【岡山セクハラ事件(交際要求・悪評拡散による被害)】
1 事案と責任の主要項目
2 責任(賠償額)の補足事項
3 事案の概要
4 責任判断の要点
1 事案と責任の主要項目
職場のセクハラ事例の1つとして岡山セクハラ事件を紹介します。交際・肉体関係の要求があり,これを拒絶したという事案です。その後の職場での嫌がらせについて違法性が認められています。直接的な性的侵害だけではないというところが事案の特徴です。
まずは,事案と責任の主要事項を整理します。
<事案と責任の主要項目>
性的会話 | あり(交際を求める) |
身体を触れる | なし |
性行為 | なし |
期間 | ― |
慰謝料 | 合計250万円(※1) |
弁護士費用 | (※2) |
※岡山地裁平成14年5月15日;岡山セクハラ事件
2 責任(賠償額)の補足事項
上記の表のうち責任の判断に関する補足事項をまとめます。
<責任(賠償額)の補足事項>
あ 慰謝料の内容(※1)
ア 個人・会社の連帯責任 200万円イ 会社のみ 50万円
い 慰謝料以外の損害
ア 不当な給与の減額の相当額
会社のみ 339万円
イ 逸失利益
会社のみ 約800万円
1年間の勤続を想定した
月額給与=70万円を元にした
中間利息控除を行った
ウ 弁護士費用(※2)
・会社
損害合計約1390万円→弁護士費用140万円
・個人
損害合計200万円→弁護士費用20万円
※岡山地裁平成14年5月15日;岡山セクハラ事件
3 事案の概要
事案全体の概要をまとめます。
<事案の概要>
あ 当事者
加害者A=男性・上司
被害者B=女性
い 事案の概要
AがBに執拗に性交渉を求めた
Bは性交渉を拒否した
Bは会社の関係者に事情を明かした
Aが職場などでBのことを『淫乱だ』と繰り返し述べた
Bと他の従業員との関係が悪くなった
Bは退職せざるを得なくなった
※岡山地裁平成14年5月15日;岡山セクハラ事件
4 責任判断の要点
責任について特徴的な判断がなされました。直接的な性的侵害以外の,悪評を拡散した行為について違法性が認められたのです。
<責任判断の要点>
あ 2次的被害
性的な接触以外の加害者の行為により大きな損害が生じた
=保身のために被害者の悪評を流す行為
→この行為の責任が大きいと判断された
い 勤務継続を想定した逸失利益
逸失利益についての賠償責任が認められた
内容=1年間の勤務継続を前提とした給与収入
※岡山地裁平成14年5月15日;岡山セクハラ事件
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