【一時帰休・休業|賃金・休業手当の支給の有無・金額】

1 休業×賃金・手当支給|基本
2 休業手当|帰責事由の解釈|基本
3 休業手当|雇用主の帰責事由あり|具体例
4 休業手当|雇用主の帰責事由なし|具体例
5 休業|雇用主の帰責事由あり|休業手当|労働基準法
6 休業|雇用主の都合|休業手当|民法
7 休業|雇用主の都合|休業手当|まとめ
8 一時帰休|雇用調整助成金

1 休業×賃金・手当支給|基本

本記事では『休業』の際の賃金・手当について説明します。
まずは休業の際の賃金・手当支給に関する基本的事項をまとめます。

<休業×賃金・手当支給|基本>

あ 賃金

休業の際は『賃金』は発生しない
ノーワーク・ノーペイの原則のとおりである

い 休業手当|基本

『雇用主の帰責事由』の有無によって異なる

う 休業手当|支給有無・基準
雇用主の帰責事由 休業手当支給義務
あり あり
なし なし

※労働基準法26条

休業手当に関する『帰責事由』の解釈は次に説明します。

2 休業手当|帰責事由の解釈|基本

休業手当に関する『帰責事由』についての解釈論をまとめます。

<休業手当|帰責事由の解釈|基本>

使用者側に起因する経営上の障害を含む
民法の『危険負担』よりも広い概念である
※最高裁昭和62年7月17日;ノースウェスト航空事件

『雇用主の帰責事由なし』は,いわゆる『不可抗力』という状態です。
帰責事由あり/不可抗力,の判断は単純ではありません。
具体的な状況について,次に説明します。

3 休業手当|雇用主の帰責事由あり|具体例

休業が『雇用主の帰責事由』によると判断される具体例です。

<休業手当|雇用主の帰責事由あり|具体例>

あ 経営障害

経営障害による休業
例;不況・資金難・材料不足
※昭和23年6月11日基収1998号

い 内定者の自宅待機

新規学卒採用内定者の自宅待機
※昭和63年3月14日基発150号

う ストライキ付随休業

一部の労働者がストライキを実施した
残りの労働者を就業させることは可能であった
しかし雇用主が就業を拒否した場合
※昭和24年12月2日基収3281号

え 解雇予告期間

解雇予告なしで解雇した場合
→予告期間中の休業

お 有給休暇一斉付与付随休業

年次有給休暇の計画付与として一斉付与を実施した
→年次有給休暇の権利のない者を休業させた場合

4 休業手当|雇用主の帰責事由なし|具体例

休業が『雇用主の帰責事由』ではない具体例です。
いわゆる『不可抗力』という状態のことです。

<休業手当|雇用主の帰責事由なし|具体例>

あ 災害→不可抗力

天災地変などにより業務遂行が不可能となった場合

い 計画停電

計画停電が実施された
事業場に電力が供給されない時間帯が生じた
※平成23年3月15日基監発0315第1号

う 健康診断結果による休業

健康診断の結果,一定の疾病などが判明した
労働安全衛生法の規定により休業を実施した
※昭和23年10月23日基発1529号
※昭和63年3月14日基発150号

え 代休付与命令

代休付与命令による休業
※昭23年6月16日基収1935号

お ロックアウト

ロックアウトによる休業
適法なものに限る

か 別事業所のストライキ

A事業場で労働組合のストライキが実施された
別のB事業所の同じ組合に所属する労働者が休業した場合
※最高裁昭和62年7月17日;ノースウェスト航空事件

き ストライキ→妥結後の休業

ストライキ実施後,労使で合意が成立した
操業再開に際し,流れ作業の時間的格差が生じた場合
=一斉に就業再開ができなかった
=部署ごとに『業務再開』のタイミングをずらした
※昭和24年12月2日基収3281号

5 休業|雇用主の帰責事由あり|休業手当|労働基準法

『雇用主の帰責事由』による休業については休業手当支給が必要です(前記)。
要するに『雇用主の都合による休業』ということなので当然です。
この場合の『休業手当』の内容ついてのルールがいくつかあります。
まずは労働基準法のルールをまとめます。

<休業|雇用主の帰責事由あり|休業手当|労働基準法>

あ 休業手当|規定

『平均賃金』の60%以上の支給が必要である
※労働基準法26条

い 強行規定

これに反する合意は無効である

う 違反への罰則

違反については刑事罰の対象となる
法定刑=罰金30万円以下
※労働基準法120条1号

この中で出てくる『平均賃金』については別に説明しています。
詳しくはこちら|平均賃金|計算方法・除外される賃金

6 休業|雇用主の都合|休業手当|民法

休業手当に関する,民法のルールをまとめます。

<休業|雇用主の都合|休業手当|民法>

あ 規定|危険負担

従業員は『本来の賃金の100%の支給』を請求できる
正確には『休業手当』という名称ではない
※民法536条2項

い 任意規定

『合意』があれば『合意』が優先される
例;就業規則
※民法91条

7 休業|雇用主の都合|休業手当|まとめ

休業手当については労働基準法・民法の2つのルールがあります(前述)。
ちょっと複雑なので,この2つを含めた結論部分をまとめます。

<休業|雇用主の都合|休業手当|まとめ>

あ 就業規則あり

ア 就業規則|例 『休業手当は通常の賃金の60%とする』
ここで定める割合は60%以上であれば良い
イ 結果 就業規則の規定どおりの支給を実行する

い 就業規則なし・合意成立

雇用主と従業員で協議する
実際には従業員は協議をする『代表者』を定める
→通常の賃金の60〜100%の範囲で合意する
→このとおりの支給を実行する

う 就業規則なし・合意不成立

雇用主と従業員の合意が成立していない場合
→平均賃金同額の支給が必要となる

8 一時帰休|雇用調整助成金

休業を実施した場合に公的な資金サポートを受けられることがあります。

<一時帰休|雇用調整助成金>

あ 経済的負担

一時帰休(レイオフ)を行った場合
→業務は進まないけれど手当は払われる状態となる
=雇用主は経済的な負担が生じる

い 公的サポート

状況によって『雇用調整助成金』を受給できることがある
詳しくはこちら|雇用調整助成金;事業縮小や休業の際,事業主が受給できる

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