賭博罪|相当性理論|基本>
あ 前提=賭博該当
外国為替証拠金取引は『賭博』に該当する
い 金融商品販売法との関係
金融商品販売法の規制がある
→このことは,法令or正当業務行為には当たらない
=違法性阻却事由にならない
う 相当性による違法性阻却
次のいずれにも該当する場合
→違法性が阻却する(と解し得る余地がある)
ア 金融取引の目的に相当性があるイ 取引自体が相当である
※東京高裁平成18年9月21日
6 外国為替証拠金取引×賭博罪|相当性理論|事案
上記の判例は『相当性理論』を採用しました。
具体的事案について判断した結果をまとめます。
<外国為替証拠金取引×賭博罪|相当性理論|事案>
あ 事案
極めて投機性が大きいリスクのある取引であった
顧客に対する危険性の説明義務が尽くされていなかった
い 裁判所の判断
目的・取引自体の『相当性』はない
→取引は民事的に違法である
※東京高裁平成18年9月21日
7 外国為替証拠金取引×刑事責任
上記判例は民事責任に関するものです。
ストレートに『賭博罪として有罪かどうか』というものではありません。
直接,刑事責任として賭博罪の成否を判断した判例はまだないようです。
<外国為替証拠金取引×刑事責任>
刑事の裁判例
→見当たらない
理論的に賭博罪が成立しない,ということにはなりません。
検察官が立件していないだけ,ということも考えられます。
ですから,現時点では判断基準に曖昧な部分があると言えます。