【遺言が無効と判断されると『前の遺言復活』か『法定相続』となる】

1 遺言は死後に『無効である』と主張されることが多い
2 無効な遺言が贈与として有効になる可能性(概要)
3 遺言が無効になると『その前の遺言』が復活する
4 遺言が無効となり『前の遺言』もない→法定相続となる

1 遺言は死後に『無効である』と主張されることが多い

遺言が効力を発生するのは遺言者が亡くなった時です。
法的には相続開始と言います。
とにかく,この時点では記載内容について書いた人(遺言者)に確認できないのです。
遺言については,無効となる理由がいくつかあります。
別項目;自筆証書遺言は様式に適合していないと無効となる
相続人の間で利害が対立し,その一環として遺言の無効を主張するというのは多いです。

2 無効な遺言が贈与として有効になる可能性(概要)

遺言者の死後に,遺言が無効と判断されることもあります。
この場合でも,遺言の内容が完全に無駄になったとは限りません。『贈与』として有効と認められることもあるのです。これについては別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|無効な遺言を死因贈与契約として認める・典型的種類
次に,贈与としても認められない,つまり,遺言書が完全に『なかった』扱いとなった場合についての説明を続けます。

3 遺言が無効になると『その前の遺言』が復活する

『後の遺言』により『前の遺言』を撤回することがあります。
ここで『後の遺言』が無効になった場合の効果をまとめます。
『撤回』と似ているけど違いがあるので注意が必要です。

<遺言無効×前の遺言復活>

あ 前提事情

遺言Aが作成された
遺言Bが作成された
遺言Bの内容は遺言Aと抵触していた
遺言Aは(抵触部分が)撤回されたこととなった
遺言者の死後,遺言Bが『無効』と判定された

い 基本的事項

遺言Bが無効となった
→遺言Bは最初からなかったものとなる
→遺言Aが有効な状態に戻る
=『復活』したような状態である

う 『無効』と『撤回』の違い

ア 撤回×復活制限 『撤回』の場合は原則的に『前の遺言の復活』はない
※民法1023条,1025条
詳しくはこちら|遺言の変更・撤回・書き換え|遺言の破棄・目的財産の破棄
イ 無効との違い 無効は純粋に『最初からなかったものとみなす』趣旨である
『事後的に解消=撤回』とは異なる

4 遺言が無効となり『前の遺言』もない→法定相続となる

遺言が無効で,かつ『復活』する遺言もないと,『遺言なし』の状態になります。
そこで,法定相続のルールが適用されることになります(民法900条)。

法定相続の場合,民法上,相続分割合だけしか規定されていません。
個別具体的な遺産の承継内容(誰がどの財産を承継するか)は,基本的に遺産分割協議によって定めます(民法907条)。
当然,うまく相続人間での協議が整わない場合,調停や審判によって解決するしかなくなります。
詳しくはこちら|相続手続全体の流れ|遺言の有無・内容→遺産分割の要否・分割類型・遡及効

本記事では,遺言が無効となった場合の,その後の遺産相続の進め方について説明しました。
実際には,個別的な事情によって,法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に遺言や相続に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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