【IT重説による非対面の重要事項説明解禁の制度の導入経緯】

1 IT重説|メリット|国土交通省|引用
2 IT重説|公的解釈論|ガイドライン・アクションプラン
3 アクションプラン|IT重説・解釈論+対処方針
4 ガイドライン|解釈論+IT重説社会実験
5 IT重説ガイドライン|今後の方向性|検証→本格運用
6 IT重説と現実的な普及ハードル
7 参考情報|Nomad・鈴木直樹氏
8 IT重説の社会実験開始後の普及の状況(概要)

1 IT重説|メリット|国土交通省|引用

不動産仲介業務の中に『重要事項説明』があります。
詳しくはこちら|宅建業者・重要事項説明義務|基本|内容・説明する場面・方法
重要事項説明をオンラインで行えるとコスト削減・証拠化など,多くのメリットがあります。
オンラインでの重要事項説明のことを『IT重説』と呼んでいます。
この点,宅建業法上,IT重説はできないという解釈があります。
法解釈と例外的な扱いについては後述します。
まずは,IT重説のメリットを説明します。
公的な資料で示されていますので紹介します。

<IT重説|メリット|国土交通省|引用>

IT活用により期待されるメリット(何がIT化でよくなるのか)
・現在対面で行うとされている重要事項説明については、ITの活用(※) によって対面と同等の説明が可能となる余地があり、これは取引において 地理的な制約が消滅することを意味する。すなわち、ITの活用により、 消費者・事業者双方について、従来の取引であれば相対するために要する 時間コストや金銭コストの縮減が期待できるのではないか。
・特に遠距離物件の取引であればあるほど、このメリットは大きく発現する と考えられるのではないか。 ※ここではIT活用の例としてテレビ電話(Skype 等)の利用を想定して
いる。
・更に、IT化によって重要事項説明を録画して保存することが可能となり、 説明内容の誤りやの理解不足を原因としたトラブルの防止にも寄与する ことも想定できるのではないか。
・書面の交付については、ITの活用(※)によって、ペーパーレスでの取引が可能となり、書面化や送付に要するコスト縮減も期待できるのではな いか。 ※ここではIT活用の例としてメールでの書面送付を想定している。
・IT活用の検討に際しては、その効果が健全な市場の拡大をもたらすもの でなければならないのではないか。例えば、取引の効率化・低コスト化に より、新たな取引のニーズが掘り起こされるなど、市場を拡大する効果を もたらす方向でITの活用が検討される必要があるのではないか。
別サイト|第三回 ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会【資料2】ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会 中間とりまとめ(案)

そして,IT重説を運用を促進する施策が進められています。
次に説明します。

2 IT重説|公的解釈論|ガイドライン・アクションプラン

IT重説の推進に関して公的な資料を2つ紹介します。

<IT重説|公的解釈論|ガイドライン・アクションプラン>

あ アクションプラン

平成25年12月20日
高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部
IT利活用の裾野拡大のための
規制制度改革集中アクションプラン
外部サイト|規制制度改革集中アクションプラン

い ガイドライン

平成27年5月制定
平成29年5月31日改定(最終)
国土交通省 土地・建設産業局 不動産業課
ITを活用した重要事項説明に係る社会実験のためのガイドライン
詳しくはこちら|IT重説ガイドラインの内容(全体)

この2つの資料の内容は次に説明します。

3 アクションプラン|IT重説・解釈論+対処方針

上記『アクションプラン』の中でIT重説に関する部分をまとめます。

<アクションプラン|IT重説・解釈論+対処方針>

あ 項目名

不動産取引における重要事項説明に際しての対面原則の見直し

い 現行制度・解釈論|引用

不動産取引の契約に際して宅地建物取引主任者が行う重要事項説明は、対面で行うこととされており、インターネットを通じて行うことは認められていない。
また、契約の際に交付が義務付けられている書面の電磁的方法による交付も認められていない。

う 対処方針

国土交通省は、インターネット等を利用した、対面以外の方法による重要事項説明について、具体的な手法や課題への対応策に関する検討に着手し、平成 26 年6月に中間とりまとめを行い、平成 26 年中に結論を得て、必要な方策を講じる。
また、契約に際して交付する書面の電磁的方法による交付の可能性についても検討を行い、平成26年中に結論を得る。
※アクションプラン(前記)p2

