【宅建業者から依頼者以外への報酬請求の基本(民事仲立人・商人の性質)】
1 宅建業者から依頼者以外への報酬請求(総論)
2 宅建業者の民事/商事仲立人・商人への該当性
3 商人の報酬請求権(一般論)
4 宅建業者の報酬請求権の判断事例(まとめ)
5 商事仲立人の複数委託者への報酬請求権(参考)
1 宅建業者から依頼者以外への報酬請求(総論)
宅建業者は不動産取引の仲介(媒介)を行います。
媒介の報酬(手数料)が誰に対して発生するのか,という問題があります。
通常どおり媒介の依頼があり,媒介契約書が調印されるケースでは問題になりません。
明確な『依頼・契約書調印』がないけれケースでも,報酬が発生することがあるのです。
本記事では,宅建業者の媒介の報酬請求の相手方について説明します。
2 宅建業者の民事/商事仲立人・商人への該当性
宅建業者の媒介について,法律上の扱いとして『仲立人』『商人』というものが考えられます。
これらの判断によって,報酬請求の相手方が違ってくるのです。
一般的に,民事仲立人であり,その結果『商人』に該当すると判断されいています。
<宅建業者の民事/商事仲立人・商人への該当性>
あ 民事仲立人への該当性
宅建業者は『他人間ノ商行為ノ媒介』を業とする者ではない
※商法543条
→商事仲立人ではない
い 民事仲立人への該当性
宅建業者は民事仲立人である
う 商人への該当性
『仲立ニ関スル行為』を営業とする者である
→商人に該当する
※商法502条1号,4条1項
3 商人の報酬請求権(一般論)
媒介をする宅建業者は『商人』に該当します(前記)。
『商人』は,明確な依頼・委託がなくても報酬請求権が生じることがあります。
<商人の報酬請求権(一般論)>
あ 商人の報酬請求権(通常)
商人が営業の範囲内において他人のためにある行為をした場合
→特約がなくても,報酬請求権を有する
※民法648条1項,商法512条
い 商人の報酬請求権(委託なし)
『あ』に該当する場合
委託がなくても報酬請求権は発生する
※大判昭和8年9月29日
4 宅建業者の報酬請求権の判断事例(まとめ)
媒介をした宅建業者は『他人のため』の行為であれば委託がなくても報酬請求ができることがあります(前記)。
実際に,委託をしていない当事者のためという目的があったために,報酬請求が認められたケースがあります。
<宅建業者の報酬請求権の判断事例(まとめ)>
委託をしていない不動産取引の当事者に対する
媒介をした宅建業者による報酬請求について
→肯定・否定の裁(判例)がある
※東京地裁昭和36年7月10日;否定
※最高裁昭和44年6月26日;肯定
詳しくはこちら|宅建業者から依頼者以外への報酬請求(裁判例の集約)
5 商事仲立人の複数委託者への報酬請求権(参考)
商事仲立人は複数の委託者が存在する場合,報酬請求権が平等に分けられます。
宅建業者は商事仲立人に該当しないので,この規定は適用されません。
<商事仲立人の複数委託者への報酬請求権(参考)>
商事仲立人の報酬請求権が複数当事者に対して発生した場合
→報酬は当事者が折半して負担する
※商法550条2項