【不動産売買後の特殊な近隣住民の発覚によるトラブル(まとめ)】
1 近隣住民と売買に関する責任(総論)
2 近隣住民による環境的要因と売買の責任(まとめ)
3 近隣の暴力団事務所の存在と売買の瑕疵(肯定)
4 特異・迷惑な住人と売買に関する責任(概要)
1 近隣住民と売買に関する責任(総論)
不動産の売買の後に,周辺環境について想定外の事情が発覚するケースがあります。
売主や仲介業者の法的責任が認められることもあります。
周辺環境の内容として,近隣の住民の事情が問題となることもあります。
本記事では,近隣住民によって生じる問題の種類や責任を説明します。
2 近隣住民による環境的要因と売買の責任(まとめ)
近隣住民によって,好ましくない環境となることもあります。
具体的な問題の種類や法的責任の種類をまとめます。
<近隣住民による環境的要因と売買の責任(まとめ)>
あ 具体的内容
ア 近隣に暴力団事務所が存在する(後記※1)イ 特異・迷惑な言動をする住人が存在する(後記※2)
い 法的責任
ア 瑕疵担保責任
比較的古くから認める裁判例がある(後記※1)
イ 説明義務違反
平成16年大阪高裁判例で認められている
売主・売り側仲介業者のいずれも責任が認められた
詳しくはこちら|住居売買後の迷惑な隣人の発覚と売主・仲介の責任(肯定裁判例)
この裁判例以前の裁判例は見当たらない
※石川博康『売主および仲介業者の説明義務と隣人に関する事情』/『NBL804号』2005年3月p17
3 近隣の暴力団事務所の存在と売買の瑕疵(肯定)
近隣住民による住環境の悪化のケースの典型の1つは暴力団事務所の存在です。
売買の後に暴力団事務所の存在が発覚し,瑕疵担保責任が認められた裁判例を紹介します。
<近隣の暴力団事務所の存在と売買の瑕疵(肯定)(※1)>
あ 事案
Aは宅地を購入した
目的=自宅事務所件賃貸マンションの建設用地として
近くの建物に暴力団事務所が存在した
売買に際して説明を受けていなかった
い 瑕疵担保責任
環境について『瑕疵』と認めた
→売主の損害賠償責任を認めた
う 賠償額
売買代金の2割相当額を賠償額として認めた
※東京地裁平成7年8月29日
4 特異・迷惑な住人と売買に関する責任(概要)
近隣住民による住環境の悪化のケースとして,特異・迷惑な言動をする住人が存在するものもあります。
<特異・迷惑な住人と売買に関する責任(概要)(※2)>
あ 近隣住人の特異性と売買の責任(全体)
不動産の売買の後において
近隣に特異・迷惑な言動をする住人の存在が発覚した場合
→瑕疵担保責任や説明義務違反が認められることがある
い 売主・仲介業者の説明義務違反を認めた裁判例
詳しくはこちら|住居売買後の迷惑な隣人の発覚と売主・仲介の責任(肯定裁判例)
う 売主の瑕疵担保責任(損害賠償)を認めた裁判例
本記事では,不動産売買において特殊な近隣住民の存在によって生じる問題について説明しました。
実際には,個別的事情によって,法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に不動産売買の後に近隣住民との関係による問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。