【代襲原因発生・養子縁組と生前贈与の時期的な関係と特別受益該当性】
1 代襲原因発生前の受益の特別受益性の背景と具体例
2 代襲原因発生前の受益の特別受益性の見解
3 養子縁組前の受益の特別受益性の背景と具体例
4 養子縁組前の受益の特別受益性の見解
1 代襲原因発生前の受益の特別受益性の背景と具体例
特別受益と代襲相続が組み合わさるケースもあります。この場合,時間的な順序によって見解の対立が生じます。
タイミングによって特別受益の解釈が問題となる具体例をまとめます。
<代襲原因発生前の受益の特別受益性の背景と具体例>
あ 問題の所在
代襲原因発生前に代襲相続人が贈与を受けた
この贈与は特別受益に該当するものであった
→特別受益として扱うべきかどうか
い 事例の具体例
被相続人Aの長男Bの子Cが,Aから贈与を受けた
その後,Bが死亡した
さらにその後,Aが死亡した
2 代襲原因発生前の受益の特別受益性の見解
前記の解釈論についての見解は大きく2種類に分けられます。いずれも下級審裁判例として実例があります。逆に最高裁判例がないので統一されていない状況といえます。
<代襲原因発生前の受益の特別受益性の見解>
あ 期間限定説
持戻しの対象となるのは
代襲により推定相続人となった後に受けた利益に限られる
※大分家裁昭和49年5月14日
い 無制限説
受益の時点は関係ない
=一律に持戻し義務を負う
※鹿児島家裁昭和44年6月25日
3 養子縁組前の受益の特別受益性の背景と具体例
養子縁組と特別受益の順序によって,解釈の対立が生じることもあります。まずは具体的な状況をまとめます。
<養子縁組前の受益の特別受益性の背景と具体例>
あ 問題の所在
養子縁組前に養子が贈与を受けた場合
→特別受益として扱うべきかどうか
い 事案の具体例
AがBに贈与をした
事後的に特別受益に該当することとなる
A・Bが養子縁組をした
Aが養親,Bが養子となった
Aが亡くなった
4 養子縁組前の受益の特別受益性の見解
前記の解釈論についての見解は分かれています。見解・裁判例をまとめます。この解釈論についても,統一されたものがあるとはいえない状況です。
<養子縁組前の受益の特別受益性の見解>
あ 一般的な見解
『遺産の前渡し』という趣旨ではない
→直接は適用されないはずである
※能見善久ほか『論点体系 判例民法10相続』第一法規出版p85
い 特別受益の準用を認めた裁判例
民法903条1項に準じ,持戻しの対象とした
※神戸家裁明石支部昭和40年2月6日
う 公平の理念から特別受益を認めた裁判例
土地の贈与について
特別受益の趣旨は公平の理念にある
→持戻しの対象とする
※神戸家裁平成11年4月30日
2021年10月発売 / 収録時間:各巻60分
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