【修繕分担表のサンプル=国土交通省のガイドラインの内容】
1 国土交通省の修繕分担表|概要
2 修繕分担表|床
3 修繕分担表|壁・天井
4 修繕分担表|建具等・襖・柱等
5 修繕分担表|設備・その他
6 賃借人の負担単位|床
7 賃借人の負担単位|壁・天井
8 賃借人の負担単位|建具・柱
9 賃借人の負担単位|設備・その他
10 原状回復工事施工目安単価
11 国土交通省のガイドライン・ソース
1 国土交通省の修繕分担表|概要
国土交通省が『修繕分担表』を公表しています。
これに『負担単位』『施工単価』もあります。
これらの活用場面や法律的な位置付けは別に説明しています。
詳しくはこちら|修繕分担表の意義・活用の方法・法的位置付け
本記事では,国交省のガイドラインの内容を紹介します。
要するに修繕分担表のサンプルと言えます。
なお,個別的事情によっては無効となることもあります。
例えば入居者=賃借人への説明が不十分だと無効になりやすいです。
あくまでも参考・目安としてのサンプルとして考えてください。
これさえ使えば問題ない,と頼りきってしまうことは非常にリスキーです。
以下,国交省ガイドラインの内容をまとめます。
2 修繕分担表|床
<修繕分担表|床>
あ 賃貸人の負担
1.畳の裏返し、表替え
(特に破損していないが、次の入居者確保のために行うもの)
2.フローリングのワックスがけ
3.家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
4.畳の変色、フローリングの色落ち
(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)
い 賃借人の負担
1.カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ
(こぼした後の手入れ不足等の場合)
2.冷蔵庫下のサビ跡
(サビを放置し、床に汚損等の損害を与えた場合)
3.引越作業等で生じた引っかきキズ
4.フローリングの色落ち
(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)
3 修繕分担表|壁・天井
<修繕分担表|壁・天井>
あ 賃貸人の負担
1.テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ
(いわゆる電気 ヤケ)
2.壁に貼ったポスターや絵画の跡
3.壁等の画鋲、ピン等の穴
(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)
4.エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡
5.クロスの変色
(日照などの自然現象によるもの)
い 賃借人の負担
1.賃借人が日常の清掃を怠ったための台所の油汚れ
(使用後の手入れが悪く、ススや油が付着している場合)
2.賃借人が結露を放置したことで拡大したカビ、シミ
(賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合)
3.クーラーから水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食
4.タバコ等のヤニ・臭い
(喫煙等によりクロス等が変色したり、臭いが付着している場合)
5.壁等のくぎ穴、ネジ穴
(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの)
6.賃借人が天井に直接つけた照明器具の跡
7.落書き等の故意による毀損
4 修繕分担表|建具等・襖・柱等
<修繕分担表|建具等・襖・柱等>
あ 賃貸人の負担
1.網戸の張替え
(破損はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)
2.地震で破損したガラス 3.網入りガラスの亀裂
(構造により自然に発生したもの)
い 賃借人の負担
1.飼育ペットによる柱等のキズ・臭い
(ペットによる柱、クロス等にキズが付いたり、臭いが付着している場合)
2. 落書き等の故意による毀損
5 修繕分担表|設備・その他
<修繕分担表|設備・その他>
あ 賃貸人の負担
1.専門業者による全体のハウスクリーニング
(賃借人が 通常の清掃を実施している場合)
2.エアコンの内部洗浄
(喫煙等の臭いなどが付着していない場合)
3.消毒
(台所・トイレ)
4.浴槽、風呂釜等の取替え
(破損等はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)
5.鍵の取替え
(破損、鍵紛失のない場合)
6.設備機器の故障、使用不能
(機器の寿命によるもの)
い 賃借人の負担
1.ガスコンロ置き場、換気扇等の油汚れ、すす
(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合)
2.風呂、トイレ、洗面台の水垢、カビ等
(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合)
3.日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
4.鍵の紛失または破損による取替え
5.戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草
6 賃借人の負担単位|床
以上の『修繕分担表』に『負担単位』が付随します。
国交省ガイドラインによる負担単位の内容を以下まとめます。
<賃借人の負担単位|床>
あ 負担内容
毀損部分の補修
い 賃借人の負担単位
ア 畳
原則一枚単位
毀損部分が複数枚の場合はその枚数分
(裏返しか表替えかは、毀損の程度による)
イ カーペット・クッションフロア
毀損等が複数箇所の場合は、居室全体
ウ フローリング
原則m²単位
毀損等が複数箇所の場合は、居室全体
7 賃借人の負担単位|壁・天井
<賃借人の負担単位|壁・天井>
あ 負担内容
毀損部分の補修
い 賃借人の負担単位
ア 壁(クロス)
m²単位が望ましいが、賃借人が毀損した箇所を含む一面分までは張替え費用を賃借人負担としてもやむをえないとする。
イ タバコ等の ヤニ、臭い
喫煙等により当該居室全体においてクロス等がヤニで変色したり臭いが付着した場合のみ、居室全体のクリーニングまたは張替費用を賃借人負担とすることが妥当と考えられる。
8 賃借人の負担単位|建具・柱
<賃借人の負担単位|建具・柱>
あ 負担内容
毀損部分の補修
い 賃借人の負担単位
ア 襖
1枚単位
イ 柱
1本単位
9 賃借人の負担単位|設備・その他
<賃借人の負担単位|設備・その他>
負担内容 | 賃借人の負担単位 |
設備機器の補修 | 補修部分・交換相当費用 |
鍵の返却 | 補修部分,紛失の場合はシリンダーの交換も含む |
通常の清掃・クリーニング(※1) | 部位ごと,または住戸全体 |
※1 通常の清掃や退去時の清掃を怠った場合のみ
10 原状回復工事施工目安単価
国交省ガイドラインでは,原状回復工事の施工単価も記載されています。
<原状回復工事施工目安単価>
国交省ガイドラインは項目のみを示している
内容(金額)の記載はない
これについては,具体的な工事費用は示されていません。
実際に賃貸借契約書を作成する者が金額を入れて使うものです。
オーナーや管理会社,仲介業者が相場を調べて金額を設定しています。
11 国土交通省のガイドライン・ソース
以上の国交省ガイドラインのソースを示しておきます。
<国土交通省のガイドライン・ソース>
あ タイトル・日付
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)
→本サイトでは『国交省ガイドライン』と呼ぶ
国土交通省住宅局
平成23年8月
い 対象項目
p25〜
『別表3 契約書に添付する原状回復の条件に関する様式』
う リンク
本記事では,建物の賃貸借における修繕分担(表)の内容について説明しした。
実際には,修繕義務の有無や範囲は個別的な事情や主張・立証のやり方次第で違ってきます。
実際に建物賃貸借の修繕に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。