【仲介契約の基本(元付/客付・準委任の扱い・誠実義務・善管注意義務)】
1 不動産売買・仲介|当事者=元付/客付
2 委託者の立場・信頼|一般論
3 仲介業者の一般的な誠実義務
4 媒介契約の民事的な法的性質
5 仲介業者の一般的な善管注意義務
6 双方受託・両手仲介と誠実義務の矛盾(概要)
1 不動産売買・仲介|当事者=元付/客付
本記事では,不動産仲介の当事者や本質的な委託の内容を説明します。
まず,不動産売買の仲介では2つの立場=当事者が登場します。
ネーミングを整理します。
<不動産売買・仲介|当事者=元付/客付>
呼称 | 意味 |
元付仲介 | 売主から依頼を受けた仲介業者 |
客付仲介 | 買主から依頼を受けた仲介業者 |
2 委託者の立場・信頼|一般論
依頼した者=委託者は,次のような信頼があります。
これが仲介の委託の本質的な基礎と言えます。
<委託者の立場・信頼|一般論>
あ 基本
委託者は次の『い・う』のように信頼している
い 信頼|仲介業者の行動
仲介業者は次のように行動する
ア 委託者の正当な利益を図るために仲介業務を遂行するイ 委託者の側に立って相手方と取引交渉してくれる
う 信頼|契約内容
自己に有利な取引条件で契約が成立する
※岡本正治ほか『全訂版詳解不動産仲介契約』大成出版社p76
3 仲介業者の一般的な誠実義務
前記の信頼に対応して,法律上信義・誠実義務が規定されています。
<仲介業者の一般的な誠実義務>
あ 基本
仲介業者は,委託者に対して信義・誠実義務を負う
い 委託者に対する誠実義務の内容
ア 取引物件に関する取引相場の価格を調査するイ 委託者の利益となる売買条件策定に向けて努力する
※宅建業法31条1項
※東京地裁平成元年3月29日
※岡本正治ほか『全訂版詳解不動産仲介契約』大成出版社p77
4 媒介契約の民事的な法的性質
媒介契約は,民事的には準委任契約です。依頼者と受託をした仲介業者は委任と同様の関係となります。
<媒介契約の民事的な法的性質>
媒介契約の法的性質
→民法上の準委任である
※民法656条
※最高裁昭和44年6月26日ほか
※東京高裁昭和32年7月3日
※東京地裁昭和34年12月16日
※東京地裁昭和52年12月7日
※牧山市治『最判解説昭和50年度』p664
※明石三郎『不動産仲介契約の研究 再増補版』一粒社p2
※西原寛一『商行為法』有斐閣p281
※我妻榮『債権各論中巻(2)』岩波書店p663
※中川高男/『注釈民法(16)』有斐閣p175
※中川高男/幾代通ほか『新版注釈民法(16)』有斐閣1989年p231
5 仲介業者の一般的な善管注意義務
仲介業者と依頼者の関係は準委任です(前記)。
そこで,仲介業者は依頼者に対して善管注意義務を負います。
<仲介業者の一般的な善管注意義務>
あ 善管注意義務
委託の趣旨に則り善良な管理者の注意をもって
売主買主双方の間をあっせん仲介する
※民法644条
い 具体的な配慮義務
『ア・イ』の配慮をする義務がある
ア 売買契約が支障なく履行されるイ 当事者双方がその契約の目的を達する
※東京高裁昭和28年1月30日
この善管注意義務は,実際には『調査・説明義務違反』として具体化することが多いです。
つまり,実際に売買に関する問題が生じた時に,仲介業者が責任を負う根拠となるのです。
詳しくはこちら|不動産売買における調査・説明義務の基本(一般的基準)
6 双方受託・両手仲介と誠実義務の矛盾(概要)
以上のような『信頼』『誠実義務』は当然のことです。
しかし,これが損なわれる状況がよく生じます。
当事者の両方から仲介の依頼を受けるというものです。
このような双方からの受託を『両手仲介』と呼ぶこともあります。
この問題については別に説明しています。
詳しくはこちら|両手仲介・双方受託|メカニズム|矛盾発生・利益相反→裏切り