【借地権譲渡許可の形式的要件・実質的要件(判断基準)の基本】
1 借地権譲渡許可の形式的要件(基本)
2 借地権譲渡許可の申立人・申立時期(概要)
3 借地権譲渡許可の実質的要件(基本)
4 実質的要件の内容(概要)
5 借地人の増加と不許可の傾向(概要)
1 借地権譲渡許可の形式的要件(基本)
借地権の譲渡許可申立の要件が法律上定められています。
本記事では許可の要件の基本的事項を説明します。
まず形式的要件,つまり,申立ができるための条件をまとめます。
<借地権譲渡許可の形式的要件(基本)>
あ 条文規定
『建物』を第三者に譲渡しようとする
※借地借家法19条1項
い 建物の存在
申立の時点で建物が存在している必要がある
申立の前や後に建物が滅失した場合
→却下となる
※稲本洋之助ほか『コンメンタール借地借家法 第3版』日本評論社2010年p138,139
う 地主の承諾の不存在
ア 前提となる解釈
地主の承諾の不存在が前提(要件)である
イ 緩い解釈
承諾の存在に争いがある・不明である場合
→申立は可能である
※東京高裁昭和53年9月5日
文字どおり『形式的』な要件です。
2 借地権譲渡許可の申立人・申立時期(概要)
借地権譲渡の形式的要件としては,申立人(申立権者)や申立時期もあります。
<借地権譲渡許可の申立人・申立時期(概要)>
あ 申立人
借地権の譲渡人だけが申し立てることができる
い 申立時期
借地権の譲渡の前の段階だけ申し立てることができる
詳しくはこちら|借地権譲渡許可の裁判の申立人と申立時期
3 借地権譲渡許可の実質的要件(基本)
借地権の譲渡を裁判所が許可するかどうかの基準(実質的要件)は条文に規定されています。
規定としては地主に不利にならないという簡単なものです。
<借地権譲渡許可の実質的要件(基本)>
あ 実質的要件|条文・規定
第三者が借地権を取得しても
→地主に不利になるおそれがない
※借地借家法19条1項
い 大原則
借地権譲渡は通常,地主の不利につながらない
※澤野順彦『実務解説借地借家法』青林書院p251
う 判断要素
ア 残存期間イ 借地に関する従前の経緯ウ 借地権の譲渡を必要とする事情エ その他一切の事情 ※借地借家法19条2項
4 実質的要件の内容(概要)
借地権譲渡の許可の実質的要件の判断は,いろいろな事情が対象となります。
主に,借地権を取得する予定の者や,これまでと現在の借地の状況に関するものがあります。
<実質的要件の内容(概要)>
あ 譲受人の特殊な事情
譲受人予定者に関する特殊な事情
例;反社会性・使用方法・資力など
→許可しない判断につながることがある
詳しくはこちら|借地権譲渡許可申立・非訟事件|一般的事情|反社会性・使用方法・資力
い 借地の状況(残存期間・従前の経緯)
借地の残存期間や従前の経緯
→許可しない判断につながることがある
詳しくはこちら|借地非訟一般/借地権譲渡許可|残存期間・従前の経緯
5 借地人の増加と不許可の傾向(概要)
借地権譲渡許可の実質的要件の判断材料は,非常に広い事情が含まれます。
判断に影響を与える特殊な事情として借地人が増加するというものがあります。
つまり,借地権の譲受人予定者が複数人であるというケースです。
このような場合は原則的に『地主に不利』となります。
譲渡は通常,許可されません。
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|借地権の分割譲渡・一部譲渡を裁判所が許可しない傾向とその例外