【データ消失事故×法的責任|過失・重過失の判断】

1 過失|解釈論|基本
2 重過失|解釈論|基本
3 重過失・軽過失|事故要因×判断の傾向
4 過失の判断|事例・判例|まとめ

1 過失|解釈論|基本

データ消失事故については,過失の判断が問題となります。
本記事では過失・重過失の判断について説明します。
まずは『過失』の解釈の基本的事項をまとめます。

<過失|解釈論|基本>

あ 過失|本質

『注意義務違反』のことである

い 注意義務の前提

『予見可能性』が前提となる

2 重過失|解釈論|基本

『重過失』の解釈の基本的事項をまとめます。

<重過失|解釈論|基本>

あ 予見可能性

たやすく違法有害な結果を予見することができた

い 注意の程度

通常人に要求される程度のわずかの注意の範囲内である
『相当な注意』は必要ではない

う 注意義務違反

『予見すべき事項』を漫然と見すごした
→ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態と言える
※最高裁昭和32年7月9日

3 重過失・軽過失|事故要因×判断の傾向

データ消失事故での過失の判断の傾向についてまとめます。

<重過失・軽過失|事故要因×判断の傾向>

あ 積極的操作ミス

積極的な操作・行為が不適切であった
例;メンテナンスの実行上の操作ミス
→注意義務違反と言える
=重過失・軽過失が認められる方向性

い 機器の経年劣化

機器の経年劣化によりデータが消失した
機材の選定・設置・メンテナンスに不備がない場合
→重過失・軽過失は認められない傾向がある

う システムの不具合

物理的・プログラム上の不具合が潜んでいた場合
→『予見できなかった』という可能性もある
→『注意義務違反』が否定される可能性もある
→具体的事情によって『過失』の有無が判断される

4 過失の判断|事例・判例|まとめ

実際の判例における過失の判断結果をまとめます。
上記の『判断の傾向』の元とした判例です。

<過失の判断|事例・判例|まとめ>

あ 積極的操作ミス

過失が認められたケース
※東京地裁平成13年9月28日レンタルサーバーデータ消失事件
詳しくはこちら|データ消失事件・メンテナンス作業ミス|判例

い 機器の経年劣化

『重過失』が認められなかったケース
※東京地裁平成21年5月20日ねこじゃらし事件
詳しくはこちら|機器の経年劣化によるデータ消失事故の裁判例(ねこじゃらし事件)

う システムの不具合

システムのバグ→『重過失』は認められなかったケース
『発注取消が遅れたこと』については『重過失』が認められた
『データ消失事故』ではないが参考となる判例である
※東京高裁平成25年7月24日ジェイコム株式誤発注事件
※最高裁平成27年9月3日;上告棄却
詳しくはこちら|ジェイコム株式誤発注事件|判例

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