【賃料増減額請求において考慮する特殊事情(特約の存在・改築不能)】
1 契約締結に関する事項の具体例
2 サブリースに関する考慮事項
3 建物の改築不能という状況の考慮(増額否定)
4 相当賃料算定手法での特殊事情の反映(概要)
1 契約締結に関する事項の具体例
契約締結の経緯は賃料改定の判断で考慮すべき重要な事項の1つです。
詳しくはこちら|賃料増減額の判断において考慮する事情(基本)
これに関して,賃料改定特約に関する事情も判断に大きく影響します。
<契約締結に関する事項の具体例>
あ 賃料額決定に関する事情
ア 賃料額決定の要素
賃貸借契約の当事者が賃料額決定の要素とした事情
賃料額が決定されるに至った経緯
イ 自動増額特約の経緯
賃料自動増額特約が付されるに至った事情
※最高裁平成15年10月21日
い 賃貸借成立に関する経緯
特に賃貸借の成立に関する経緯
※最高裁昭和44年9月25日
う 当初の収支予測
借主における収支予測にかかわる事情
=賃料収入に占める割合の推移の見通しについての認識
例;貸主の敷金・銀行借入金の返済の予定に関わる事情
※最高裁平成15年10月21日
え 賃料保証に関する事情
ア 賃料保証特約の存在イ 保証賃料額が決定された事情
※最高裁平成15年10月23日
詳しくはこちら|増減額請求権の強行法規性に関する4つの最高裁判例(要点)
詳しくはこちら|増減額請求権の強行法規性に関する4つの最高裁判例(引用)
2 サブリースに関する考慮事項
サブリースという特殊な契約でも賃料増減額が可能です。
改定賃料の判断においては,この契約の特殊性が考慮されます。
前記の契約締結に至る経緯の1つに分類できます。
<サブリースに関する考慮事項>
あ サブリースと賃料増減額(前提)
サブリースにおけるマスターリース契約について
→賃料増減額請求は適用される
※借地借家法32条1項
い 考慮事項の具体的内容
業務委託協定に関する『ア・イ』は重要な考慮要素である
ア 業務委託協定の存在
マスターリースの賃料額など
イ 賃料自動増額特約の存在
『ア』に基づく特約である
※最高裁平成16年11月8日;サブリース契約について
3 建物の改築不能という状況の考慮(増額否定)
借地上の建物の改築に関する当事者の交渉の状況も賃料改定で考慮されます。
具体的に増額を否定する判断につながった裁判例を紹介します。
<建物の改築不能という状況の考慮(増額否定)>
あ 事案
借地は路地状敷地を通行する状況にあった
地主が通路部分の一部に他の建物を建築した
借地上の建物の改築について
接道義務に反することになり建築確認を受けられなくなった
→現実的に再築は不可能である
い 裁判所の判断
再築が不可能なことを改定賃料の判断で考慮すべきである
すでに借地人は約37%の増額を認めていた
これ以上の増額は認めない
※東京地裁昭和52年6月30日
4 相当賃料算定手法での特殊事情の反映(概要)
特殊事情の反映として別のケースもあります。
利回り法の試算を修正する方法がとられた裁判例が2つあります。
<相当賃料算定手法での特殊事情の反映(概要)>
あ 事案
借地において地主が建物の改築や増築を拒否していた
い 裁判所の判断
賃料増減額請求の判断において
利回り法による試算賃料をベースとした
『あ』の事情により半額以上を減額した
※大阪地裁昭和40年7月13日
※仙台高裁昭和51年2月4日
詳しくはこちら|利回り法における特殊事情の賃料額レベルでの反映(増改築拒否など)