【新法と旧法の賃料増減額請求の規定の比較と法改正の経緯】

1 新法と旧法の賃料増減額請求の規定の比較と法改正の経緯

平成4年に、借地、借家に関する法律は、旧法(借地法・借家法)から新法(借地借家法)へ切り替わりました。そして、賃料増減額請求に関する扱いが変わりました。
この改正(制度の変更)に関して経過措置があります。本記事ではこれについて説明します。

2 賃料増減額請求の制度の法改正経過措置

法改正の附則で経過措置が定められてます。結論として、新法が、過去の契約にも適用されます。

賃料増減額請求の制度の法改正経過措置

あ 賃料増減額請求の制度(本体)

賃料増減額請求の制度について
借地借家法施行前後で実質的な変更はない
→借地借家法施行前の借地関係にも適用される
※附則4条本文
※下田文雄『民事調停法の一部改正』/『法律のひろば45巻3号』ぎょうせい1992年p29

い 調停前提(手続)

民事調停法の改正により
賃料改定に関する調停の規定が新設された
→借地借家法施行前の借地関係にも適用される
詳しくはこちら|賃料改定の調停における調停条項の裁定制度

3 賃料改定事由(要件)の変化→なし

(1)賃料改定事由の条文上の変化

賃料増減額、つまり改定が認められる要件は条文に規定されています。
この規定内容は、旧法と新法で文言レベルでは違いがあります。

賃料改定事由の条文上の変化

あ 借地借家法(新法)

借地借家法の賃料改定事由について
→『ア〜ウ』が規定されている
ア 土地に対する租税その他の公課の増減イ 土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動ウ 近傍類似の地代等との比較 ※借地借家法11条1項、32条1項

い 借地法・借家法(旧法)

借地法・借家法の賃料改定事由について
『その他の経済事情の変動』がなかった
※借地法12条、借家法7条

う 比較

条文の文言として『い』が追加された

(2)賃料改定事由の実質的変更→なし

賃料増減額請求の実際の要件としては、新法と旧法で違いはないと考えられています。

賃料改定事由の実質的変更→なし

あ 一般的見解

旧法と新法の規定の違いについて
規定内容に実質的な違いはない
新法は旧法の規定を踏襲している
※幾代通ほか『新版 注釈民法(15)債権(6)増補版』有斐閣1996年p865
※下田文男『民事調停法の一部改正』/『法律のひろば平成4年3月』p29

い 国会での発言

ア 発言者 政府委員
法務省民事局長
イ 発言内容 この改正は当時の裁判実務、鑑定実務の扱いを法文の上で明確にするに過ぎない
借地法との違いはない
※衆院法務委平成3年8月30日会議録5;清水発言

4 旧法の限定的有効説→新法でも同じ(概要)

賃料増減額請求に関して、旧法と新法では実質的に同一です(前記)。
そこで、旧法における賃料に関する特約の有効性の解釈も、新法にも承継されるものとして扱われています。

旧法の限定的有効説→新法でも同じ(概要)

賃料改定特約の有効性判断基準について
一般的に旧法の解釈が新法でも適用する
詳しくはこちら|賃料に関する特約の一般的な有効性判断基準(限定的有効説)

本記事では、借地借家法の賃料増減額請求について、旧法(借地法・借家法)からの経過措置について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に借地や借家(建物賃貸借)における賃料(地代、家賃)の金額に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【賃料増減額請求において考慮する特殊事情(特約の存在・改築不能)】
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