【未成熟子(乳幼児〜高校生)の通称への名の変更(許可の傾向と裁判例)】

1 未成熟子の通称名への変更の基準
2 通称使用1年未満・0歳児→変更不許可
3 通称使用2年半・2歳児・宗教的理由→変更不許可
4 通称使用6年・小学生・姓名判断→変更不許可
5 通称使用7年・7歳児→変更不許可
6 通称使用4年・敗戦イメージ払拭目的・難読→変更不許可

1 未成熟子の通称名への変更の基準

小中学生やそれ未満の年齢の子の名の変更というケースもあります。この場合の判断の傾向をまとめます。

<未成熟子の通称名への変更の基準>

あ 典型的な申立時期

未成熟子の名の変更許可について
人生の節目の時期に申立をする発想がある
例;小中高校入学など

い 実務の傾向

命名に問題があった案件が多い
通称使用期間が短いことが多い
→これを理由に許可を認めない傾向がある
『予定する通称名』ということもある

う 他の見解

通称名の将来の変更の可能性を考慮する
→早期に許可すべきである
呼称秩序と申立人の利益につながる
※糠谷忠男『特別家事審判事件の諸問題』/新民訴講座(8)p210

2 通称使用1年未満・0歳児→変更不許可

以下,実例として裁判例を紹介します。通称の使用期間が短いために変更を許可しなかったものばかりです。おおむね,本人の年齢が若い順に示します。

<通称使用1年未満・0歳児→変更不許可>

あ 事案

Aは生後1年未満の幼児である
通称を使用していた

い 裁判所の判断

戸籍名による本人の同一性識別について
→支障をきたす程度に至っていない
→変更を許可しなかった
※大阪高裁昭和40年1月28日

3 通称使用2年半・2歳児・宗教的理由→変更不許可

<通称使用2年半・2歳児・宗教的理由→変更不許可>

あ 変更希望の名

戸籍名『英男』→通称名『泰宏』

い 事案

本人は出生後周囲から戸籍名で呼ばれたことはない
一貫して通称名で呼ばれている
通称使用期間=2年半

う 裁判所の判断

改名する必要性はない
改名の動機は専ら宗教的理由である
これは親権者の道楽に過ぎない
今後,戸籍名を使用すれば不都合は生じない
→変更を許可しなかった
※東京家裁昭和35年10月31日

4 通称使用6年・小学生・姓名判断→変更不許可

<通称使用6年・小学生・姓名判断→変更不許可>

あ 事案

Aは姓名判断による通称を使用し始めた
小学校に入学したばかりの少年
通称を6年間使用してきた

い 裁判所の判断

本名を通称に変更しないとしても
社会生活上特に著しい差支えをきたすとは言えない
→変更を許可しなかった
※福岡高裁昭和30年4月30日

5 通称使用7年・7歳児→変更不許可

<通称使用7年・7歳児→変更不許可>

あ 変更希望の名

戸籍名『春子』→通称名『京子』

い 事案

Aは当初から通称名を使用してきた
現在7歳である
小学校において戸籍名を使用したくない

い 裁判所の判断

通称の使用期間はさほど長期にわたるものではない
社会的使用分野も限られている
→変更を許可しなかった
※広島高裁岡山支部昭和33年10月17日

6 通称使用4年・敗戦イメージ払拭目的・難読→変更不許可

元の名を付けた経緯に特殊性があったケースです。結局変更は許可されませんでした。

<通称使用4年・敗戦イメージ払拭目的・難読→変更不許可>

あ 変更希望の名

戸籍名『征子』(もとこ)→通称名『万恵』(かずえ)

い 命名の経緯・由来

Aが出生した2日後にAの父が兵役に召集された
父の友人がこのことから戸籍名を命名した

う 敗戦と悲惨な状況

Aが5歳の頃
敗戦によりAの一家は悲惨な生活状態となった
Aが中学1年生になった
Aの両親が次のように思うようになった
戸籍名は戦争・敗戦・悲惨な状態を連想させ好ましくない

え 通称使用

Aは通称『万恵』を使うようになった
広く恵まれる想いを込めて
Aは現在高校2年生である
通称を約4年間使用している

お 裁判所の判断

通称の使用期間は短い
使用の動機は合理的ではない
→変更しなくても支障はない
通称名の読み方が難しい(難読である)
→変更を許可しなかった
※福岡高裁昭和38年1月17日

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【通称への名の変更許可申立の裁判例(許可しなかった)】
【青少年育成条例の『みだらな性交』の解釈と明確性の原則違反】

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