【使用方法の意思決定プロセス|具体例|通知書サンプル・トラブル予防】
1 使用方法の決定|典型的事例|賃貸借
共有物の使用方法の決定プロセスの基本的事項は別に説明しています。
詳しくはこちら|共有物の使用方法の意思決定の方法(当事者・協議の要否)
本記事では具体例を使って決定プロセスを説明します。
典型的事例として『賃貸借をすることを決定する』ことがあります。
この前提部分を整理します。
使用方法の決定|典型的事例|賃貸借
あ 事例
土地を兄弟A・B・Cで共有している
各人の持分はそれぞれ3分の1である
第三者Dがこの土地を資材置き場として借りることを希望している
A・BはDに賃貸して賃料を得ることを希望している
Cは感情的対立から強く反対している
い 決定に必要な持分
一般的な賃貸借契約締結の意思決定について
→共有物の『管理』行為に該当する
→過半数の持分の共有者の賛成で決定できる
※民法252条
う 結論
A・Bだけで『賃貸借契約締結』を決定できる
Cが反対していても決定できる
法律上、一部の共有者の反対があっても問題ないのです。
しかし、紛争の種を極力排除する工夫が好ましいです。
工夫の1つとして、一定の通知を送付する方法があります。
2 使用方法の決定に関する通知書のサンプル
使用方法の決定に際して使う通知書の文面のサンプルを紹介します。
書面で意見聴取をする、という方式を取った場合のものです。
<使用方法の決定に関する通知書のサンプル>
あ 意見を質問する書面の例
共有土地について、Dとの間で、駐車場としての使用を目的とする5年間の賃貸借契約を締結しようと考えています。
共有者全員から意見をうかがい、過半数で決定することにします。
Cの意見を◯月◯日までに書面でAまでお送り下さい。
い 決定結果の通知内容の例
A・Bの同意によって、賃貸借契約を締結することを決定しました。
契約手続は、Aが代表して行います。
Aが『A・B・C』の連名でDと契約書の調印などを行うことにしました。
Cは反対の意見を書面で送ってくるかもしれません。
その場合でも、賃貸借ができなくなるわけではありません。
A・Bが賛成である以上『過半数』の賛成は達成されています。
合法的に賃貸借契約締結が可能となります。
3 使用方法の決定|トラブル予防=証拠化
使用方法の決定の段階で『対立』状態となっていることもあります(上記)。
当然、後から『決定』が無効であると主張されるリスクもあります。
そこで、記録・証拠をしっかり残しておくと良いでしょう。
これにより、トラブル発生を抑制できるのです。
使用方法の決定|トラブル予防=証拠化
あ 合意→トラブル発生リスク
共有者間の合意の効果は長期間継続する
→当事者の記憶が曖昧になりがちである
特に『相続=世代交代』が生じた場合
→ますます合意内容の再現が難しくなる
い トラブル予防|合意書
トラブル発生の予防策として
共有者間の合意内容を記録にしておくと良い
→『合意書』として共有者全員で署名・押印しておく
公正証書として作成すると証拠としてより優れたものとなる
う トラブル予防|通知書
『通知』だけで『意思決定』をした場合
→合意書は通常作成しない
→特に『見解の違い』が生じやすい
→通知を内容証明郵便で送付すると良い
→通知書の内容が記録化される
実務的には内容証明郵便を用いることは必須と言える