【宅建業法『業』解釈論|基本|業として/業を営む|判例】

1 宅建業法『業として』解釈論|判例
2 宅建業法『業を営む』解釈論|判例
3 『業として』/『業を営む』解釈論|まとめ
4 反復継続意思|判断要素
5 行政判断『解釈・運用の考え方』|概要
6 一般的『業』解釈論|概要

1 宅建業法『業として』解釈論|判例

『宅地建物取引業』の要件の1つは『業として』行うことです。
詳しくはこちら|宅建業法|基本・『宅地建物取引業』定義
この解釈はちょっと複雑です。
まず,判例の解釈をまとめます

<宅建業法『業として』解釈論|判例>

あ 解釈対象文言

『業として行う』
→無免許営業の定義の一部分となっている
※宅建業法2条2号,2条3号

い 解釈内容|裁判例

反復して行う意思のもとに不特定若しくは多数人に対し対象行為を行うこと
※東京高裁昭和29年11月29日
※仙台高裁昭和46年6月3日

う 解釈内容|行政・文献

社会通念上事業の遂行と言える程度に行うこと
※宅地建物取引業法令研究会『宅地建物取引業法の解説』住宅新報社p34
※『解釈・運用の考え方』(後記※1

2 宅建業法『業を営む』解釈論|判例

宅地建物取引業の無免許営業は違法とされています。
無免許営業は『業を営む』ことが対象となっています。
『業を営む』の解釈についても判例があります。

<宅建業法『業を営む』解釈論|判例>

あ 解釈対象文言

『宅地建物取引業を営む』
→無免許営業の対象とされている
※宅建業法2条3号,3条1項,12条1項,79条2号

い 解釈内容

『営利の目的』で『反復継続して行う意思』のもとに対象行為をなすこと
※最高裁昭和49年12月16日
※東京高裁昭和50年7月24日

う 分析

『不特定多数』が入っていない
『多数の者を相手にする』ことは含まれる

3 『業として』/『業を営む』解釈論|まとめ

以上のように『業として』『業を営む』の2つの解釈論があります。
何が違うのか,気になるところです。
これについて整理します。

<『業として』/『業を営む』解釈論|まとめ>

あ 『業として』

営業の目的は必要ない
※宅建業法2条2号
※昭和27年5月21日参議院建設委員会会議録40号

い 『業を営む』

営利の目的が存在していることが必要である
※宅建業法2条3号

う まとめ

裁判例では厳格に区別していない
※岡本正治ほか『改訂版逐条解説宅地建物取引業法』大成出版社p74

解釈論だけを突き詰めると曖昧なところに至ります。
しかし現実的には,違いが具体化することは通常ありません。

4 反復継続意思|判断要素

『業として・業を営む』の解釈では『反復継続の意思』が重要です。
判断基準・要素についてまとめます。

<反復継続意思|判断要素>

あ 基本

次のような事情を総合して考慮・判断する

い 判断要素

ア 取引回数イ 取引の当事者 不特定・多数など
ウ 取引の目的エ 取引形態オ 取引の端緒 例;広告など
カ 施設・設備 例;事務所設置の有無など
※広島高裁岡山支部昭和39年10月8日
※大阪高裁昭和44年12月16日
※名古屋高裁昭和45年8月27日
※最高裁昭和49年12月16日
※東京高裁昭和50年7月24日

5 行政判断『解釈・運用の考え方』|概要

宅建業法の『業』の解釈は以上のようにちょっと複雑です。
この解釈について,国土交通省も見解を整理しています(※1)
これについては別に説明しています。
詳しくはこちら|『宅地建物取引業』判断|国土交通省|解釈・運用の考え方

6 一般的『業』解釈論|概要

『業』の解釈が問題になるのは宅建業法だけでありません。
多くの事業に関する法規制で同じ解釈論が登場します。
一般的な『業』『営業』の解釈については別に説明しています。
詳しくはこちら|業法一般|『業』解釈論|基本|反復継続意思・事業規模・不特定多数

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【旅館業の定義|『営業』解釈論】
【『宅地建物取引業』判断|国土交通省|解釈・運用の考え方】

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