【『著作物』に該当しない典型例(全体)】
1 著作物に該当しないものの分類
2 短い表現と著作物性
3 機械による作成と著作物性
4 マンガのキャラクターと著作物性
5 アイデア・実用品と著作物性(概要)
1 著作物に該当しないものの分類
創作物・作品はすべてが著作物に該当するわけではありません。
詳しくはこちら|『著作物』の定義(基本)
創作物・作品のようにみえても,著作物の要件の一部を満たさないと『著作物』として認められません。
本記事では,著作物に該当しないものを説明します。
まずは大きな分類を整理します。
<著作物に該当しないものの分類>
具体例 | 満たさない『要件』 |
事実の伝達・事件の報道 | 『表現』に該当しない(10条2項) |
思想・アイデア・感覚・感情そのもの(後記※4) | 『表現』に該当しない |
実用品・工業製品(後記※4) | 『文芸・学術・美術・音楽の範囲』に該当しない(原則) |
模倣品 | 『創作的』に該当しない |
短い表現など(後記※1) | 『創作的』に該当しない |
機械による作成(後記※2) | 『創作的』に該当しない |
キャラクターそのもの(後記※3) | 『表現』に該当しない |
2 短い表現と著作物性
文章の表現は著作物として認められるものが多いです。
しかし,創作的ではない表現は著作物として否定されます。
<短い表現と著作物性(※1)>
あ 基本的事項
短い表現・ありふれた表現
→『創作的』に該当しない
→『著作物』には該当しない
い 典型的種類
短い・ありふれた表現
定石的表現
選択の幅が狭い表現
う 具体例
題名・名称
3 機械による作成と著作物性
機械・コンピュータによる処理の能力は大きく発展しています。
しかし,機械は創作ができない,という根本的な命題があります。
そこで,機械がつくったものは創作性が否定され,著作物として認められません。
ただし,一部でも人間による関与があれば,創作性が認められることもあります。
<機械による作成と著作物性(※2)>
あ 機械と創作の絶対命題
機械に創作はできない
→機械が作成したものは『創作性』がない
→『著作物』に該当しない
い 機械による作成の具体例
ア スピード写真イ 人工衛星が撮影した写真
今後さらにコンピュータによる処理が高度化し,AIが大きく発達したときには,この絶対命題に変更が迫られるかもしれません。
4 マンガのキャラクターと著作物性
マンガ・アニメのキャラクター,つまり登場人物の性格や姿は物語の面白さの根幹です。
この点,『キャラクターそのもの』と『キャラクターのイラスト』が,混同・誤解されることが多いです。
性格や身長や体型などの設定は『表現』ではないので著作物ではありません。
具体的には,オリジナルのイラストとは違うポーズのイラストを新たにつくった場合は,著作物の複製とはいえません。
著作権侵害とならないのです。
<マンガのキャラクターと著作物性(※3)>
あ 絵・イラスト自体
キャラクターの絵・イラストそのもの
→著作物に該当する
い キャラクターそのもの
キャラクターそのものについて
例;漫画家が描いたイラストと違うポーズのキャラクター
具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念である
→『表現』ではない
→著作物ではない
※最高裁平成9年7月17日;ポパイ事件
5 アイデア・実用品と著作物性(概要)
アイデアや実用性のある工業製品は原則的に著作物には該当しません。
<アイデア・実用品と著作物性(概要・※4)>
アイデア・実用品について
→原則的に著作物に該当しない
例外的に著作物に該当するものもある
詳しくはこちら|アイデア・実用品の『著作物』該当性