【公正証書遺言の作成の手続と特徴(メリット・デメリット)】
1 公正証書遺言の作成場所
2 公正証書遺言の作成方法(概要)
3 公正証書遺言の作成方法の追加(概要)
4 公正証書遺言の保管
5 公正証書遺言の作成の必要書類など
6 公正証書遺言のメリット
7 公正証書遺言のデメリット
1 公正証書遺言の作成場所
遺言の種類の1つとして公正証書遺言があります。いろいろな面で優れていて,推奨できる遺言です。
本記事では,公正証書遺言を作成する手続や特徴について説明します。まずは作成する場所についてまとめます。関係者全員が公証役場に行くのが通常です。しかし,遺言者の年齢・体調によっては移動が困難なこともよくあります。このような場合は公証人に出張してもらえば良いのです。
<公正証書遺言の作成場所>
あ 方式の規定
作成する場所について
→公正証書遺言の方式の規定に存在しない
い 一般的な作成場所
遺言者・証人が公証役場に出向く
う 公証人の出張
公証人が遺言者の居場所に出張することもできる
え 出張場所の典型例
ア 自宅イ 病院・入居中の施設
え 公証人の管轄〜合法カルテル〜
法務局と同じ管轄の範囲内に限定される
→作成場所と同一テリトリ内の公証役場を選ぶ
※公証人法17条
2 公正証書遺言の作成方法(概要)
公正証書遺言は作成のプロセスがしっかりしています。民法上『方式』として細かい規定があるのです。概要をまとめます。
<公正証書遺言の作成方法(概要)>
あ 公証人が作成する
遺言者が遺言内容を公証人に口授する
公証人が筆記する
い 証人2人の立会
証人2人が立ち会う
証人欠格・不適格に該当しない者
作成をサポートする弁護士が証人になることもある
う 参加者の署名・押印
遺言者・立会証人・公証人について
遺言内容の『読み聞かせ』により確認する
→署名・押印をする
『承認』と呼ぶ
※民法969条
詳しくはこちら|公正証書遺言の方式に関する規定と法改正による拡張
3 公正証書遺言の作成方法の追加(概要)
公正証書遺言の作成の際は,署名や口授・読み聞かせというプロセスがあります(前記)。そこで字が書けない方や口・耳が不自由な方は作成が困難でした。
この点,民法改正により,筆談や手話など,代わりの方法が作られました。そのため,手や口・耳が不自由な方でも公正証書遺言の作成をしやすくなりました。
これについては別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|公正証書遺言の方式に関する規定と法改正による拡張
4 公正証書遺言の保管
公正証書遺言は作成後の保管の点でも非常に優れています。公証役場で原本が保管されるのです。さらに,データベース化により検索が容易にできます。遺言者の死後,遺言が発見されない,という悲劇は生じないようになっているのです。
<公正証書遺言の保管とデータベース化(概要)>
あ 保管(概要)
遺言書の原本は公証役場で保管される
一般的に遺言者は謄本を取得し保管しておく
い データベース化・検索システム(概要)
公正証書遺言の存在について
→全国で一元化して情報が保管・管理されている
→遺言の存否・保管場所(公証役場)を検索できる
詳しくはこちら|公正証書遺言のデータベース化・検索システムと閲覧・謄本取得
5 公正証書遺言の作成の必要書類など
公正証書遺言を作成する場合,一定の書類と情報が必要となります。実務上では,スピーディーな作成が求められることもあります。このような周辺の準備によって『スピード』に差が出ることになります。
<公正証書遺言の作成の必要書類など>
あ 遺言者の印鑑関連
遺言者の実印・印鑑証明書
い 証人の情報
証人2名の住所・職業・氏名・生年月日(の情報・メモ)
う 財産の承継者関連
財産の承継者の戸籍謄本や住民票
え 不動産関連
ア 不動産の登記事項証明書イ 固定資産評価証明書
6 公正証書遺言のメリット
以上の説明のように,公正証書遺言の作成や保管はとてもしっかりしています。このようなことから,公正証書遺言には大きなメリットがあります。これをまとめます。
<公正証書遺言のメリット>
あ 作る手続が万全
確認プロセスが徹底されている
→『無効』になりにくい
詳しくはこちら|公正証書遺言の無効リスク極小化と無効事由(全体・主張の傾向)
い 遺言書の保管が安全
公証役場で保管される
→遺言書自体の『紛失』がない
う 『執行』段階でスムーズ
家裁の『検認』が『不要』である
→スピーディー・より確実に『執行』ができる
詳しくはこちら|遺言の検認|検認義務・手続の流れ・遺言作成時の注意
7 公正証書遺言のデメリット
公正証書遺言は大きなメリットがあります(前記)。一方,この裏返しとしてデメリットもあります。これをまとめます。
<公正証書遺言のデメリット>
あ 手間
公証人・証人が関与する
→手続が面倒である
一定の作業・時間を要する
例;作成の日程調整・公証人による内容確認
い コスト
一定の費用がかかる
う 機密性
公証人と証人には内容を秘密にできない
証人から遺言内容が漏洩するリスクがある
『遺言を作成したこと』自体を秘密にできない
財産の規模などによっては,必ずしも公正証書遺言を選ぶことが『最適解』とは限りません。具体的な事情・要望に対して最適な方法は変わってきます。遺言の種類については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|遺言の方式・種類|自筆証書・公正証書・秘密証書遺言
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