【宗教上の名(僧名・法名)への変更(裁判例の集約)】
1 宗教上の名への変更の事例集約(総論)
2 宗教名への変更→変更許可
3 僧名への変更→変更許可
4 通称としての宗教名への変更(概要)
5 再度の宗教名への変更許可(概要)
6 宗教名への変更→変更不許可
7 兼業僧侶の法名への変更→変更不許可
1 宗教上の名への変更の事例集約(総論)
戸籍名を宗教上の名に合わせるための名の変更の申立はとても多いです。
一般的には変更は許可されます。
詳しくはこちら|宗教上の名(僧名・法名)への変更の許可基準
本記事では,実際の事例と裁判所の判断を紹介します。
2 宗教名への変更→変更許可
収去上の名への変更が許可された裁判例です。
<宗教名への変更→変更許可>
あ 事案
Aは宗教名への変更許可を申し立てた
い 裁判所の判断
宗教に従事する者の本名が布教伝導上の支障になる
→変更を許可した
※大阪高裁昭和27年5月27日
3 僧名への変更→変更許可
僧名への変更が許可された事例です。
<僧名への変更→変更許可>
あ 僧名取得
Aは得度(『え』)を行った
Aは高野山真言宗管長より『妙伝』の僧名を受けた
い 改名と仏の道
Aは,次のイベントを履行しないと仏の道に没入し得ないと信じている
ア 信者に仏による衆生済度の道を説くイ 菩提の供養するウ 僧名に改名する
う 裁判所の判断
変更を許可した
※福岡高裁昭和36年12月18日
え 得度(とくど)の意味
仏教における僧侶となるための出家の儀式
4 通称としての宗教名への変更(概要)
宗教名を通称として長期間使用していたというケースがあります。
この通称としての使用は変更を肯定する事情です。
結論として,変更は許可されました。
<通称としての宗教名への変更(概要)>
Aは宗教団体における法名を日常的に使用していた
20数年間使用していた
→変更を許可した
※大阪高裁昭和27年10月10日
詳しくはこちら|通称への名の変更許可申立の裁判例(許可した)
5 再度の宗教名への変更許可(概要)
いったん宗教名への変更許可を得て,変更した後に,改めて別の宗教名を得るケースもあります。
2回目の変更を許可した裁判例を紹介します。
<再度の宗教名への変更許可(概要)>
所属寺院の変更があった
2つ目の僧名を得た
2回目の名の変更許可を申し立てた
→変更を許可した
※広島高裁岡山支部昭和57年11月25日
詳しくはこちら|再度の名の変更(許可基準と事例)
6 宗教名への変更→変更不許可
以上の事例は,宗教名への変更が許可されたものでした。
以下,変更が許可されなかった事例を紹介します。
まずは,宗教的な活動の割合が小さいことを理由に許可しなかった裁判例です。
<宗教名への変更→変更不許可>
あ 事案
Aは宗教名への変更許可を申し立てた
い 裁判所の判断
宗教活動は社会活動の一部に過ぎない
→変更を許可しなかった
※東京高裁昭和27年12月27日
※福岡高裁昭和38年6月27日
7 兼業僧侶の法名への変更→変更不許可
一般的な僧侶とは異なり,商人との兼業というケースがありました。
『僧侶・商人』の両方の属性があるというのは一般的なゲームではあり得ない状況です。
このケースでは,法名の使用期間が1年未満にとどまっていました。
使用していた期間が短かったことも変更を否定する方向の事情となりました。
結果的に,裁判所は変更を許可しませんでした。
<兼業僧侶の法名への変更→変更不許可>
あ 事案
Aは,商人としての営業の傍ら僧侶となった
法名(『う』)を称している
法名の使用は1年未満であった
い 裁判所の判断
商人としての活動では戸籍名が重要な意義を有する
→変更を許可しなかった
※名古屋高裁昭和30年3月29日
う 法名(ほうみょう)の意味
仏門に入って出家受戒のときに授けられる名
※『デジタル大辞泉』小学館
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