【『通貨・法貨』の強制通用力と仮想通貨の該当性】
1 『通貨・法貨・強制通用力』の法的な内容
2 『通貨』該当性と弁済の効力
3 通貨以外の有効な金銭債務の弁済
4 仮想通貨の『通貨』該当性の政府見解(概要)
5 仮想通貨の供託
6 現金・通貨の機能の面の整理(概要)
1 『通貨・法貨・強制通用力』の法的な内容
本記事では『通貨・法貨』の内容や仮想通貨の該当性について説明します。
まずは,通貨や法貨の意味についてまとめます。
<『通貨・法貨・強制通用力』の法的な内容>
あ 強制通用力・支払手段の法的意義
取引において,その決済の手段として利用されること
相手が承諾しなくても決済が終了すること
債務がすべて消滅すること
『強制通用力を有する』ことと同じことである
※古市峰子『現金,金銭に関する法的一考察』日本銀行金融研究所『金融研究』14巻4号(1995年12月)p109〜111
※岡田仁志ほか『仮想通貨〜技術・法律・制度〜』東洋経済新報社p119
い 強制通用力の意味
『法貨として通用する』ことをいう
※日本銀行法46条2項参照
2 『通貨』該当性と弁済の効力
通貨は,相手が同意しなくても債務消滅(弁済)の効力が生じるものです(前記)。この点『通貨』と『弁済の効力』はまったく同じ(同義)ではありません。
<『通貨』該当性と弁済の効力>
有効な弁済となるものについて
→『通貨』以外のものも存在する(後記※1)
『通貨』該当性そのものは重要ではない
※岡田仁志ほか『仮想通貨〜技術・法律・制度〜』東洋経済新報社p123
3 通貨以外の有効な金銭債務の弁済
通貨ではないのに,弁済の効力が生じる方法の具体的内容をまとめます。
<通貨以外の有効な金銭債務の弁済(※1)>
あ 郵便為替
※大判大正8年7月15日
い 振替貯金払出証書
※大判大正9年2月28日
う 銀行の自己宛小切手
※最高裁昭和37年9月21日
え 銀行の自己宛小切手
※最高裁昭和48年12月11日
4 仮想通貨の『通貨』該当性の政府見解(概要)
政府の公的見解は,仮想通貨は『通貨』に該当しないというものです。
<仮想通貨の『通貨』該当性の政府見解(概要)>
ビットコイン(仮想通貨)について
『通貨・法貨』『外国通貨』のいずれにも該当しない
※内閣総理大臣『答弁書』内閣参質186第28号;平成26年3月7日
詳しくはこちら|仮想通貨に関する公的見解(答弁書・中間報告・WG報告)
5 仮想通貨の供託
弁済と同等の法的効果が生じる手続として『供託』があります。
仮想通貨の支払について,供託の利用という発想もあります。現時点では否定する見解が一般的です。
<仮想通貨の供託>
あ 供託の規定
弁済と同等の効果を生じる公的サービスである
供託の対象物に制限はない
※民法494条
い 仮想通貨の供託(公的見解)
仮想通貨は私法上の位置付けが明確でない
→供託ができない
※決済高度化WG報告
詳しくはこちら|仮想通貨に関する公的見解(答弁書・中間報告・WG報告)
う 仮想通貨の供託(可能性)
次の方法が考えられる
『目的物が供託に適しない』ものとして
→裁判所の許可を得て売却し,日本円で供託する
ただし条文上『競売』となっている
→一定の解釈が前提となる
※民法497条
6 現金・通貨の機能の面の整理(概要)
以上の説明は,決済手段としての法的性格に関するものでした。これと類似するものとして,通貨や現金の機能というテーマもあります。
機能の面での通貨や現金と仮想通貨の比較については,別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|『現金・通貨』の機能と仮想通貨の該当性