【懐胎時期に関する証明書|嫡出推定の誤作動を解消する役所の扱い】
1 出生届・懐胎時期に関する証明書|前提・事例
2 嫡出推定・誤作動×出生届|解消方法|原則
3 出生届・懐胎時期に関する証明書→推定が及ばない
4 懐胎時期に関する証明書|注意=適用対象外
1 出生届・懐胎時期に関する証明書|前提・事例
嫡出推定の『誤作動』が生じることがあります。
この場合『出生届』の提出に関して困ったことになります。
詳しくはこちら|嫡出推定・誤作動|出生届|戸籍の訂正|義務・期限・罰則
この出生届の問題を回避する方法があります。
『懐胎時期に関する証明書』の制度です。
まずはこの方法が利用できる前提条件・典型的な経緯をまとめます。
<出生届・懐胎時期に関する証明書|前提・事例>
あ 具体例|経緯
妻Aは夫Bと離婚した
離婚後,Aは別の男性Cとの間の子を妊娠した
Aは『離婚から300日以内』に出産した
→『Bの嫡出子』という推定が適用される
い 具体例|要因
ア 離婚届の提出が遅れたイ 早産ウ 不貞的交際 詳しくはこちら|嫡出推定・誤作動|典型的具体例|婚姻形骸化・早産・不貞=カッコウ托卵
2 嫡出推定・誤作動×出生届|解消方法|原則
嫡出推定の誤作動を解消する方法があります。
まずは原則的な方法をまとめます。
<嫡出推定・誤作動×出生届|解消方法|原則>
あ 出生届・扱い
『A・Bの嫡出子』としての推定が適用される
→Bを父とせざるを得ない
→戸籍にBが『父』として記録されてしまう
い 不合理な戸籍→解消・回避方法
Bが『嫡出否認』の調停・訴訟を申し立てる必要がある
詳しくはこちら|親子関係・手続|基本・まとめ|背景・実情・法的根拠
家裁の手続が必要なのです。
手間・コストが結構かかってしまいます。
しかし一定の状況にある場合,このような手続が不要となります。
3 出生届・懐胎時期に関する証明書→推定が及ばない
一定の事情がある場合『嫡出推定の適用が除外される』扱いがなされます。
出生届に関して法務省の通達によるルールがあります。
これを紹介します。
<出生届・懐胎時期に関する証明書→推定が及ばない>
あ 条件
ア 嫡出推定の誤作動
婚姻の解消or取消後300日以内に子が生まれた
主に『離婚』のことである
※民法772条2項
イ 推定が『及ばない』ことの証明
『婚姻の解消or取消後に妊娠した』証明書がある
医師作成の証明書である
い 救済的措置|基本
出生届において『嫡出推定が及ばない』ものとして扱う
=嫡出推定を適用しない
う 救済的措置|具体的方法
次のどちらかとして扱う
ア 『非嫡出子』とするイ 後から婚姻した夫を父とした『嫡出子』とする
※平成19年5月7日法務省民一第1007号通達
4 懐胎時期に関する証明書|注意=適用対象外
『懐胎時期に関する証明書』は家裁の手続を回避できる有用な扱いです。
しかし事情によってはこの方法が利用できません。
誤解される方も多いようなので,まとめておきます。
<懐胎時期に関する証明書|注意=適用対象外>
あ 適用されないケース
前の夫との離婚より『前』に妊娠していた場合
→通達の条件(上記)に該当しない
い 原則的回避方法
『嫡出否認』の調停・訴訟を利用せざるを得ない(前記)
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