【弁済の提供の基本(提供の方法(種類)と効果)】
1 弁済の提供の基本
2 弁済の提供の効果
3 弁済の提供の要否と方法(段階的な整理)
4 供託によるリスク回避(概要)
1 弁済の提供の基本
給付する義務の履行を弁済といいます。
具体例は,金銭を支払うとか物や不動産を渡す(引き渡す)というものです。
弁済がないと債務不履行になり,損害賠償責任が生じたり,相手から契約を解除されることがあります。
この点,弁済をしなくても,このような債務不履行の責任を負わなくて済むことがあります。
弁済の提供と呼ばれるものです。
本記事では弁済の提供の内容(方法)や効果について説明します。
2 弁済の提供の効果
弁済の提供があれば,債務者は債務不履行責任を回避できます。その意味では(実際には弁済は完了していないけれど)弁済したのと同じ扱いになるということです。
<弁済の提供の効果>
あ 弁済の提供の効果
債務者が弁済の提供をした場合
→債務不履行による責任が生じない
実際に弁済が完了しなくても同様である
※民法492条
い 債務不履行責任の内容(参考)
ア 損害賠償責任の発生イ 解除権の発生
双務契約(売買など)の相手方が契約を解除できる
※民法415条,541条
3 弁済の提供の要否と方法(段階的な整理)
弁済の提供は現実の提供,口頭の提供の2種類に分けられます。債権者が協力しない態度であれば,簡略化された口頭の提供で足りることになります。
さらに債権者の受領しない態度が強いケースでは,口頭の提供すら不要(債務不履行責任は生じない)となります。
全体として3段階に分けて整理できます。
<弁済の提供の要否と方法(段階的な整理)>
あ 原則=現実の提供(重い)
原則として現実の提供が必要である
い 口頭の提供で足りる(中間)
債権者の受領拒絶があるor債権者の協力を要する場合
→口頭の提供で足りる
詳しくはこちら|口頭の提供の基本(条文・口頭の提供が認められる要件と方法)
※民法493条
う 口頭の提供すら不要(軽い)
債権者が明確に受領しない意思を表明している場合
→弁済の提供(口頭の提供)は不要である
=債務不履行責任は生じない
詳しくはこちら|債権者の明確な受領拒絶の意思表明による債務不履行責任免除(口頭の提供すら不要)
4 供託によるリスク回避(概要)
債務者は実際に弁済しなくても,弁済の提供だけすれば,債務不履行になりません(前記)。
しかし実際には,後から弁済の提供にあたらないと判断され,債務不履行になってしまうリスクも残ります。
このリスクを回避する方法として弁済供託があります。
債権者が受領を拒否しているようなケースでは利用できます。
実務では弁済の提供で止めずに,弁済供託を行い,確実にリスク回避をすることが望ましいです。
詳しくはこちら|弁済供託|基本|制度趣旨・被供託者|受領拒否/不能・債権者不確知
本記事では,弁済の提供の基本的な内容を説明しました。
実際には,個別的な状況によって,弁済の提供が必要なのか不要なのか,必要だとして口頭の提供で足りるのかという判断が違ってきます。
実際に債務の弁済(支払,納品)についての問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。