【表示規約による特定事項の明示義務】
1 特定事項の明示義務(総論)
2 特定事項の明示義務の基本規定
3 市街化調整区域
4 接道義務違反の土地
5 路地状敷地を含む土地
6 セットバックを要する土地
7 古家・廃屋が存在する土地
8 沼沢地・湿原・泥炭地など
9 高圧電線下の土地
10 傾斜地を含む土地
11 特異な地勢の土地
12 がけ直近の土地
13 都市計画道路の区域の土地
14 長期間の建築中断があった建物
1 特定事項の明示義務(総論)
公正競争規約として不動産業界の自主的ルールが規定されています。その中に広告・表示を規制する表示規約があります。
詳しくはこちら|不動産の公正競争規約(表示規制と景品規約)(全体)
表示規約の中に『特定事項の明示義務』の規定があります。一定の事項については『書かないこと自体で誤った理解』が生じるリスクがあります。要するに『購入者にとって不利な内容』のことです。セールスする側は隠したいと思うような事情のことです。
そこで,必ず記載すべき事項がリスト化されています。これが『特定事項の明示義務』として表示規約の中に具体化されているのです。
本記事では,特定事項の明示義務の内容について説明します。
2 特定事項の明示義務の基本規定
特定事項の明示義務の全体的な規定があります。
<特定事項の明示義務の基本規定>
あ 規則による特定事項の指定
次の『ア・イ』に該当する具体的な事情について
→規則で『特定事項』として定める
ア 一般消費者が通常予期することができない事項
例;不動産の地勢,形質,立地,環境など
イ 取引の相手方に著しく不利な取引条件
い 特定事項の明示義務
分かりやすい表現で明瞭に表示しなければならない
→『ア〜ウ』のような具体的内容は規則で定める
ア 見やすい場所イ 見やすい大きさウ 見やすい色彩の文字
※表示規約13条,施行規則8条
明示義務のある事項,つまり『特定事項』としては,多くのものが規定されています。以下,個々の『特定事項』について紹介します。
3 市街化調整区域
<市街化調整区域>
市街化調整区域に所在する土地
次のように明示する
『市街化調整区域。宅地の造成及び建物の建築はできません』
※都市計画法29条,43条
4 接道義務違反の土地
<接道義務違反の土地>
建築基準法上の道路に適法に接していない土地
『建築不可』or『再建築不可』と明示する
詳しくはこちら|接道義務・接道要件|但し書き道路・協定道路
5 路地状敷地を含む土地
<路地状敷地を含む土地>
あ 明示義務
路地状部分の面積が土地面積の約30%以上である土地
次の『ア・イ』を明示する
ア 『路地状部分を含む』イ 路地状部分の割合or面積
詳しくはこちら|建築基準法上の『敷地』|路地状敷地・旗竿地・敷地延長
い 表示の例
土地250㎡ (路地状部分約40%を含む)
6 セットバックを要する土地
<セットバックを要する土地>
あ 基本的な明示義務
『セットバックを要する』ことを明示する
詳しくはこちら|セットバック・敷地後退|既存不適格×再築
い 対象面積の明示
セットバックを要する部分の面積について
敷地の約10%以上となる場合
→セットバックを要する部分の面積を明示する
う 表示の例
土地250㎡(再建築時はセットバックを要する)
7 古家・廃屋が存在する土地
<古家・廃屋が存在する土地>
あ 明示義務
古家,廃屋が存在する土地
→この旨を明示する
い 表示の例
土地250㎡(古家あり)
8 沼沢地・湿原・泥炭地など
<沼沢地・湿原・泥炭地など>
沼沢地・湿原・泥炭地など
→この旨を明示する
9 高圧電線下の土地
<高圧電線下の土地>
あ 基本的な明示義務
土地の全部or一部が高圧電線路下にある土地
その旨+おおむねの面積を明示する
い 建築制限の明示
建物などの工作物の建築が禁止されている場合
→その旨も明示する
う 表示の例
土地250㎡ (約50㎡は高圧線下にある。高圧線下部分は建物などの建築不可)
10 傾斜地を含む土地
<傾斜地を含む土地>
あ 基本的な明示義務
傾斜地を含む土地について
次の『ア・イ』のいずれかに該当する場合
→『傾斜地を含む』+傾斜地の割合or面積を明示する
ア 傾斜地の割合が約30%以上を占める
マンション・別荘地などは除外される
イ 有効利用の阻害が著しい
傾斜地を含むことによって
土地の有効な利用が著しく阻害される
い 表示の例
土地250㎡(約30%の傾斜地(がけ)を含む。建築可能な範囲はがけの先端から15m後退した位置となる)
11 特異な地勢の土地
<特異な地勢の土地>
あ 基本的な明示義務
次のような著しく特異な土地
→その旨を明示する
ア 著しい不整形画地イ 区画の地盤面が2段以上に分かれている
い 表示の例
土地250㎡。2段宅地である。(100m部分と150m部分,高低差2m)
12 がけ直近の土地
<がけ直近の土地>
あ 明示義務
擁壁によっておおわれないがけの上or下にある土地
→その旨を明示する
い 表示の例
土地250㎡(高さ10mのがけ上に位置する)
13 都市計画道路の区域の土地
<都市計画道路の区域の土地>
あ 明示義務
『ア・イ』による都市計画道路等の区域にかかる土地
→その旨を明示する
ア 道路区域の決定
※道路法18条1項
イ 都市計画の告示
※都市計画法20条1項
い 表示の例
土地250㎡(約20㎡は都市計画道路区域内である)
14 長期間の建築中断があった建物
<長期間の建築中断があった建物>
新築住宅or新築分譲マンションについて
建築工事に着手した後において
工事を相当の期間にわたり中断していた場合
→建築工事の着手時期+中断の期間を明示する