【弁護士会照会の基本(公的性格・調査対象・手続の流れ)】
1 弁護士会照会の制度趣旨|公的機関との違い・公的性格
2 弁護士会照会の調査対象事項(概要)
3 弁護士会照会|手続の流れ|照会・回答ともに弁護士会を経由する
4 弁護士会照会への回答義務・回答拒否・違法な開示→法的責任
5 弁護士会×SMBCの協定|弁護士会照会への回答をルール化
6 弁護士は依頼者に回答内容をそのまま伝えることができない
1 弁護士会照会の制度趣旨|公的機関との違い・公的性格
弁護士が依頼を受けた案件では,一般的に証拠集めが重要です。
この点,警察や検察が捜査する場合とは大きな違いがあります。
弁護士が調査する方法として『弁護士会照会』という制度があります。
<弁護士会照会の制度趣旨>
あ 弁護士の調査×公的機関との違い
ア 調査のために公的な資金を使えるわけではないイ 人員を無償で使うことができないウ 第三者に『回答義務』を課せられない
い 弁護士の調査を強化=公的性格
紛争解決は社会全体として役立つ機能・使命である
弁護士による『調査』も強化する必要がある
→『弁護士会照会』の制度が作られた
う ネーミング
ア 『弁護士会照会』イ 『弁護士法23条の2に基づく照会』 弁護士法23条の2に規定されているため
本記事では『弁護士会照会』という呼称を用います。
2 弁護士会照会の調査対象事項(概要)
弁護士会照会は前述のように公的な性格があります。
あくまでもメインである案件の処理に必要な範囲で利用できるのです。
<弁護士会照会の調査対象事項(概要)>
あ 弁護士会照会|対象事項
弁護士が受任している案件の処理に必要な範囲
※弁護士法23条の2第1項
い 調査担当での受任
『調査だけ・調査単体』で受任した場合
→弁護士会照会を利用することはできない
=『違法な照会申出』となる
詳しくはこちら|弁護士会照会の対象事項(受任事件の範囲・調査目的の受任は違法)
3 弁護士会照会|手続の流れ|照会・回答ともに弁護士会を経由する
弁護士会照会の手続の流れをまとめます。
<弁護士会照会|手続の流れ>
あ 申立
弁護士が『弁護士会』に照会の申立書を提出する
い 弁護士会の審査
弁護士会が『必要性』を審査する
う 弁護士会→照会先|照会書送付
弁護士会が,各照会先機関・人物に『照会書』を送付する
え 照会先→弁護士会|回答
照会先が弁護士会に書面で回答する
お 弁護士会→弁護士|回答書交付
弁護士会が申立をした弁護士に回答内容の書面を交付する
※弁護士法23条の2
この照会を受けた会社・機関などは,一般的に回答義務があります(後述)。
このように『強い』制度です。
そこで,濫用を防ぐために,その必要性について弁護士会が判断することになっています。
審査をパスした『照会請求』は,あくまでも『弁護士会』として対象機関に送付されます。
4 弁護士会照会への回答義務・回答拒否・違法な開示→法的責任
弁護士会照会を受けた機関や者は回答義務を負います。
回答を拒否したことが不利益な扱いにつながるケースもあります。
逆に回答・開示したが違法と判断され,賠償責任が認められたケースもあります。
このように『回答・開示義務』は単純ではありません。
これについては別記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|弁護士会照会|回答義務|開示拒否の正当事由・法的責任・不利益扱い
5 弁護士会×SMBCの協定|弁護士会照会への回答をルール化
弁護士会照会に対する回答についてルール化されているものがあります。
三井住友銀行(SMBC)が弁護士会との間で結んだ協定です。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|弁護士会照会×三井住友銀行|全本支店一括調査→回答|弁護士会との協定
6 弁護士は依頼者に回答内容をそのまま伝えることができない
弁護士会照会は『公的』な性格が強いです(前述)。
機密性が高い情報を『弁護士に限定して』開示するという前提になっています。
そこで開示された情報を『弁護士から依頼者に開示する』ことには制限があります。
開示できる情報もありますが,開示できない,ということもあります。
これについて弁護士が賠償責任を負ったケースもあります。
詳しくはこちら|ご依頼者へ;弁護士→依頼者の資料開示(報告義務)
詳しくはこちら|弁護士の責任論|判例基準|知識レベル・費用・清算・守秘義務・去勢弁護士