【プライバシー権×前科|報道|違法性阻却・判断基準】
1 プライバシー権×前科|報道・違法性阻却|全体
2 プライバシー権×前科|報道・違法性阻却|判断要素
3 プライバシー権×前科|報道|公職関係
4 プライバシー権×前科|報道|社会への影響大
5 犯罪という前提が虚偽→違法・慰謝料高額化
6 犯罪という前提が否定された→救済|概要
1 プライバシー権×前科|報道・違法性阻却|全体
前科の公表はプライバシー権侵害となることがあります。
詳しくはこちら|プライバシー権×前科|基本|忘れられる権利|報道以外
報道として前科を公表するケースでは特殊性があります。
まずは違法性の判断の基本的事項をまとめます。
<プライバシー権×前科|報道・違法性阻却|全体>
あ 利益衡量
次の2つを比較して公益性を判断する
ア 前科を公表されない法的利益(※1)イ 公表する利益=公益性(※2)
い 報道の特殊性
『報道の自由』が重視される
→『公益』の方が大きくなる傾向がある
比較する2つの利益については次に説明します。
2 プライバシー権×前科|報道・違法性阻却|判断要素
違法性判断に影響する事情を整理します。
<プライバシー権×前科|報道・違法性阻却|判断要素>
あ 公表されない法的利益(上記※1)
ア 事件後の対象者の生活状況イ 事件それ自体の歴史的・社会的な意義ウ 対象者の重要性エ 対象者の社会的活動・立場・影響力オ 対象者の受けた被害の程度
い 公益性(上記※2)
カ 公表(実名使用)の意義・必要性キ 公表の意図・目的・性格ク 取材方法(報道の場合)ケ 表現(公表)の内容・方法・体裁
3 プライバシー権×前科|報道|公職関係
対象者が『公職関係』にある方の場合の傾向をまとめます。
<プライバシー権×前科|報道|公職関係>
あ 公職関係
選挙によって選出される公職にある者orその候補者
対象者が公職にあることの適否などの判断の一資料として公表した
い 判断傾向
社会一般の正当な関心の対象となる
→前科の公表は違法性がない(受忍限度内)
※最高裁平成6年2月8日;ノンフィクション『逆転』訴訟・上告審
※東京地裁平成13年10月5日
4 プライバシー権×前科|報道|社会への影響大
社会への影響が大きい方についての傾向をまとめます。
<プライバシー権×前科|報道|社会への影響大>
あ 前提事情
次のどちらかに該当する
対象者の社会的活動の性質が公的である
対象者の社会に及ぼす影響力の程度が大きい
い 判断傾向
社会的活動に対する批判あるいは評価として公益性がある
→前科の公表は違法性がない(受忍限度内)
※最高裁平成6年2月8日;ノンフィクション『逆転』訴訟・上告審
※東京地裁平成13年10月5日
5 犯罪という前提が虚偽→違法・慰謝料高額化
以上の説明は『犯罪行為がある』ことが前提となっています。
実際の報道の現場では『誤報・ガセ』もあります。
当然ですが,この場合は原則的に違法となります。
またダメージも大きいので慰謝料が高額化する傾向があります。
『堀江貴文氏ガセ賭博記事事件』が有名です。
詳しくはこちら|撮影・誹謗中傷投稿×慰謝料相場|名誉毀損・プライバシー権侵害
6 犯罪という前提が否定された→救済|概要
報道後に『無罪判決』となるケースもあります。
典型例は『1審有罪→2審無罪』という経緯の場合です。
1審判決の内容を報道すると,事後的に『虚偽だった』と言えます。
このような場合は『記事の判断材料』も考慮されます。
しっかりした資料を元に判断した場合は救済されます。
<犯罪という前提が否定された→救済|概要>
1審の有罪判決を報道した
その後,控訴審で無罪判決が言い渡された
→『真実と信ずるについて相当の理由』がある
→公表は適法である
※最高裁平成11年10月26日
詳しくはこちら|プライバシー権×前科|基本|忘れられる権利|報道以外