【筆界特定制度|問題点|境界標設置・未確定状態|無期限・誤認誘発】
1 筆界特定制度|問題点|全体
2 筆界特定制度|問題点|境界標の設置
3 筆界特定制度|問題点|未確定状態|基本・無期限
4 筆界特定制度|問題点|未確定状態|誤解・誤認
5 筆界特定制度|問題点|フォロー策
6 筆界特定×訴訟|現実的影響
1 筆界特定制度|問題点|全体
筆界特定制度は迅速などのメリットがあります。
この『簡易』な性格が問題点にもつながっています。
本記事では筆界特定制度の問題点を説明します。
まずは問題点の全体を整理します。
<筆界特定制度|問題点|全体>
あ 根本的問題点
筆界特定の手続が終了しても
→紛争の完全・最終的な解決に至らない
い 不完全な事項
ア 境界標の設置
筆界特定とは別に『隣地所有者の承諾』が必要である
→境界標設置ができないままになることがある
イ 未確定の状態
最終的な『境界確定』ではない
事後的に訴訟に至る可能性が残る
ウ 不完全な特定
筆界の位置の『範囲』が示されて終わることがある
2 筆界特定制度|問題点|境界標の設置
筆界特定制度では『境界標を設置する』という時に問題が生じます。
具体的な内容をまとめます。
<筆界特定制度|問題点|境界標の設置>
境界標を設置するためには『隣地所有者の同意』が必要である
確定判決であれば同意不要である
(別記事『境界標の設置』;リンクは末尾に表示)
3 筆界特定制度|問題点|未確定状態|基本・無期限
筆界特定の手続後も『未確定』という状態にあります。
まずは基本的事項をまとめます。
<筆界特定制度|問題点|未確定状態|基本・無期限>
あ 根本的問題
筆界特定の終了後に境界確定訴訟提起が可能である
行政の判断は裁判所を拘束しない
→筆界特定の結論は裁判所を拘束しない
詳しくはこちら|行政の肥大化・官僚統治|コスト・ブロック現象|小規模事業・大企業
い 期間無制限
ア 訴訟提起の期間制限
訴訟提起には期間制限はない
イ 比較|一般的な訴訟
金銭の請求についての確定判決を得た場合ですら
→『10年の消滅時効』がある
※民法174条の2第1項
詳しくはこちら|債権の消滅時効の基本(援用・起算点・中断)
4 筆界特定制度|問題点|未確定状態|誤解・誤認
筆界特定の手続後も『未確定』という状態になります(前述)。
これがさらに波及的に悪影響を生じます。
<筆界特定制度|問題点|未確定状態|誤解・誤認>
あ 誤解・誤認を生じる状態
『境界が確定したと誤認させる表示・状態』が生じる
ア 土地の登記事項に記載されるイ 地積更正登記・分筆登記の申請が可能である
これらの登記を見て『隣地所有者の承諾がある』と誤解しやすい
→実際には『隣地所有者の承諾なし』ということがある
ウ 訴訟の期間無制限
筆界特定後,長期間が経過していた場合でも
→境界が確定していない可能性がある(前記)
い 誤解・誤認による譲渡
『あ』の誤解・誤信があるまま売買が行われるリスクがある
→売買契約の解消や損害賠償請求に至る
詳しくはこちら|売買契約の説明不備・誤解→契約解消・損害賠償|まとめ
5 筆界特定制度|問題点|フォロー策
筆界特定制度は以上のような問題点があります。
現実的にこの問題を解消する方法もあります。
<筆界特定制度|問題点|フォロー策>
あ 筆界特定の手続終了時
関係当事者全員で『境界の確認書』に調印を行う
納得していない者が1人でもいる場合はできない
い 土地譲渡の時
譲渡する時には『境界・所有権境未確定』を説明する
売買における説明義務の対象と言える
詳しくはこちら|土地売買|面積の食い違い・面積不足|境界未確定・数量指示売買
問題点は確実に解消できるわけではありません。
6 筆界特定×訴訟|現実的影響
筆界特定の手続は『後から訴訟で覆される』という問題点があります(前述)。
ただし,現実・実務ではこのような理論とは違う傾向があります。
<筆界特定×訴訟|現実的影響>
あ 理論
筆界特定の結論は裁判所を拘束しない(前記)
い 現実的な影響
実際には裁判所の判断に大きく影響する
う 実務的な心得
筆界特定における主張・立証が非常に重要である
その後の訴訟で覆す,と考えるのは非常にリスキーである
いずれにしても筆界特定制度はプラス・マイナスの面がいくつもあるのです。
すべてを含めて最適な解決手段を選択すべきです。
詳しくはこちら|土地境界のトラブルの解決手続の種類や方法の全体像