【国家公務員法・天下り禁止|仲間を天下らせ・天下り準備・過去の威信活用】
1 天下り禁止ルール|正式名称
2 仲間を天下らせ・天下り準備|共通事項|基本
3 仲間を天下らせタイプ|当事者
4 仲間を天下らせタイプ|働きかけ
5 天下り準備タイプ|当事者
6 天下り準備タイプ|働きかけ
7 過去の威信活用|基本=当事者・罰則
8 過去の威信活用|働きかけ
9 過去の威信活用|罰則
1 天下り禁止ルール|正式名称
日本では『天下り』という現象がよく見られます。
行政と民間企業の癒着として批判も強いです。
本記事では法律上の『天下り』の扱いについて説明します。
まずは法律上の名称から整理します。
<天下り禁止ルール|正式名称>
あ 国家公務員法・セクション名称
第3章 職員に適用される基準
第8節 退職管理
第1款 離職後の就職に関する規制
い 禁止行為|名称
俗称 | 正式名称 | 国家公務員法 |
仲間を天下らせ | 他の役職員についての依頼等の規制 | 106条の2 |
天下り準備 | 在職中の求職の規制 | 106条の3 |
過去の威信活用 | 再就職者による依頼等の規制 | 106条の4 |
法律上の用語はちょっと分かりにくいです。
そこで本記事では以下『俗称』を主に用います。
2 仲間を天下らせ・天下り準備|共通事項|基本
国家公務員法では一定の『天下り』が禁止されています。
その中でも主要な2つのタイプの基本的事項をまとめます。
<仲間を天下らせ・天下り準備|共通事項|基本>
あ 構造
『主体』が『天下り先』に対して
『対象者』を『天下らせる働きかけ』を行う
い 適用除外
一定の適用除外がある
※国家公務員法106条の2第2項,106条の3第2項
う 罰則
ア 刑事罰
刑事罰はない
※国家公務員法112条;明文で除外されている
イ 懲戒処分
懲戒処分の対象となる
詳しくはこちら|国家公務員・懲戒処分|違反行為・処分の種類・退職後の扱い
なお,行為が『賄賂罪』に該当する場合は当然刑事罰の対象となります。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|賄賂関係|収賄罪・贈賄罪|国家公務員倫理規程・収賄禁止規定
3 仲間を天下らせタイプ|当事者
『仲間を天下らせる』タイプの違反行為を整理します。
まずは登場人物についてまとめます。
<仲間を天下らせタイプ|当事者>
あ 主体=あっせんする者
一般職の国家公務員
い 天下り先(※1)
ア 対象となる機関
営利企業・非営利法人
イ 除外される機関
国・国際機関・地方公共団体
行政執行法人・特定地方独立行政法人
う 天下り対象者
『主体』以外の現役の一般職国家公務員
『主体』以外の過去に一般職国家公務員であった者
※国家公務員法106条の2第1項
4 仲間を天下らせタイプ|働きかけ
『仲間を天下らせる』タイプの『働きかけ』の内容をまとめます。
<仲間を天下らせタイプ|働きかけ>
あ 働きかけの目的
相手or子法人への就職が目的である
い 働きかけ|内容
次のいずれかの行為
ア 天下り対象者に関する情報を提供するイ 天下り先の地位に関する情報の提供を依頼するウ 就職させることを要求or依頼する
※国家公務員法106条の2第1項,2条4項
5 天下り準備タイプ|当事者
自分が将来天下る準備をする,というタイプもあります。
この登場人物を整理します。
<天下り準備タイプ|当事者>
あ 主体=準備する者
一般職の国家公務員
い 天下り先
仲間を天下らせタイプの『天下り先(上記※1)』と同様
かつ『主体』の職務に利害関係を有するもの
※国家公務員法106条の3第1項
6 天下り準備タイプ|働きかけ
自分が天下る準備をするタイプにおける『働きかけ』内容をまとめます。
<天下り準備タイプ|働きかけ>
あ 働きかけの目的
相手or子法人への就職が目的である
い 働きかけ|内容
ア 自己に関する情報を提供するイ 天下り先に関する情報の提供を依頼するウ 就職させることを要求or約束する ※国家公務員法106条の3第1項
7 過去の威信活用|基本=当事者・罰則
天下りに関する禁止行為としてOB用のものがあります。
『過去の威信を活用・悪用する』というタイプです。
まずは当事者についてまとめます。
<過去の威信活用|当事者>
あ 主体|再就職者
過去に職員だった
離職後に営利企業の地位に就いている
い 威信をぶつける相手
離職前5年間に在職していた局・組織に属する職員・役員
※国家公務員法106条の4第1項
う 適用除外
一定の適用除外がある
※国家公務員法106条の4第5項
8 過去の威信活用|働きかけ
過去の威信活用タイプの行為の内容をまとめます。
<過去の威信活用|働きかけ>
あ 働きかけ|概要
職務上の行為をするようにorしないように要求or依頼する
い 働きかけ|マター
『あ』の要求・依頼は次のいずれかに関する事項である
ア 契約
行政機関と相手・子法人との間で締結される契約
例;売買・貸借・請負など
イ 処分
相手・子法人に対して行われる行政処分
う 働きかけ|期間
離職後2年間
※国家公務員法106条の4第1項
9 過去の威信活用|罰則
過去の威信活用タイプの罰則をまとめます。
<過去の威信活用|罰則>
あ 刑事罰
過料10万円以下
※国家公務員法113条1号
い 懲戒処分
すでに公務員ではない
→懲戒処分の対象にはならない
すでに退職後なので理論的に『懲戒処分』はできません。
その代わりに刑事罰が規定されているのです。