【『自由貨幣』という概念と仮想通貨】
1 『自由貨幣』という概念
2 『自由貨幣』の要件
3 仮想通貨の自由貨幣該当性
4 民法の弁済の解釈論と『自由貨幣』概念
5 『通貨』該当性の解釈の実益(概要)
1 『自由貨幣』という概念
一般的な『通貨・法貨』とは別に『自由貨幣』という概念があります。
仮想通貨の法的性質を考える上で使われる概念です。
本記事では自由貨幣の意味と仮想通貨の該当性について説明します。
まずは『自由貨幣』の基本的事項をまとめます。
<『自由貨幣』という概念>
あ 『自由貨幣』という概念
『債権者の承認+任意に受領→弁済の効果が生じる』
い 『自由貨幣』の性質論
『通貨』の性質が含まれている,と解釈する
う 『自由貨幣』と通貨高権
『自由貨幣』概念は『通貨高権』と抵触する可能性がある
詳しくはこちら|通貨高権・紙幣類似証券取締法と仮想通貨
※森田宏樹『電子マネーの法的構成(4)』p34〜
2 『自由貨幣』の要件
自由貨幣の一般的な要件をまとめます。
<『自由貨幣』の要件(※1)>
ア 支払単位の組み込まれた媒体であるイ 財産権としての排他性ウ 転々流通性エ 社会における通貨媒体としての信認 ※森田宏樹『電子マネーをめぐる司法上の諸問題』金融法研究15号p74〜
3 仮想通貨の自由貨幣該当性
仮想通貨は,普及が進めば,前記の自由貨幣の要件に該当する可能性があります。
<仮想通貨の自由貨幣該当性>
『自由貨幣』の要件(前記※1)について
→仮想通貨は該当する可能性がある
重要な判断要素=『普及の程度』
※森田宏樹『電子マネーをめぐる司法上の諸問題』金融法研究15号p74〜
※岡田仁志ほか『仮想通貨〜技術・法律・制度〜』東洋経済新報社p123
4 民法の弁済の解釈論と『自由貨幣』概念
自由貨幣を認めない見解もあります。肯定/否定の見解のそれぞれは,民法の弁済の規定の解釈が異なります。
理論的な対応関係についてまとめます。
<民法の弁済の解釈論と『自由貨幣』概念>
あ 民法402条1項の内容
金銭債権は債務者の選択した『各種の通貨』で弁済できる
ただし『特定の種類の通貨』の給付を合意した場合は合意が優先となる
※民法402条1項
い 『自由貨幣』概念との関係
自由貨幣の肯定/否定 | 条文解釈 |
否定説 | 無意味(当然の内容)となる |
肯定説 | 『法貨』とは別の通貨=『自由貨幣』を前提としている |
自由貨幣を認める見解は,民法402条1項の『各種の通貨』の中に『自由貨幣』が含まれると解釈するのです。
5 『通貨』該当性の解釈の実益(概要)
以上は自由貨幣という概念の説明でした。
この点,通貨や自由貨幣などの概念の議論は,それ自体ではあまり意味がないという指摘があります。
個々の制度や規定の適用の有無を考えれば足りるという考え方です。
そもそも『通貨・現金』などの概念について,法的な統一的理解・定義がないということが背景にあるのです。
そして,個々の制度については,各政府の政策的な判断が前提となっています。
決済手段の利用自体に関する政府の政策的な制度・規定については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|通貨高権・紙幣類似証券取締法と仮想通貨