【動物『殺処分』抑制方針|自治体の引取り制度・終生飼養義務】
1 猫×引取・殺処分|統計・平成26年度
2 動物の飼主の責任|終生飼養・繁殖抑制措置
3 地方自治体の責務|立法権限の委任
4 地方自治体・犬猫引取り義務|基本
5 地方自治体・引取り拒否事由
6 地方自治体・引取り|受入/拒否|典型例
7 民間のペット引取業者の登場×非道フロー
1 猫×引取・殺処分|統計・平成26年度
行政が動物を引き取る業務を行っています。
引き取った後,大部分が殺処分となっています。
非常に悲しい現実です。
<猫×引取・殺処分|統計・平成26年度>
あ 引取
状況 | 個体数 |
飼主から・成熟 | 8838匹 |
飼主から・幼齢 | 7704匹 |
所有者不明・成熟 | 1万9762匹 |
所有者不明・幼齢 | 6万1618匹 |
合計 | 9万7922匹 |
い 行方
行方 | 個体数 | 割合 |
返還 | 358匹 | 0.36% |
譲渡 | 1万8234匹 | 18.5% |
殺処分 | 7万9745匹 | 81.1% |
合計 | 9万8337匹 | ― |
政府としては殺処分の抑制に取り組んでいます。
そして,平成24年に動物愛護法が改正されました。
改正後の動物愛護法の殺処分抑制に関する事項を説明します。
2 動物の飼主の責任|終生飼養・繁殖抑制措置
動物愛護法には動物の飼主の責任が規定されています。
殺処分抑制に関する規定を紹介します。
<動物の飼主の責任|終生飼養・繁殖抑制措置>
あ 努力義務|基本的事項
動物の所有者は,次の努力義務がある
い 終生飼養
動物が命を終えるまで適切に飼養する
う 繁殖抑制措置
繁殖に関する適切な措置を講ずる
次のような事態を防止する
ア みだりに繁殖することを防止するイ 適正な飼養が困難となることを防止する
※動物愛護法7条4項,5項
3 地方自治体の責務|立法権限の委任
動物愛護法では一部の立法権限を自治体に委任しています。
要するに『飼主への指導』に関する事項です。
上記の『飼主の責任』がしっかり履行されることにもつながります。
<地方自治体の責務|立法権限の委任>
あ 目的
動物の健康・安全を保持する
動物が人に迷惑を及ぼすことのないようにする
い 立法権限の委任
地方自治体は,次の事項に関する条例を制定できる
ア 飼主への指導
動物の所有者・占有者に対する指導をする
内容=動物の飼養・保管について
イ 多数飼育届出制度
多数の動物の飼養・保管の届出制度を設定する
※動物愛護法9条
4 地方自治体・犬猫引取り義務|基本
地方自治体は犬・猫を引き取る義務があります。
引き取った後は大部分が殺処分となっています(前記)。
殺処分の抑制のために,ルールの変更がなされています(後述)。
その前に,まずは基本的事項をまとめます。
<地方自治体・犬猫引取り義務|基本>
あ 原則
所有者が犬・猫の引取りを求めた場合
→地方自治体は引き取る義務がある
い 例外
一定の事情がある場合
→地方自治体は引取りを拒否できる(※1)
※動物愛護法35条1項
5 地方自治体・引取り拒否事由
自治体の動物引取りが殺処分につながっています(前記)。
『引取り拒否』により殺処分が抑制されるという発想があります。
そこで政府は『引取り拒否』をしやすくしました。
それが『引取り拒否事由』の明文化です。
動物愛護法・施行規則の『引取り拒否事由』をまとめます。
<地方自治体・引取り拒否事由(上記※1)>
あ 基本的事項
次のいずれかに該当する場合
→地方自治体は動物の引取りを拒否できる
い 販売業者
犬猫等販売業者から引取りを求められた
う リピーター
引取りを繰り返し求められた
え 繁殖制限・指示違反
飼主が繁殖制限措置に関する自治体の指示に従っていない
お 中途放棄|老齢・疾病
犬・猫の老齢or疾病を理由として引取りを求められた
か 中途放棄|飼養可能状態
飼養が困難である事情がない
き 里親探し努力不足
事前に犬・猫の譲渡先を見つけるための取組を行っていない
※動物愛護法35条1項
※動物愛護法施行規則21条の2
6 地方自治体・引取り|受入/拒否|典型例
自治体が引取る,または拒否する具体例を紹介します。
<地方自治体・引取り|受入/拒否|典型例>
あ 多数出産→引取りOK
個人でペットとして猫を飼育していた
猫が多数の子を出産してしまった
多くの猫を飼うことができない
い 中途放棄→引取りNG
長期間猫を飼育していた
猫が病気罹患or老齢で衰弱した
飼うのがイヤになった
う リピーター→引取りNG
猫に避妊手術をしていなかった
猫が何度も出産を繰り返している
飼主は毎回,自治体に引取を要請している
7 民間のペット引取業者の登場×非道フロー
以上の規定により『自治体の引取り』が減りました。
そして『殺処分の数』も減りました。
行政としては自画自賛です。
ところが社会・人の行動はそう簡単ではありません。
民間のペット引取業者が登場するようになったのです。
しかも非道・極悪な行為が目立つようになってきました。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|ペット引取業者|法規制なし・非道行為×法的責任