【親子と夫婦間の扶養義務の種類と内容(まとめ)】
1 夫婦間に適用される基本的義務(概要)
2 両親が婚姻中の子供の扶養義務
3 両親が離婚した後の子供の扶養義務
4 婚外子の法的親子関係
5 婚外子の扶養義務
6 婚姻・離婚と扶養の規定の適用(まとめ)
7 婚姻しない両親と扶養の規定の適用(まとめ)
1 夫婦間に適用される基本的義務(概要)
扶養に関する規定はいろいろな種類があります。
本記事では,夫婦・親子間の扶養義務の内容について説明します。
まずは,夫婦に適用される義務の規定について説明します。
具体的には同居や相互の協力義務です。実質的な扶養の内容が含まれています。
<夫婦間に適用される基本的義務(概要)>
あ 同居・相互協力義務
夫婦は同居・相互に協力する義務がある
※民法752条
い 婚姻費用分担義務
生活費を分担する義務がある
※民法760条
詳しくはこちら|別居中は生活費の送金を請求できる;婚姻費用分担金
う 一般的扶養義務との違い
一般的な扶養義務の対象には『夫婦』は含まれていない
→夫婦間の相互協力を優先する・強く保護する趣旨である
通常,夫婦間でこれらを具体的アクションとして請求することはないです。
夫婦間で実際に請求する場面は別居の状況にある時くらいです。つまり,婚姻中ではあるが生活が一体となってないというねじれ状態です。
この『婚姻費用分担金』のことを実務では『婚費(こんぴ)』と呼んでいます。
2 両親が婚姻中の子供の扶養義務
次に,親子間の扶養義務について説明します。まずは,両親が婚姻中という状況での扶養義務をまとめます。
<両親が婚姻中の子供の扶養義務>
あ 共同親権
両親が婚姻中である場合
→両親ともに『親権者』となる
※民法818条3項
い 監護義務(※1)
親権者は子供を『監護』する義務がある
→生活をさせることが含まれる
=衣食住を整えること
つまり『生活費を負担すること』である
※民法820条
う 一般的扶養義務
親子は『直系血族』である
→一般的な扶養義務も同時に適用される
※民法877条
3 両親が離婚した後の子供の扶養義務
両親が離婚した後にも子供の扶養義務は続きます。ただ,その内容(根拠)が変わります。
<両親が離婚した後の子供の扶養義務>
あ 親権者の単独化
両親が離婚した場合
→父・母のどちらか一方だけが親権者となる
※民法819条1,2項
い 親権者ではない親の扶養義務
親権者とならなかった方の親について
→子とは『直系血族』である
→一般的な扶養義務が適用される
※民法877条
う 実務的な負担方法
一般的に親権者Aとなった親が子供を引き取る
→Aが他方の親Bに対して生活費の一部を請求する
養育費(請求)と呼ぶ
詳しくはこちら|養育費・婚姻費用の請求の全体像(家裁の手続や管轄・金額計算・始期と終期)
4 婚外子の法的親子関係
子の両親が婚姻しないケースも増えつつあります。いわゆる婚外子です。
詳しくはこちら|婚外子として子供を持つ家族(事実婚・内縁など)の普及と法律的扱い
婚外子の扶養義務の説明の前に,法律上の親子関係を整理しておきます。
<婚外子の法的親子関係>
あ 法的親子関係
父親が認知しない場合
→法律上は父・子に親子関係は存在しない
=母親だけが親権者になる
い 認知による親子関係成立
父が認知したor強制認知がなされた場合
→父・子に法律上の親子関係が生じる
詳しくはこちら|認知・基本|任意認知|認知届の提出→法的父子関係発生
う 認知後の親権者
ア 原則
母親が親権者である
イ 例外
両親が合意して定めれば,父親を親権者に変更できる
※民法819条4条
5 婚外子の扶養義務
婚外子の扶養義務は,父の認知の有無や親権者の指定という状況によって違います。これをまとめます。
<婚外子の扶養義務>
あ 親権者
親権者は『監護義務』を負う
→前記※1と同様である
※民法820条
い 親権者ではない方の親
親権者ではない親について
例;認知したが親権者ではない父
監護義務は負わない
一般的な扶養義務だけが適用される
※民法877条
6 婚姻・離婚と扶養の規定の適用(まとめ)
以上のように,夫婦や親子の扶養義務の種類は複雑です。以下,全体をまとめます。まず,婚姻中と離婚後の扶養義務の内容をまとめます。
<婚姻・離婚と扶養の規定の適用(まとめ)>
あ 婚姻中
ア 夫婦間
夫婦扶助義務
イ 子供
(共同親権として)監護義務,一般的扶養義務
い 離婚後
ア 夫婦間
存在しない
イ 子供
・親権者である親
監護義務,一般的扶養義務
・親権者ではない方の親
一般的扶養義務
7 婚姻しない両親と扶養の規定の適用(まとめ)
両親が婚姻していない状況でのパートナー間や子供の扶養義務を全体的にまとめます。
<婚姻しない両親と扶養の規定の適用(まとめ)>
あ 婚姻していない両親の間
存在しない
い 婚姻していない両親と子供
ア 父が認知していない場合
存在しない
イ 父が認知した後
・親権者である親
監護義務,一般的扶養義務
・親権者ではない方の親
一般的扶養義務
本記事では,親子や夫婦の間の扶養義務について説明しました。
実際には詳細な事情や主張・立証のやり方次第で結論が違ってきます。
実際に扶養(義務や請求)についての問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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