【建物明渡×実力行使|損害算定・判例|動産喪失×慰謝料】

1 自力救済|損害算定|建物明渡|判例・事案
2 損害算定|動産の無断廃棄|判例
3 動産の喪失×慰謝料|理論・概要
4 損害算定|動産の喪失×慰謝料|判例

1 自力救済|損害算定|建物明渡|判例・事案

建物の明渡で実力行使をすると違法となります。
詳しくはこちら|建物明渡×実力行使|基本・違法性判断|自力救済or自救行為
自力救済は違法なので不法行為として法的責任が生じます。
本記事では賠償責任の内容について説明します。
まずは典型的な事例を紹介します。

<自力救済|損害算定|建物明渡|判例・事案>

あ 事案

競売によりAが建物を取得した
元所有者Bの動産が建物内に残置されていた
競落人Aが動産を処分した

い 裁判所の判断

不法行為による損害賠償請求が認められた
損害額・慰謝料の認定・算定に特殊性がみられた(※1)
※東京地裁平成14年4月22日

建物の明渡の実力行使としての参考になる事例です。
この判例の判断内容の説明を続けます。

2 損害算定|動産の無断廃棄|判例

損害のうち『動産の廃棄』についての賠償額算定方法をまとめます。

<損害算定|動産の無断廃棄|判例(上記※1)>

あ 物品の時価|基準

元所有者が相当以前に所持品の整理・梱包をした
長期間にわたって建物内に残置されていた
多種多様かつ多数大量の物品が存在していた
個々の物品すべての価値を評価することは困難である
→裁判所の裁量により相当な損害額を認定する

い 個別的判断

総額で100万円とする
※民事訴訟法248条
※東京地裁平成14年4月22日

3 動産の喪失×慰謝料|理論・概要

住居内の動産には『思い出の品』が含まれることが多いです。
そのため,損害額の算定が単純にはできません。
精神的な苦痛もあるので『慰謝料』という発想もあります。
この点,動産自体の価値の賠償と慰謝料の関係についての理論を紹介します。

<動産の喪失×慰謝料|理論・概要>

あ 原則

財産的損害の填補により完結する
別途慰謝料が生じるわけではない

い 例外

当該物品を喪失したことにより,被害者が特段の精神的苦痛を被った場合
→財産的損害とは別に慰謝料が生じる
※東京地裁平成14年4月22日
詳しくはこちら|財産的損害による慰謝料の発生の基本(理論と特別事情の分類)

4 損害算定|動産の喪失×慰謝料|判例

動産の喪失について,例外的に『慰謝料』が認められることもあります(前記)。
住居内の『思い出の品』についての判断をまとめます。

<損害算定|動産の喪失×慰謝料|判例(上記※1)>

あ 喪失した物品の性格

元所有者が祖父母の代から受け継いだ桐だんす2棹・茶だんすなど
仏壇・神棚など
→何物にも代え難い

い 廃棄された態様

焼却場でごみと一緒に廃棄された
→元所有者は多大の精神的苦痛を被った

う 慰謝料算定

慰謝料を認める
金額=200万円
※東京地裁平成14年4月22日

建物明渡についての自力救済・動産廃棄に関しては多くの実例があります。
事例・判例は別に説明しています。
(別記事『建物明渡|自力救済|判例|通常』;リンクは末尾に表示)

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