【処分性|名宛人なしの行為|法的根拠のない行為|通達・告示・条例制定】
1 処分性|名宛人なしのルール設定・措置|基本
2 処分性|例外|条例制定
3 処分性|例外|告示
4 処分性|例外|通達
5 処分性|法的根拠のない制度による行為|基本
6 処分性|通達・要綱に基づく決定
1 処分性|名宛人なしのルール設定・措置|基本
行政処分取消訴訟では『処分性』が問題となりやすいです。
詳しくはこちら|行政訴訟・取消訴訟|処分性|基本|処分の定義・給付請求との並立
本記事では『名宛人なしのルール設定・措置』について説明します。
典型例は『通達』です。
まずは通達を前提にして,基本的事項を整理します。
<処分性|名宛人なしのルール設定・措置|基本>
あ 通達の処分性|基本(※1)
『通達』そのものは特定の人・法人を対象としていない
→処分性はない
※行政訴訟手続法8条1項
※最高裁昭和43年12月24日
い 通達による処分
通達に基づく個別的な『行政処分』がなされた場合
→『処分』について取消訴訟提起という方法もある(※3)
2 処分性|例外|条例制定
名宛人のないルール・措置は原則的に処分性が認められません(前記)。
しかし,解釈上,例外もあります。
まずは『条例制定』についての例外となる判例を紹介します。
<処分性|例外|条例制定>
あ 条例制定
市立保育所廃止条例の制定
い 裁判所の判断|原則論
条例の制定は地方自治体が行う立法作用である
→一般的には,処分性が認められない
う 裁判所の判断|実質面
改正は,特定の保育所の廃止のみを内容としている
施行により各保育所廃止の効果が発生する
他の行政庁の処分は予定されていない
→特定の者の法的地位を奪う結果が直接的に生じる
例;保育所に現に入所中の児童・その保護者
え 裁判所の判断|結論
条例改正は,行政庁の処分と実質的に同視し得る
→処分性を認めた
※最高裁平成21年11月26日
3 処分性|例外|告示
『告示』について例外的に処分性を認めた判例を紹介します。
<処分性|例外|告示>
あ 告示
建築基準法の2項道路指定の告示
い 裁判所の判断|告示の性質
告示によって2項道路の指定の効果が生じる
対象者は特定されていない
=『一括指定』である
う 裁判所の判断|効果・実質面
該当する道路は2項道路になる
敷地所有者は具体的な私権の制限を受ける
例;道路内の建築制限・私道の変更・廃止制限
※建築基準法44条,45条
え 裁判所の判断
個人の権利義務に対して直接影響を与える
→処分性を認めた
※最高裁平成14年1月17日
4 処分性|例外|通達
『通達』については下級審の裁判例で判断したものがあります。
<処分性|例外|通達>
あ 基本
通達は名宛人がない
→処分性が認められない
い 例外|特殊事情
通達自体を無効にしないと権利救済をまっとうできない場合
→『通達』の取消請求訴訟を提起できる
※東京地裁昭和46年11月8日
以上のいずれもポイントは『具体的な権利への直接的影響』です。
『処分』の定義をベースに判断したものと言えます。
詳しくはこちら|行政訴訟・取消訴訟|処分性|基本|処分の定義・給付請求との並立
5 処分性|法的根拠のない制度による行為|基本
以上は『制度・ルール自体』についての取消訴訟がテーマでした。
ところで『制度・ルール』により,行政はいろいろな行為を実施します。
このような個別的な行政の行為についての取消を請求する方法もあります(上記※3)。
『法的根拠のない制度による行政の行為』の処分性が問題となります。
まずは基本的事項をまとめます。
<処分性|法的根拠のない制度による行為|基本>
あ 原則論
法的根拠のない制度に基づく行政の行為
→理論的に法的効力はない
→処分性はない
い 現実論
現実に行政によって制度が運用されている
→『効力がないから無視する』わけにはいかない
→一定の範囲で処分性が認められる(※2)
6 処分性|通達・要綱に基づく決定
法的根拠はない決定でも『処分性』が認められることもあります。
<処分性|通達・要綱に基づく決定(上記※2)>
あ 行政による不当行為
通達・要綱に基づく労災就学援護費の支給決定
い 裁判所の判断|評価
法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使である
※労働者災害補償保険法(改正前)
う 裁判所の判断|結論
処分性を認めた
※最高裁平成15年9月4日