【隣地使用権の当事者(請求者=原告適格と相手方=被告適格)】
1 隣地使用権の請求権者と相手方(総論)
2 隣地使用権の請求権者(原告適格)
3 隣地使用権の相手方(被告適格)
1 隣地使用権の請求権者と相手方(総論)
一定の状況がある場合,隣地を使用することが認められます。
詳しくはこちら|隣地使用権の基本(規定・趣旨・法的性質・類似規定)
本記事では,隣地を使用する権利の当事者,つまり請求する者と請求の相手方を説明します。それぞれ,訴訟では,原告・被告という立場です。そこで『原告適格』『被告適格』と呼びます。
2 隣地使用権の請求権者(原告適格)
隣地使用権の請求権者は通常,土地の所有者です。しかし,所有者だけに限られません。
<隣地使用権の請求権者(原告適格)>
あ 条文上の規定
『所有者』だけが記載されている
※民法209条
条文上の準用や解釈により
→所有者以外も含まれる(『い〜お』)
い 土地の所有者・地上権者
※民法209条,267条
う 永小作健者
民法209条の類推適用を認める見解が多い
※埼玉弁護士会『相隣関係をめぐる法律と実務〜現代型相隣紛争解決の手引〜』ぎょうせいp79
え 土地の賃借人
相隣関係の規定は土地賃借権にも類推適用される
※東京地裁昭和60年10月30日
お 土地の使用借人
土地の使用借権を有し土地上に建物を所有する者について
→債権的利用権も含めて類推適用される
※東京高裁平成18年2月15日(原審;東京地裁平成17年8月9日)
3 隣地使用権の相手方(被告適格)
隣地の使用を請求する相手方は,通常は(隣地の)所有者です。しかし,解釈としては占有する者が相手方となります。
<隣地使用権の相手方(被告適格)>
あ 条文上の規定
請求の『相手方』についての記載はない
※民法209条1項
い 解釈論(裁判例)
使用する対象の土地を現に占有している者
所有者であっても占有していない場合は被告適格を欠く
例;第三者に賃貸し引渡し済みである
※高松高裁昭和49年11月28日
う 解釈論(一般的見解)
現に隣地を利用・占有している者に被告適格を認める見解が多い
例;所有者・地上権者・賃借人など
※埼玉弁護士会『相隣関係をめぐる法律と実務〜現代型相隣紛争解決の手引〜』ぎょうせいp80