【通称への名の変更許可申立の裁判例(許可しなかった)】
1 通称使用30年・難読→変更不許可
2 通称使用30年・難読→変更不許可
3 通称使用25年・干支から『トラ』→変更不許可
4 通称使用20数年→変更不許可
1 通称使用30年・難読→変更不許可
長期間使用された通称名への変更は原則的に許可されます。
詳しくはこちら|通称への名の変更の許可基準
本記事では,名の変更が許可されなかったという例外的な事例を紹介します。
変更が不許可となる典型的事情として『変更後の名が難読』というものがあります。
詳しくはこちら|変更後の名の常用平易性と変更の許可基準
まずは,通称名の漢字が人名用漢字ではなく,難読であったケースを紹介します。
<通称使用30年・難読→変更不許可>
あ 変更希望の名
戸籍名『修二』→通称名『脩二』
い 通称使用の経緯
Aは小学4・5年生の頃
姓名判断により通称名を使用し始めた
30年余にわたり通称名を使用している
次の書面上でも一貫して通称名を使用した
ア 大学卒業後発表した数多くの論文・著書イ 学位記
う 『脩』の字の特殊性
当用漢字表・人名用漢字別表にない
え 裁判所の判断
通称名は社会生活上の利便がある
しかし,通称名への変更は戸籍法の趣旨に反する
戸籍法50条の趣旨=常用平易な文字に制限する
『襲名』では許可されるが本件では異なる
→変更を不許可とした
※仙台高裁昭和34年6月30日
2 通称使用30年・難読→変更不許可
前記の裁判例と同じ種類の事案があります。
通称の名が難読であったために変更が許可されなかった裁判例です。
<通称使用30年・難読→変更不許可>
あ 本名と通称名
本名=『光正』
通称=『職愈(みつまさ)』
約30年間通称を使用していた
い 通称名の難読性
通称名(漢字)の読みができる者は皆無である
戸籍法50条1項の趣旨(う)にも反する
→難読な通称への変更は認めない
う 戸籍法50条1項の趣旨
子の名には常用平易な文字を使用しなければならない
※広島家裁竹原支部平成元年12月18日
3 通称使用25年・干支から『トラ』→変更不許可
通称の使用期間が長いのに変更が不許可となった事例です。戸籍名を嫌う理由に着目されています。現在の判断基準とは離れているものです。
<通称使用25年・干支から『トラ』→変更不許可>
あ 変更希望の名
戸籍名『トラ』→通称名『久子』
い 事案
A(女性)は寅年に生まれた
そこで『トラ』と命名された
Aは幼少の頃から女性には不適当な名であると思い嫌っていた
通称として『久子』を使用するようになった
約25年間通称を使用していた
う 裁判所の判断
干支のうち生れ年に該当するものを命名する例は多い
『トラ』と云う名は女性においても珍奇ではない
戸簿名と通称を併用することが可能である
変更しなくても生活上著しい困難を来すことはない
→変更を許可しなかった
※東京高裁昭和25年3月2日
え 補足説明
他の事例の判断・各種基準と離れた判断である
詳しくはこちら|通称への名の変更の許可基準
4 通称使用20数年→変更不許可
通称の使用期間が長いのに変更が不許可になったレアケースです。
<通称使用20数年→変更不許可>
あ 変更希望の名
戸籍名『助太』→通称名『和久平』
い 事案
Aは17歳の時に通称の使用を始めた
20数年間通称を使用してきた
う 裁判所の判断
正当事由は認められない
→変更を許可しなかった
※大阪高裁昭和26年11月11日
え 補足説明
他の事例の判断・各種基準と離れた判断である
詳しくはこちら|通称への名の変更の許可基準
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