【遺言の自筆性(自書性・作成者・偽造・変造の判断)(全体)】
1 自筆性・自書性の意味とネーミング
2 ネーミングの統一(自筆性・自書性・作成者)
3 自筆性に関する主張と審理の特徴
4 自筆性の認定と2段の推定
5 自筆性の認定の間接事実・補助事実(概要)
1 自筆性・自書性の意味とネーミング
遺言が無効となる事情はいろいろなものがあります。その1つとして自筆性・作成者という事項があります。
詳しくはこちら|遺言の無効事由の種類(全体・無効主張の特徴・傾向)
本記事では遺言の自筆性・作成者の認定についての全体的な事項を説明します。最初に,自筆性の意味やネーミングについてまとめます。
<自筆性・自書性の意味とネーミング>
あ 意味
『自筆性』『自書性』について
=遺言者が自筆で書いたこと
=『遺言者が作成したこと』の意味である
『(遺言の)作成者の認定』と言うこともある
い 偽造・変造との関係
次の『ア・イ』は同じ内容(意味)である
ア 自筆性があるイ 偽造・変造ではない
2 ネーミングの統一(自筆性・自書性・作成者)
自書性とか自筆性という用語は同様のものがいくつかあります。本サイトでは原則的に『自筆性』という表記に統一します。
<ネーミングの統一(自筆性・自書性・作成者)>
あ 『自書性』の用語が一般的
一般的には『自書性』と呼ぶことが多い
これとは別に『自書』という形式的要件(方式)がある
詳しくはこちら|自筆証書遺言の『自書』の解釈と判断基準や具体例
混同が生じ,分かりにくくなるリスクがある
い 『自筆性』に統一
『あ』の誤解を回避するため
→本サイトでは『自筆性』と呼ぶ
3 自筆性に関する主張と審理の特徴
自筆性に関する実務での主張と審理には特徴があります。
<自筆性に関する主張と審理の特徴>
あ 実務における典型的な主張の分類
実務における自筆性に関する主張について
→『い』のような2とおりに分けられる
い 2とおりの主張のタイプ
ア 遺言者ではないというだけの主張イ 特定の者が偽造したという主張
この者の筆跡を対照筆跡として筆跡鑑定を行うことが多い
<→★筆跡鑑定
4 自筆性の認定と2段の推定
一般的に私文書の作成者の認定においては2段の推定が使われます。自筆証書遺言も押印があるはずですから,2段の推定が適用されます。しかしあくまでも『推定』です。実質的な審理の結果,覆ることもあります。これについて整理します。
<自筆性の認定と2段の推定>
あ 推定
自筆証書遺言には『押印』がある
※民法968条1項
→2段の推定が適用される
→文書の真正な作成が推定される
→原則的に『自筆性』が認められる
詳しくはこちら|2段の推定|押印・サイン・コピー・FAXの証拠力
い 実務における判断・認定
実務(訴訟)では,多くの事情を元に判断する
推定が覆る(自筆性が否定される)こともよくある
実質的に『2段の推定が決め手となる』ことは少ない
5 自筆性の認定の間接事実・補助事実(概要)
訴訟では,自筆性について,多くの事情を元にして認定・判断します。つまり,自筆性の間接事実・補助事実はとても広い範囲にわたるということです。
自筆性についての間接事実・補助事実は,別の記事で詳しく説明しています。
詳しくはこちら|自筆性判断のプロセスと内容(間接事実・補助事実)(全体)
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
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