【賃料増減額の判断において考慮する事情(基本)】
1 賃料増減額請求の規定における要件
本記事では、賃料増減額請求の判断で考慮される事情について説明します。
条文上、増減額の要件として規定されている内容が当然、考慮する事情の中心になります。
賃料増減額請求の規定における要件
あ 根本的な要件
賃料が不相当となった
→当事者は賃料の額の増額or減額を請求できる
不相当の例として『い・う』が示されている
い 経済事情の変動
『ア〜ウ』のいずれかの事情により賃料が不相当となった
ア 土地に対する公租公課の増減イ 土地の価格の上昇or低下ウ その他の経済事情の変動
う 近隣の相場の変動
近傍類似の土地の賃料に比較して対象の借地の賃料が不相当となった
※借地借家法11条1項
詳しくはこちら|借地・借家の賃料増減額請求の基本
2 賃料増減額請求における考慮事項(基本)
賃料増減額請求で考慮される事情は条文に規定された内容(前記)に限定されるわけではありません。
賃料増減額請求における考慮事項(基本)
あ 条文規定の限定排除
賃料増減額請求について
請求の当否・相当賃料額を定めるにあたっては
請求の当時の経済事情・従来の賃貸借関係を斟酌する
借地法12条所定の事由に限られない
※最高裁昭和44年9月25日
い 考慮する事情(全体)
広い範囲の事情(後記※1)について
→総合的に考慮する
※最高裁平成15年10月21日など
3 鑑定評価基準における考慮事情(概要)
賃料増減額請求において考慮される事情は幅広いです(前記)。
考慮される事情は、不動産鑑定評価基準の継続賃料の改定に関する規定としても示されています。
鑑定評価基準における考慮事情(概要;※1)
あ 総合方式(概要)
借地の継続賃料の改定について
総合方式により改定賃料を決定する
『い』の事項を総合的に勘案する
直近合意時点から価格時点までの期間を中心とする
い 考慮事項(引用)
(1)近隣地域若しくは同一需給圏内の類似地域等における宅地の賃料又は同一需給圏内の代替競争不動産の賃料、その改定の程度及びそれらの推移
(2)土地価格の推移
(3)賃料に占める純賃料の推移
(4)底地に対する利回りの推移
(5)公租公課の推移
(6)直近合意時点及び価格時点における新規賃料と現行賃料の乖離の程度
(7)契約の内容及びそれに関する経緯
(8)契約上の経過期間及び直近合意時点から価格時点までの経過期間
(9)賃料改定の経緯
※不動産鑑定評価基準p52(第2章第1節Ⅱ2)
詳しくはこちら|改定(継続)賃料に関する不動産鑑定評価基準の規定内容
4 鑑定評価基準における考慮事情の内容(概要)
不動産鑑定評価基準には継続賃料の改定について規定があります(前記)。
この内容の個々の事項については、別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|賃料増減額請求において考慮する各事情の内容