4 ガイドライン|解釈論+IT重説社会実験

IT重説に関して国土交通省がガイドラインを作成しました(前記)。
このガイドラインでは『IT重説の社会実験』の内容を規定しています。
IT重説社会実験の基本的な事項をまとめます。

<ガイドライン|解釈論+IT重説社会実験>

あ 解釈論

宅地建物取引士が行う重要事項説明は対面で行うこととされている
※宅建業法35条

い IT重説|社会実験として実施

社会実験として重要事項説明におけるIT活用を試行する
『ルール=事業者の責務』などはガイドラインの中で定める(後記)
その後,結果の検証を行う(後記)

う 社会実験の期間(第1期)

ア 社会実験スタート日 平成27年8月31日
イ 社会実験終了予定時期 平成29年1月末
※ガイドライン(前記)p1『1』

以上のように公的解釈では『現行法ではIT重説はNG』となっています。
この解釈自体は大きな問題・不合理性が指摘されています。
詳しくはこちら|IT重説ガイドライン・不合理性|全体・非対面NG解釈
本記事では公的解釈を前提として説明を続けます。

5 IT重説ガイドライン|今後の方向性|検証→本格運用

ガイドラインではIT重説を社会実験として位置づけています。
そのため,運用状況の検証と将来的な方向性が示されています。

<IT重説ガイドライン|今後の方向性|検証→本格運用>

あ 検証委員会

IT重説社会実験の結果を検証する
検証は検証検討会において行う

い 検証結果・本格運用

問題ない+新たに懸念される点が生じなかった場合
→賃貸取引・法人間取引について本格運用へ移行する

う さらなる発展

売買取引・個人を含む取引について
今後,社会実験or本格運用を行うことを検討する
※ガイドライン(前記)p1『1』

6 IT重説と現実的な普及ハードル

IT重説の普及には,現実的なハードルがあるという指摘も多いです。
これはガイドラインのルールには負担が大きいものが含まれるからです。

<IT重説|現実・普及ハードル>

IT重説の同意書の作成が大きな負担である
ユーザーの署名捺印・返送の手間が大きい
ユーザーが『面倒だから直接会った方が良い』と思う傾向が強い
※ホリエモンドットコム|鈴木直樹氏(後記)

ガイドライン自体が『本気で普及を考えていない』と思えます。
そうは言っても,将来変わるための『きっかけ』になる可能性はあります。
ルール改正を必死に阻止する既存事業者と推進勢力の衝突がうかがえます。

7 参考情報|Nomad・鈴木直樹氏

不動産流通の改良・イノベーションに取り組む方・事業者は多くいらっしゃいます。
本記事で参考としたコメント・発言者を記しておきます。

<参考情報|Nomad・鈴木直樹氏>

あ 対談|ホリエモンドットコム

鈴木直樹氏・堀江貴文氏
『テクノロジーで不動産賃貸の取り引きを変える』
ノマドの鈴木直樹が考える『お部屋探しサービス』の未来とは?
外部サイト|ホリエモンドットコム|鈴木直樹氏・対談

い スピーカー

鈴木直樹氏
ノマド株式会社代表取締役
次の物件紹介サービスの運営を開始した
現在はイタンジ株式会社が運営を承継している

う サービス|Nomad

『Nomad(ノマド)』
キャッチ=便利でお得なお部屋情報紹介サービス
特徴=賃貸・仲介手数料・全物件ゼロ円
外部サイト|Nomad

8 IT重説の社会実験開始後の普及の状況(概要)

実際にIT重説の社会実験は開始し,平成29年1月に第1期が終了しました。
その後,IT重説は便利であり,かつ,特に問題はないということが確認されました。
そこで,社会実験は継続されています。
社会実験の結果については国交省が公表しています。
詳しくはこちら|IT重説の社会実験第1期の結果と継続(国土交通省のとりまとめ)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINE
【不動産仲介業における内見・重要事項説明へのIT活用に関する法律問題】
【IT重説ガイドラインの内容(全体)】

関連記事

無料相談予約 受付中

0120-96-1040

受付時間 平日9:00 - 20:00