【ヤミ民泊・防御策|ゲストへの説明・リスティングの警告テキスト】

1 ヤミ民泊の普及×防御できない『防御策』
2 ヤミ民泊・防御策|ゲストへの説明事項|典型例
3 ヤミ民泊・防御策|リスティング|典型例
4 ヤミ民泊・防御策|詐欺罪の分析
5 ヤミ民泊・防御策×防御効果|おとり捜査
6 ヤミ民泊・防御策×識別情報・リスク呼びこみ現象

1 ヤミ民泊の普及×防御できない『防御策』

近年,シェアリングエコノミーが普及しています。
社会的・産業的に発展が期待されています。
その一方で便乗的に『違法な民泊=ヤミ民泊』も残念ながら流行っています。
ヤミ民泊の世界では『防御策』が流行してきています。
しかしこの『防御策』が防御機能を持たず,むしろ別の機能を発揮しています。
本記事では,おかしみのあるヤミ民泊の『防御策』について説明します。

2 ヤミ民泊・防御策|ゲストへの説明事項|典型例

ホストから『ゲストへの注意事項』として特徴のあるテキストが拡がっています。
まずは流行りの説明・注意事項を紹介します。

<ヤミ民泊・防御策|ゲストへの説明事項|典型例>

インターフォンには応答しないでください。
建物周辺やアパート内で住人に何か質問された場合は『私の友達』と説明してください。
外部サイト|マンション・チラシの定点観測|隠れ民泊のホストが繰り出すあの手この手

3 ヤミ民泊・防御策|リスティング|典型例

ヤミ民泊で流行の『リスティングにおける表記』もあります。

<ヤミ民泊・防御策|リスティング|典型例>

この部屋を民事契約の調査のために利用することはできません。
この部屋の調査を目的として,興信所・探偵・調査会社が利用することを禁じます。
調査目的での予約を行った場合は,不法行為による損害賠償請求,詐欺罪及び威力業務妨害罪として警察署への被害届提出・検察庁への刑事告訴を致します。
虚偽の情報をもって契約を成立させる行為は詐欺罪として判例が確立しています。
※当事務所注;法的解釈論は正しいものではありません(後述)
外部サイト|マンション・チラシの定点観測|隠れ民泊のホストが繰り出すあの手この手

以上のテキストは『防御策』として採用されています。
『詐欺罪』としての判例が示されているものもあります。
しかしこれらの『警告』は現実的・理論的な抑止力はないと思われます。
むしろ,逆効果を生じていると分析できます。
法的・現実的効果の分析は次に説明します。

4 ヤミ民泊・防御策|詐欺罪の分析

『防御策』の『防御効果』についての分析します。
リスティングに『詐欺罪が成立する』という警告の説明があります(前記)。
これについて,確かに法律的な解釈論が判例で示されています。
これをまとめます。

<ヤミ民泊・防御策|詐欺罪の分析>

あ 意図を隠した取引×詐欺罪|概要

意図を隠して取引を行うことが『詐欺罪』に該当するケースもある
『詐欺罪』が成立するのは次のようなものである
ア 暴力団関係者であることを隠した・虚偽の申告をしたイ 預金口座を犯罪組織に譲渡する目的で預金口座開設をした 『反社会的である』ことが前提となっている
詳しくはこちら|真実・意図を隠した取引×詐欺罪|理論・判例|個別財産説

い 調査目的の宿泊申込×違法性

調査目的の宿泊は『反社会的』ではない
→基本的に違法性はない
=『詐欺罪』は成立しない可能性が高い

さらに別の角度からも分析します。

5 ヤミ民泊・防御策×防御効果|おとり捜査

『調査目的での宿泊申込』を捜査機関が行えば『おとり捜査』と言えます。
一般の方の場合は『おとり捜査』ではないです。
いずれにしても参考・比較となりますので分析します。

<ヤミ民泊・防御策×防御効果|おとり捜査>

あ おとり捜査×違法性

調査目的での取引は『おとり捜査』に類似する
『おとり捜査』のうち『犯意誘発型』は違法と判断されることが多い
『機会提供型』は一般的に適法と判断されている
詳しくはこちら|おとり捜査|基本・解釈論・判例|二分説=機会提供型/犯意誘発型

い 調査目的での宿泊

『宿泊申込』以前からホストはサービス提供の意図を有している
→『機会提供型』に該当する
→(捜査だとしても)適法である

結局,ヤミ民泊の『警告文』は,理論的・法的な抑止効果はないと思われます。
調査を抑止・撃退する理論的な効果はないと言えます。

6 ヤミ民泊・防御策×識別情報・リスク呼びこみ現象

『防御策』の『想定外の効果』についてまとめます。

<ヤミ民泊・防御策×識別情報・リスク呼びこみ現象>

あ ホストの法的責任アップ

違法行為を『隠すように要請する』行為に該当する可能性あり
→ホストが『犯人蔵匿/隠避罪』の『教唆犯』になる可能性あり
詳しくはこちら|犯人による犯人蔵匿罪・証拠隠滅罪の教唆犯|判例は積極説

い 既存事業者の巡回→調査優先度アップ

オンライン情報の巡回業務を行う団体があると指摘されている
主要巡回団体=レガシー旅館業の業界団体
調査対象者候補リストに載せられる可能性が高まる
グレーリストは保健所に提出される
→保健所の調査対象としての優先度が高まる
詳しくはこちら|シェアリング|ゲリラマーケット|調査・検挙ハードル|優先順序・実態

試しに典型的なテキストでググッて見ると物件情報が押し寄せてきます。
ググっているのは誰でしょうか。
調査をする行政機関やこれを利害を共通にする既存業者が容易に想定できます。
『防御策』は『ヤミ民泊』であることを示す『識別情報』としての機能を発揮しています。

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