【買戻特約付売買と『預り金』判断に関する裁判例】
1 買戻特約付売買と『預り金』(事案)
2 買戻特約付売買と『預り金』(評価)
3 買戻特約付売買と『預り金』(結論)
1 買戻特約付売買と『預り金』(事案)
資金提供の方式によっては『預り金』該当性の判断が分かれる状況もあります。
買戻特約付売買という方式の資金の流れが『預り金』として認められた裁判例があります。
本記事では,このケースについて説明します。
なお,もともと,買戻特約付売買自体が融資という性格を持っています。
詳しくはこちら|買戻特約は非典型担保として使われる|設定・登記・実行・代位行使の方法
まずは事案をまとめます。
<買戻特約付売買と『預り金』(事案)>
あ 買戻特約付売買
Aは分譲マンションを複数所有していた
分譲マンションの1戸について
顧客Bが買戻特約付売買で購入する
Bへの所有権移転請求権仮登記を行う
Aは『代金』として金銭を受け入れる
い 賃貸借契約
AがBから3年間賃借する
賃料は代金額に対し月1.2〜1.4%の割合である
終了時or中途で顧客は買戻請求ができる
う 資金受入の規模
受け入れた期間=約2年6か月
受け入れた回数=累計約1600回
受入金額=合計約11億円
※東京高裁昭和58年4月28日
2 買戻特約付売買と『預り金』(評価)
『預り金』の該当性判断の前提となるポイント,つまり事案の評価部分をまとめます。
<買戻特約付売買と『預り金』(評価)>
あ 売買とは整合しない金額設定
応募客が提供する金銭を無制約に受け入れていた
平均的に,物件価格の数倍もの金銭を受領していた
不動産の価格を考慮することはなかった
い 『移転』登記なし
契約書には所有権移転を留保する条項はない
実際には『所有権移転』登記はされていない
所有権移転『請求権仮登記』が行われていた
う 賃貸借と整合しない条件
修繕義務・公租公課は借主Aが負担していた
賃料は賃料相場とは関係なく,代金額の一定割合とされていた
え 利殖の趣旨
Aが発行するパンフレットにおいて
→『元本保証』という記載があった
※東京高裁昭和58年4月28日
3 買戻特約付売買と『預り金』(結論)
『預り金』判断の結論部分をまとめます。
<買戻特約付売買と『預り金』(結論)>
あ 実質的内容
契約の実質は次のものである
ア 元本返還+一定割合の金銭給付
合意内容は次のものである
・金銭を一定期間後に返還する
・受領金銭に対する一定割合の金銭を支払う
イ 金銭の受入
『ア』を前提として金銭を受け入れる
い 『預り金』該当性の判断
預り金に該当する
※東京高裁昭和58年4月28日